[テイスティング]2014.5.2

『よなよなエールの香りの秘密に迫る』

~藤原ヒロユキのビアコラム~
『よなよなエールの香りの秘密に迫る』
≪よなよなエールは華やかな香りのビールである≫

『これが金賞でなかったら……』と感じた日

 私が初めてよなよなエールを飲んだのは、1998年のことだ。
 あるビア・フェスティバルでよなよなエールを一口飲んで「もしこれが金賞を取っていないとすれば、私はどうすればいいのか……」と感じたことを鮮明に覚えている。
 どういうことか? 説明が必要だろう。
私はこのビア・フェスティバルで行われたビア・コンペティションで審査員を務めていたが、その結果をまだ知らなかった。審査は銘柄を隠したテイスティングでおこなわれ、まだ“どのビールが金賞なのか”を知らなかったのだ。
 しかし、フェスティバル会場で飲んだよなよなエールは明らかに他のどのビールよりも“金賞に値するビール”だったのである。
 フェスティバル最終日に発表される金賞ビールが、もし“よなよなエール”でなかったら、私はどうすればいいのだろう……と感じた。というわけだ。
 
 そして、その受賞結果は。
私はホッと胸をなでおろした。よなよなエールは金賞だったのだ。そして、その年からよなよなエールは輝かしい受賞歴を重ね、今や日本を代表するエールビールとして広く一般に認識される存在となっている。

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●グラスに注ぐと華やかな香りがたちのぼるよなよなエール

『よなよなエールの故郷を訪ねてみた』 
 
 私がよなよなエールを“金賞に値するビールだ!”と感じた一番の理由はやはり香りだった。酵母の醸すフルーティーな香りやモルトのほのかな甘みはもちろん、ホップのアロマとフレーバーは頭抜けてNo.1だと思った。

私は、実際にその醸造工程を見るため、よなよなエールの故郷を訪ねてみた。

 よなよなエールが生まれる「ヤッホーブルーイング」の醸造所は長野県の佐久市にある。長野新幹線ならば、東京から1時間30分ほどで着く佐久平駅が最寄り駅だ。
 醸造所で私を迎えてくれた醸造ユニットディレクターの森田正文さんが、醸造工程におけるホップの使い方を細かく説明してくれた。

「よなよなエールには、麦汁煮沸時の早い段階に苦味をつける為にパール、煮沸終了直前に香りをつける為にカスケードという品種のホップを加えており、その量の比率は1:5です」
いかに香りを大切にしているかがよくわかる。

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●よなよなエールとホップ(真空パックから出した直後のもの)

「さらに、熟成中にカスケード・ホップを熟成タンクに投入します。この手法は「ドライ・ホッピング」と呼ばれるテクニックで、一段と香りを際立たせることが出来るのです」
よなよなエールが爽やかに香る理由である。

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●巨大なタンクが並ぶヤッホーブルーイングの醸造所内

『贅沢&丁寧な作業こそ、華やかな香りの秘密』

 森田さんは、ヤッホーブルーイングならではの“香りを逃がさない工夫”を教えてくれた。
「アメリカのワシントン州で秋に収穫されたホップをすぐに乾燥し、真空パックにしたものを、冬のみ受け入れます」
収穫後に時間がたったものは使わないのである。非常に贅沢である。

さらに“香りが華やかに開く工夫”も教えてくれた。
「ホップを熟成タンクに入れる直前に、手で揉みほぐすんですよ」
ドライ・ホッピングの際、ホップの房の中にある香り成分がきっちりとビールに溶け込むようにするわけだ。もちろん、手作業で行う。非常に手間のかかる丁寧な仕事である。

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●真空パックの袋を開き、ホップを見せてくれる森田さん

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●このホップを手作業で揉みほぐして加える。

 この贅沢&丁寧こそ、よなよなエールが華やかな香りの素晴らしいビールとして仕上がる秘密だとわかった。

 よなよなエールのグラスを持ち上げると、華やかな香りが鼻腔をくすぐってくる。ひとくち口に含むと柑橘系の果実を思わせるフレーバーがフワァッと広がる。これぞ、ドライ・ホッピングのなせる業である。
 実に素晴らしい。
 私はこの香りを楽しみたくて、よなよなエールのグラスを何杯も空にしてしまうのだ。

www.yohobrewing.com

お問い合わせ (株)ヤッホーブルーイング 0267-66-1211 

よなよなエールドライ・ホッピングヤッホーブルーイング

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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