[イベント]2010.10.1

WDMC日本大会 雑感・外呑みの愉しみ

前々回よりお伝えしている「World Draught Master Competition(ワールド ドラフト マスター コンペティション)」の話題です。今回は取材する中で感じたことを。

前回に引き続き審査員を務めたJBJAの石黒謙吾さんや、ベルギービール広報センターの佐藤ひとみさんらに感想を聞いてみると、「全体のレベルが上がった」とのこと。昨年は明らかに上位を狙える参加者が数名だったのに対し、今年はその人数が増えていたこと、また参加者のスキルがボトムアップされていた、というのが共通の見解でした。

参加者のパフォーマンスを見てまっさきに思ったのは「いつもやっていることとはいえ、複数の審査員に至近距離でガン見されながらのパフォーマンスはかなり緊張するだろうな」です。かつてベルギーでトライされた前述の佐藤さんによると、「緊張のあまり普段はやらないことをやってしまう」のだそうです。例えばカウンターに栓抜きを置き忘れたり、グラスの持ち手以外のところを持ってサーブしてしまったり、ロゴを客側に向けていなかったり…。

このために2カ月以上練習したという参加者や、直前はほぼ徹夜状態だった人もいらっしゃいました。店舗によっては本番で使用するグラス洗浄環境が揃っていないため、頭の中でシミュレーションしたという方も多かったようです。水を張ったタライを2つ並べて練習したり、「大会前は(環境が整っている)ベルジアン・カフェで1カ月くらい夜バイトさせてもらいたいなー」とこぼす方も。そんな中でも、大きな失敗をする方はまったくおらず、みなさんが大健闘なさったレベルの高い大会だったと思います。

ところで、事前のプレスリリースを拝見する中で一番気になっていたのが、「表現力」という言葉。この大会における「表現」とはどういうことなのか?

一連の流れを拝見したり、審査員の方々に話を伺いながら出た私なりの結論は、ステラ・アルトワのプレゼンテーション(いかに興味を持ってもらえるか、飲みたいと思ってもらえるか)や接客態度はもちろん、グラスを洗ったり汚れをチェックしたりするその動作を、いかにエレガントかつダイナミックに見せるかである、ということでした。

石黒さんも「両手に持ったグラスを高く上げてチェックする、あの仕草がものすごくカッコイイよね。やってみたい!」おっしゃっていました。つまりはオーダーをするところから運ばれてきたビールに口を付けるまで、その一連の流れがエンターテインメントなのですよね。その流れ全体を楽しむことが「ビールを味わい尽くす」ことにつながるのかなと。

いまさら言うまでもありませんが、ビールの楽しみとは液体を味わうだけにはとどまりません。お店の雰囲気はもちろん、ホールの人はどんなビールを勧めて自分を“その気”にさせてくれるのか、どのような注ぎ方・提供をしてくれるのか、想像した味と比べてどうなのか。お店の方とのコミュニケーションを含めた一連の時間を楽しみ尽くすのが「外呑み」の極意なのだと、WDMCを通じて、改めて感じた次第です。ぜひ、お店でお気に入りの銘柄以外のものを説明してもらったり、カウンターに座ってビールが注がれる様子を眺めたりしてみてほしいと思います。

最後に。WDMC関連記事では、東京・神田のシャン ドゥ ソレイユから参加された新妻正人さんが書かれているブログが軽妙な文章で特に楽しめました。参加後の感想も書かれていますので、ぜひご一読を。■
注ぎ方によって味は変わる参加者には緊張の色が見える優勝者の土屋怜子さんフランダーステイルの濱田聡一郎さんシャン デュ ソレイユの新妻正人さん

ベルギービールワールド ドラフト マスター コンペティション

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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