[コラム]2017.2.23

【ビールのある場所】ウイスキーイベントの片隅で出会ったスコットランド発オーガニックビール「ブラックアイル」

東京をはじめ、大阪、京都、福岡、先日は名古屋と、年間を通して全国各地で開催されているウイスキーイベント。スコットランドに代表される世界の五大ウイスキー産地から北欧、インドまで、世界中のウイスキーが一堂に会するイベント会場の片隅で、そのビールと出会った。

1月22日に名古屋で開催された『Whisk(e)y Lovers Nagoya』。全国各地から2000人以上ものウイスキーラバーが集ったこのイベントで、レアなウイスキーボトルが並ぶブースに引けを取らないほどの集客力を見せていたのが「株式会社キムラ」が輸入販売を手がけるスコットランドのオーガニックビール「ブラックアイル(BLACK ISLE)」だ。

スコットランド発オーガニックビール「ブラックアイル」

スコットランド北部に位置するハイランド地方には、道をゆけば遠目に古城、目前では羊が草を食む牧歌的な景色が広がっている。その中心都市インヴァネスの郊外で1998年に設立したBLACK ISLE BREWING Co.は、同名の農場内にある小規模ブルワリーで素材にこだわったオーガニックビールを醸造している。

ブラックアイル農場内にある醸造所。農作物が育ち、羊たちが草を食むのどかな景色の中にある。

素材提供:リカーランドキムラ

株式会社キムラでブラックアイルの輸入を担当する木村拓平さんは、このビールに出会うまでに50以上のサンプルを試飲し、現地へ直接出かけて20〜30もの醸造所を訪ね歩いた。最後に辿り着いたのが、スコットランドの原風景に溶け込むように佇むブラックアイルだったという。

「派手さはありませんが、繊細で心から落ち着ける味わい。なにより、醸造所内がどこよりも清潔だったのが印象的で、ブラックアイルを輸入することに決めました」(木村さん)。

クラフトビール=ビアパブという枠を超えて バーへの提案

2012年に輸入を開始して以来、木村さんはビールイベントではなく、敢えてウイスキーのイベントでブラックアイルを紹介し続けている。その理由を、「ウイスキーとウイスキーのあいだの箸休めとしてブラックアイルのビールを飲んでいただくことで、クラフトビールの世界を知って頂ける1つの機会としてビール業界に貢献していきたいと思っています」と語る。

「醸造所にこの着ぐるみが欲しいと言ったら、ラベルの部分をちゃんと日本語表記にしてつくってくれたんです」と嬉しそうに話すのは、マスコット「ブラックアイルマン」に自ら扮する木村さん。なんと、この格好で新幹線に乗って広島からイベント会場の名古屋へ!

もう1つ、ブラックアイルの醸造所があるハイランド地方には、いくつものウイスキー蒸溜所が当たり前の風景としてそこにある。「日本でもウイスキーの良き友人として、ウイスキーが好きな方、バーが好きな方にもブラックアイルのビールを長く愛していただけたら」という木村さんの願いが、ウイスキーイベントを通じて従来のクラフトビール=ビアパブという枠組みを超え、バー空間へと広がっていく様子も興味深い。

スコットランドの原風景を思わせるあたたかな味わい

ブラックアイルのシンボルマークは、スコットランドの国花である「アザミ」。そこには、伝統を踏襲しながら新しい要素を取り入れて進化するという決意が表れている。

ラインナップを見ても、クラシックブリティッシュホップの香りが牧草地を想起させるゴールデンアイ・ペールエール、フルーツケーキのような芳醇さを放つ濃厚なスコッチエールなど、ひと口飲むごとにスコットランドの原風景が目の前に広がるような、あたたかな味わいだ。

ここではオーガニックの概念が生活の一部として定着している。「そうした気負いのなさも魅力の1つ」と木村さん。

素材提供:リカーランドキムラ

自身の足でたどり着き、惚れ込んだブラックアイルを、木村さんはこう評する。「ブラックアイルは良くも悪くも、いわゆるアメリカン・クラフトビールとは対極に位置するクラフトビールだと思っています。強烈なインパクトや激しさがあるわけではありませんが、上質で優しく、味わいもしっかりとしたとても素敵なビールです」。

今どきの強いインパクトを持ったいわゆるアウトローなビールを「デジタル」とすれば、普遍的なおおらかさ、包容力を持つブラックアイルは「アナログ」な存在なのかも知れない。しかし、あらゆるものがスピーディーに移ろいゆく時代にあってこうしたスタンスを保ち続けることができるって、クールではないか。

せわしない日常の中、スローな時の流れを取り戻しに、ブラックアイルと旅に出てみてはいかがだろうか。

イギリスオーガニッククラフトビールスコットランド

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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