[イベント]2011.1.12

ベルギーの無政府状態が史上最長

ビールとは直接関係ありませんが、ベルギーつながりで気になるニュースを。
4年前は日本のテレビニュースでも結構取り上げられていましたが、なぜか今回はあまり見かけません。
(単に僕がテレビを見ていないだけからかもしれませんが・・・)

ベルギーでは昨年6月の総選挙でオランダ語圏の新フランドル同盟が下院第1党に躍進。
しかしその後各政党による連立交渉が難航して正式な政府が無い状態が続いており、ついに2007年の194日間を抜いて今日で212日目、史上最長を更新中です。
国王アルベール2世から調停役を任されていたバンデラノッテ氏も先週、調停がうまくいかなかったということで国王に辞任を申し出たそうです。

なぜ何度もこんな事態に陥るのでしょうか?
二大言語圏(フラマン・ワロン)をかかえるベルギーでは同じような考え方の政党でも言語ごとに別々に存在するため、どうしても少数政党が乱立してしまいます。
(たとえばフラマン系民主党とワロン系民主党みたいな感じで・・・)

そこにさらに根深い南北問題があります。
近年工業化が進み裕福なフラマンの人たちが、農業中心で所得の低いワロンの人たちに税金が配分されることなどを不服として自立を強めようとしています。
仮にそうなればワロンの人たちは経済的に行き詰ってしまいます。

しかし正式な政府が無くて200日以上もよく何事も無くやっていられるな、、、と思いますが、これもベルギーならでは。
正式な政府が無い、と言っても、それは「ベルギー連邦政府」のこと。
ベルギーでは地方への権限委譲が進んでいて、連保政府以外にも大きくは言語共同体レベル(オランダ語圏共同体・フランス語圏共同体・ドイツ語圏共同体)、経済地域レベル(フランダース・ワロン・ブリュッセル)の各政府がそれぞれの分野で機能しているのです。
外交や軍事面ではEUやNATOもありますし。
そういった他の国には無い事情があるんですね。

しかしベルギービールを愛するものとしてベルギーの分裂なんていう事態だけはなんとしても避けて欲しいです。
今後の動きを見守っていきたいと思います。

※追記

○1/23 ブリュッセルで約3万4000人が新政府の早期樹立を求めてデモ。
参加者の44%はブリュッセル地区、35%がフランス語圏、21%がオランダ語圏から。

○1/26 国王アルベール2世から調停役を任されていたバンデラノッテ氏、再び辞任。

ベルギーベルギービール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

三輪 一記

一般財団法人 日本ベルギービール・プロフェッショナル協会 代表理事

1967年、名古屋市生まれ。
1990年、関西大学商学部卒業。26歳のときにベルギービールと出会い、以来ベルギービールを愛し、仕事でというよりライフワークとしてベルギービール普及に情熱を傾け、毎年ベルギーを訪れている。
2001年よりベルギービールに関する講座、セミナー活動をスタート。
2008年より愛知大学、愛知淑徳大学等でベルギービール講座開講。
「ベルギービールを通じて日本とベルギーの架け橋に」というコンセプトのもと、
講演やセミナーにも積極的に取り組んでいる。
共著に『ベルギービール大全』(三輪一記+石黒謙吾/アートン)、
『ベルギービール大全<新>』(三輪一記+石黒謙吾/アスペクト)。
一般財団法人 日本ベルギービール・プロフェッショナル協会 代表理事。

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