[コラム,ブルワー]2018.2.17

現場で麦酒はどう作る Part.1~基礎編~

日ごろ飲んでいるビールは、どうやって作られているのでしょうか。
また、どのような機器、どのような機材を使って作られているのでしょうか。
この「現場で麦酒はどう作る」では、様々なブルワーを訪ね、どのようにビールを作っているかを取り上げていきます。
今回は”Part.1~基礎編~”と銘打ち、簡単にビールの作り方を説明いたします。

ビールの作り方を簡単にまとめると、下記のようになります。

  1. 大麦を発芽させ、麦芽を作る。
  2. 温水に粉砕した麦芽を混ぜマイシェを作り、温度を調整しながらよく混ぜる
  3. マイシェをろ過して、砕いた麦芽などの固形物を取り除き、麦汁を作る
  4. 麦汁を沸騰させ、ホップを投入し苦みや香りをつける
  5. 麦汁を冷却し発酵タンクに入れ、酵母を添加し数日間発酵させビールを作る
  6. 発酵したビールを後発酵タンクに入れ、熟成させる
  7. 熟成させたビールを熱処理したり、フィルターでろ過したりして、酵母や濁りのもとを取り除く
  8. ビールをビンや缶、樽などに詰めて出荷

一つ一つ追っていきましょう。

①大麦を発芽させ、麦芽を作る。
ビール原料は基本的に大麦を使います。この大麦を発芽させ「麦芽」にします。
大麦の中には”デンプン”と”タンパク質”が含まれています。
大麦は発芽すると、大麦内にデンプンとタンパク質を分解する酵素が発生します。
その酵素は”アミラーゼ”と”プロテアーゼ”です。この二つの酵素が、後にの工程で活躍します。
この酵素を利用するため、大麦ではなく、麦芽を用いています。

② 温水に粉砕した麦芽を混ぜマイシェを作り、温度を調整しながらよく混ぜる
麦芽は粉砕機で粉々に砕かれます。そして粉々に砕かれた麦芽をタンクへ温水とともに入れます。
この温水に麦芽が混ざったおかゆ状のものを「マイシェ」と呼びます。
このマイシェを温めて麦汁は作られます。
大まかな流れは
(1)マイシェを約50℃にし、タンパク質をプロテアーゼの力で”アミノ酸”に変える
(2)マイシェを約65℃にし、デンプンをアミラーゼの力で”糖”に変える
(3)マイシェを約75℃にし、プロテアーゼやアミラーゼなどの酵素の働きを止める
上記3ステップです。温め方は、一つの釜で温度上昇をさせる「インフュージョン法」、タンクから一部抜き取り別の釜で加熱、それを元のタンクに戻すことで温度上昇をさせる「デコクション法」と大別されます。

③マイシェをろ過して、砕いた麦芽などの固形物を取り除き、麦汁を作る
マイシェは大きなザルのようなろ過器に通されます。粉砕された麦芽はろ過器を通れませんが、麦汁は通ることができます。
最初に絞り出される麦汁を「一番麦汁」といいます。
また、残った穀皮にはまだ麦汁が残されています。この穀皮にお湯をかけて、残った麦汁を絞り出します。これを「二番麦汁」といいます。
絞り出された麦汁は、煮沸釜に送られます。

④麦汁を沸騰させホップを投入し、 苦みや香りをつける
煮沸釜へ送られた麦汁は、ホップを投入しながら沸騰させます。ホップは長時間煮ると苦味が出て、短時間煮ると香りが出ます。
この特性を利用し、ホップを入れるタイミングを調整し、苦味をつけたり香りをつけたりします。

⑤麦汁を冷却し発酵タンクに入れ、酵母を添加し数日間発酵させビールを作る
煮沸した麦汁は、ホップのカスを取り除き、冷却されます。そして冷却された麦汁は酵母を添加され、発酵タンクに入れられます。
温度、発酵時間はビールのスタイルで変わってきます。また、酵母は糖分を取り込み、アルコールと二酸化炭素にしてくれます。
この工程を経ることで、麦汁がビールとなります。

⑥発酵したビールを後発酵タンクに入れ、熟成させる
発酵が終了したばかりのビールは「若ビール」と呼ばれ、味が粗く、未熟な香りを持っています。
この若ビールを後発酵タンクへ移し、数日間熟成させます。
若ビールを熟成させることで、味の粗さ、未熟な香りが徐々に薄れていきます。

⑦熟成させたビールを熱処理したり、フィルターでろ過したりして、酵母や濁りのもとを取り除く
熟成が終わったビールは、酵母や濁りの原因となる物質を取り除くため、熱処理やろ過をします。
熱処理は酵母を殺菌するために行います。熱処理を行わないビールは、「生ビール」「ドラフトビール」と名乗ることができます。
酵母がビールの中に残っていると発酵をし続け、ビールの味が変わっていってしまいます。そのため、酵母は基本的に取り除かれます。
フィルターは1000分の10ミリメートルほどの大きさの酵母ですら通さない、かなり細かいものを使います。

⑧ビールをビンや缶、樽などに詰めて出荷
完成したビールは、用途に合わせた容器に詰められて出荷します。
代表的な容器は缶、瓶、樽であり、工場から我々の手元に届くまで、ビールのおいしさを守っています。

大きく8つの工程を経てビールは作られます。
次回Part.2よりビール作りの現場へ行き、実際の機器、機材と共にビール作りを紹介していきます。

参考文献
・日本ビール検定公式テキスト2016年6月改訂版 発行者:滝口直樹 出版社:株式会社マイナビ出版

ビール作り現場で麦酒はどう作る

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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