[ビアバー]2012.8.3

銀座「数寄屋橋サンボア」のオリジナルビール

先日、銀座の「数寄屋橋サンボア」に行った。

「サンボア」と言えば、文豪谷崎潤一郎も愛した関西の老舗バーで、その歴史は大正7年に遡ることが出来る。
「数寄屋橋サンボア」はその”暖簾わけ店”のひとつである。

「サンボア」の看板メニューは、ハイボール。
昨今流行りの“氷がガバガバ入ったジョッキスタイル”ではない。
キリッと冷やした角瓶、ソーダ、グラスを使った“三冷スタイル”である。
氷は入っていない。
ウィスキーはダブルで注がれ、飲みごたえがある。
仕上げにレモンピールをグラスの上でキュッとひねり、爽やかな香りと味わいをつける。
これがサンボア流“本物のハイボール”だ。

この、“本物のハイボール”を飲みたくなった時は、「サンボア」もしくは同じく銀座にある「ロックフィッシュ」を訪ねることにしている。
ちなみに、「ロックフィッシュ」のバーテンダー間口氏も長く「サンボア」で働いていた方で、同じように“本物のハイボール”を飲ませてくれる。
さらに付け加えると、間口氏はプレミアムモルツ(瓶)を素晴らしい泡だちで注ぐ名人である。

さて、話を「数寄屋橋サンボア」に戻そう。
1杯目のハイボールを飲んでいると、カウンターの上に見たことのないビールが置かれていた。
しかし、そのビールのボトルは明らかに“どこかで見たことのあるシルエット”である。

そう、それはまぎれもなくネストビールのボトルなのである。

訊くと、それはネストビールの BOP(手造り工房)で造ったビールであった。
BOPとは醸造所の設備を借りて、好みのビールを造ることが出来るシステムである。
自家醸造が認められていない日本で、個人がオリジナルビールを造ることが出来る方法として人気が高い。

さっそく、1本いただいてみた。
濁りのあるオレンジがかったビールで、夏むきの爽やかな味わいだった。

ビールに特化した飲食店やバーなどではBOPを使ってオリジナルビールを造っている場合を見かけるが、「サンボア」のような歴史のあるオーセンティック・バーでもオリジナルビールが置かれるようになったのは誠に喜ばしいことだ。
このような店がどんどん増えてくれることをさらに望んでやまない。

もちろん、このビールは定番メニューではないため、無い場合もある。
しかし、だからこそ、面白いとも言えるのではないだろうか。
行ってみて無かったからと言って憤慨してはならない。
ビールを目的とせずに訪れた老舗バーで、一期一会のビールに出会える偶然こそが酒場の喜びである。

銀座の夜の粋な楽しみ方がまた増えた気がする。

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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