[イベント]2011.10.17

ベイブルーイング鈴木真也氏のフェイスブックを読んで

「横浜ビール」から独立し、「ベイブルーイング横浜」(ブルワリーは現在準備中。バー部門が先行オープン)を立ち上げた鈴木真也氏が10/6に自身のフェイスブックに書き込んだ投稿を興味深く読んだ。

読んでいない人のために、鈴木氏の許可を得て全文を転載する。

以下、原文ママ
『久しぶりに真面目な話。

日本のビール醸造家は生ぬるいと感じる。
世界的レベルで言えば、全然大したことないのにビールファンから崇められたりしている。それで満足している醸造家も多数。会社の方針に縛られ、自分の造りたいビールを造れない、というか造ろうともしない醸造家も多数。
「うちは~だからこういうのしか造れないんですよ」と、言い訳をする。
… つまりは、そこまでビールに賭けて無いってこと。
家族を守る為とかいろいろ理由があってできない醸造家もいるのは確かだが。
何故、命を張ってやらない?
自身が無いんだろうか?

おれは全てを賭けて独立した。
今、非常に焦っている。
それは世界の醸造家に追い付きたいから。

でも日本で追い付きたいと思う醸造家はブライアン・ベアードさんだけ。
グアムに行った石井さんも素晴らしいと思う。
栃木マイクロの横須賀さんも然り。

ラーメン屋さんだったらみんなもっと早く独立できるでしょ?
ビールだって発泡酒免許なら同じ話。
そんなに費用は変わらない。
ラーメン業界は切磋琢磨し、非常にレベルが高いと思うし。
ビールもそうなるべきと思う。

もっと命を張った醸造家が日本に増えることを願う。

おれはおれで、一刻も早い醸造開始を目指す。』

以上が鈴木氏の投稿である。

他の醸造家やビール関係者、ビアファンは、この投稿を読んでどのように感じただろうか?

今、日本のクラフトビール界は盛り上がってきているように見える。
数多くのクラフトビアバーがオープンし、各地でビアフェスがおこなわれている。

しかし、鈴木氏の思いと同じように、”ある種の違和感”を抱く人も多いようだ。
澄み切った青空を見上げるような清々しさを感じることが出来ない。
なにかモヤッとした”曇り”のようなものが拭いきれない。という意見も聞く。

その曇りが何なのか? 
鈴木氏の『世界の醸造家に追い付きたい』という言葉から読み取れる”世界との差”こそが曇りの正体なのか?

再び鈴木氏の冒頭の言葉を借り、問題を検証してみよう。

『世界的レベルで言えば、全然大したことないのにビールファンから崇められたりしている』のはなぜか?
『それで満足している醸造家も多数』なのはなぜか?
『会社の方針に縛られ、自分の造りたいビールを造れない』のはなぜか?
『「うちは~だからこういうのしか造れないんですよ」と、言い訳する』のはなぜか?
この疑問が晴れぬからこそ曇りを感じるのだろう。

そして、この疑問の根底にあるものは何なのか? 何がそうさせているのか?

私自身もその答えを明確に見つけることはまだ出来ていない。疑問のままである。
それぞれの事情もあり、簡単には語れないことばかりだと思う。
複合的なものもあるに違いない。

もちろん、今回の鈴木氏の意見や私の考え方に反論も多々あろう。
まったく違った意見もあるはずだ。

このような問題を醸造家自身が他の醸造家やビア・ファンに投げかけ、議論が広がることは、さらなるクラフトビールの向上に繋がると私は信じている。

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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