[JBJA活動,テイスティング]2013.4.4

ビールを飲みに旅をしよう~バンベルク旅ビール~

ビアジャーナリストアカデミー第一期生、コウゴアヤコがドイツの美味しい情報をお伝えします。

 

ビールが美味しい南ドイツのミュンヘンからICE特急で1時間45分。燻製香漂うビールで有名なバンベルクをご紹介しよう。

バンベルクはミュンヘンから北に600㎞ほどの場所に位置する、ドナウ河とレグニッツ河を望む古都だ。世界遺産にも登録された旧市街地は大変美しく、ビールにはさほど興味がないという方にもお勧めしたい街である。

ビールにありつく前にまずは街を散策してみよう。戦火を免れた旧市街には赤い屋根の小さな家が並び、レグニッツ河の中州に建つ旧市庁舎のパステルカラーのテンペラ画は天使が飛び交い優しくメルヘンチック。初夏には家々の白壁の窓辺に飾られた赤いベゴニアの花が街全体に華やかな香りを添える。

丘の上に建つバンベルク大聖堂へと続く坂道を上るとロマネスク様式の重厚な4本の尖塔が目の前に現れる。大聖堂の向かいは司教の宮殿だった新宮殿。庭園には大小様々な薔薇が生垣を造っている。庭園からは赤い屋根の市街が一望できる。この美しい景色を守るためにバンベルクの旧市街地では勝手に建物の外観を変えることは禁止されている。歴史香る街並みこそが財産であると街の人は知っており、古いものを守り続ける現在進行形の努力が中世の時代から変わらない街の姿を造っている。

大聖堂からさらに坂を上がると聖ミヒャエル教会に出る。小高い丘の斜面を利用して造られた教会で、その地下はフランケンビール博物館になっている。バンベルクがあるフランケン地方は昔から上質の麦とホップが採れることから、バイエルン州の中でも特にビール醸造所が多い。その歴史を伝えるビール博物館はビールファンならば一見の価値ありだ。

教会の脇の道をだらだらと下り、入り組んだ路地を抜ければレグニッツ河に戻る。赤い屋根の家が河に沿ってせり出し木枠の窓と相まって美しい町並みを水面に映している。小ベネツィアと呼ばれる地区だ。

目指すラオホビールはこの近くにある。バンベルクは人口7万人ほどの小さな街だがその市街地に10件の醸造所を持つ。ラオホビールを造っているのはシュレンケルラー醸造所とシュペツィアル醸造所の2件である。

シュレンケルラー醸造所の直営レストランは白い壁に緑の木枠。

   

表に飛び出たサインには六芒星の印。ユダヤのダビデの星と勘違いされる方も多いのだが、その実はビール醸造によくみられるシンボルで醸造に重要な6つの工程を象徴している。

店内は中庭を囲むようにいくつかの小部屋に分かれ、メインとなる部屋の中央カウンターには大きな木の樽が置かれている。樽の下には蛇口が付いていてウエイター(ケルナー)はそこから直接グラスにビールを注ぐ。ガスを使わずに樽から直接注ぐこの手法は、出来立てが飲めるビールの街だからこそできるのだ。

ラオホビールのもとになる麦芽は、焙煎するときにブナの木が燃える火の上に直接晒して乾燥させている。麦芽が煙で燻されることにより、その独特の風味が付く。麦芽を乾燥させる際に煙を逃がす焙煎釜が誕生するまでは、どのビールにも多少なりの燻製香があったと考えられる。一次発酵を終えたビールは樽に移され、低温で熟成させる。樽の中で二次発酵が始まり、それが落ち着くと少しずつ炭酸ガスがビールに溶け込んでいく。熟成が終わった樽はレストランで蛇口を打ち込まれ、最高の状態で客のテーブルに運ばれてくる。

グラスになみなみと注がれテーブルに置かれたビールは赤味がかかった黒。鼻を近づけただけで、ふわっとスモークの香りが漂ってくる。おそるおそる口をつけ表面を啜ると強烈なスモーク香が襲ってくる。強烈な煙のパンチ。たき火の木に浮き出した木の油の香り、香ばしく焦げたトースト、ナッツのような甘さも苦さも煙の香りと共に口の中から鼻に突き抜ける。たき火をいっじって遊んだ子供の頃を思い出す、どこか懐かしい香りがするビールだ。

このビールに合うのはバンベルク名物の玉ねぎの肉詰めである。玉ねぎの中の肉は日本のハンバーグとは違い、肉らしいしっかりとした食べごたえで、肉の旨味を閉じ込める玉ねぎも味がよくしみ込んでいる。何よりラオホビールをベースに使ったソースが特徴的だ。スモーキーでこっくりと濃い味付けにビールが進むことは間違いない。

こんな面白いビールを知ってしまったら、もう一軒のラオホビールも気になるところ。ほろ酔い気分でおとぎの街を散歩しながらシュペッツィアルのラオホビールが飲める店を探してみよう。

大聖堂へ向かう坂の途中から折れて別の急な坂道を登る。レンガ造りの塀が切れると草に覆われた小高い丘が現れ、細い階段をさらに上るとシュペッツィアルのビアガーデンに出る。南ドイツのビアガーデンはビールや食べ物を小屋で買い自由に席に着くシステムだ。広く澄んだ空に細い旗が翻り、大きな葉を広げたマロニエの木の下に長テーブルとベンチが並ぶ。灌木のわざめきの先には赤い屋根と教会の尖塔が見える。気持ちのいいビアガーデンだ。

シュペッツィアルのビールはオレンジっぽい茶色でスモークの香りは微かに感じられる程度。シュレンケルラーと比べると非常に飲みやすい。同じラオホビールでもこんなに味が違うということに驚かれることだろう。

土地の匂いを嗅ぎながらビールを味わい、土地の食べ物を食べる。土地の空気、水、作物、人、景色、すべてが味を造る。ながい歴史の中で育ったもの同士、ビールと名産品は何でも知っている幼馴染のように親しく、笑い合いながらお互いを引き立てる。自分の部屋にいては味わえないもの。ここにいるから、今だから、こんなに美味しいんだ。だからビールを飲みに旅をするんだ。これが旅ビールをする醍醐味なんだ。

ほろ酔いの身体を心地よく撫でていく、バンベルクの風を頬に感じながらそんなことを考えていた。

コウゴアヤコ

ビール好きが高じて2008年からの1年半ドイツのミュンヘンに暮らし、暇を見つけてはヨーロッパ各都市の醸造所やビアハウスを巡る旅をする。2010年からは拠点を日本に移し世界中を飛び回りビールを通して街の歴史や風習を観察している。ライフワークは旅とビールをミックスした旅ビール。

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この記事を書いたひと

コウゴ アヤコ

ビアジャーナリスト

1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。
ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた「旅ール(タビール)」をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』、『ドイツニュースダイジェスト』など様々なメディアで執筆。『ビールの図鑑』『クラフトビールの図鑑』(マイナビ)、『極上のビールが飲める120店』(エンターブレイン)など。

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