[コラム]2020.9.12

見過ごされてきた巨大市場。『ゲコノミクス』に下戸の存在の大きさを学ぶ

ゲコノミクスゲコノミストノンアルコールブックレビュー下戸書評藤野英人

日々、ビールを楽しく飲んでいる私たちですが、お酒を「飲めない・飲まない・飲みたくない」人が多数いることを、ついつい忘れてしまっていませんか?

”酒を飲まない人”をバカにする人たちは、大きな勘違いをしている

と語るのは、『ゲコノミクス 巨大市場を開拓せよ!』(藤野英人著、日本経済新聞出版、2020年)の著者。

表紙イメージ(画像引用元:Amazon商品ページ)。

著者は、33歳で喘息を患い、お酒を口にできなくなって初めて「ゲコの気持ち」が分かるようになったといいます。
飲む人からの「損してるね」「鍛えればいいのに」といった心ない一言に傷ついたり、仕事上のつきあいで窮屈な思いをしたり、寿司屋や焼き鳥屋に入るのに気後れしたり。

そんな著者は「お酒を飲めない・飲まない・飲みたくない」人を「ゲコノミスト」、飲む人を「ノミスト」と名付けました。
2019年6月に著者が開設したFacebookグループ「ゲコノミスト(お酒を飲まない生き方を楽しむ会)」は、ゲコノミストたちが声を上げられる場としてどんどん活性化しています。メンバー数も、2020年9月時点で4000人以上。

ゲコノミストは多数派!

もっとも、4000人以上集まったといっても、本書で紹介されている厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2017年)の結果からいえば、決して驚くような人数ではありません。
週に何日くらいお酒を飲むかという質問に「ほとんど飲まない」「やめた」「飲まない(飲めない)」と回答した人は20歳以上の国民の55.4%。つまり、半数以上がゲコノミストなのです。
一方、飲酒習慣がある(週3日以上、かつ飲酒日1日あたり1合以上飲む)と答えた人は、わずか20%。私たちノミストはついつい、ゲコノミストを少数派のように扱ってしまいがちですが、実は、よく飲む人の方が少数派だったのです。

私たちが今後も楽しくビールを飲み続けるためには、ゲコノミストとの相互理解を深め、互いに尊重しあえる社会をつくっていく必要があります。

飲む人とゲコが、理解し合えたら、社会だってもっとハッピーなのでは?

巨大市場「ゲコノミクス」創出

これまで、ほとんどの飲料メーカーやレストランはノミストをターゲット層としており、ゲコノミストに着目する企業はあまり多くありませんでした。

本書によれば、アルコール飲料の市場規模は約3兆6000億円(メーカー出荷金額ベース)。
一方の「ゲコノミクス」こと、ゲコノミスト関連の市場について、著者は以下のように主張します。

ゲコノミクスは最低でもこの10%、つまり3000億円以上の市場を創出できる可能性がある

例えば、レストラン。
お酒のメニューが充実していても、ノンアルコールの飲み物はウーロン茶かオレンジジュース、ノンアルコールビール程度しかないことがよくありました。クラフトビール好きならしばしば考える、フードとドリンクのペアリングをノンアルコール飲料で実現することは難しかったのです。
そんな中、アルコールのペアリングとノンアルコールのペアリングを同価格で提供して好評を得ているレストランが本書では紹介されています。
ノミストとしては「同価格!?」と驚いてしまいますが、この点について、著者は以下のように指摘しています。

価値あるドリンクならそれに見合ったお金を出すというゲコノミストはたくさんいます。

そう、ゲコノミクスは、これまで見過ごされてきた巨大市場なのです。

私たちビアラバーとしても、ビールを「飲めない・飲まない・飲みたくない」という人にも不快な思いをさせることなく、一緒に楽しいひとときを過ごせるようになるのは、うれしいことですよね。

 

『ゲコノミクス』。私たちビアラバーが忘れてしまいがちな、お酒を「飲めない・飲まない・飲みたくない」人の存在の大きさを分かりやすく教えてくれる一冊です。
秋の夜長に、ビール片手にのんびり読んでみてはいかがでしょうか。

 

<書籍概要>
『ゲコノミクス 巨大市場を開拓せよ!』
著者:藤野 英人
発売日:2020年5月13日
価格:本体1,500円+税
判型・ページ数:四六判・232ページ
出版社:日本経済新聞出版
Amazon商品ページ
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大橋万紀(おおはしまき)

この記事を書いたひと

大橋万紀(おおはしまき)

ビアジャーナリスト

1982年大阪市生まれ。大阪府立大学大学院修了、博士(工学)。専門は有機化学。趣味は合唱。関西のビールシーンを盛り上げるべく活動中。
キリンビールが2007年に実施した、歴史的ビール復元プロジェクトの「復元ビール味覚評価会」にたまたま参加。ビールの奥深さ・幅広さに圧倒され、ビール好きとしての第一歩を踏み出す。
2012年、新婚旅行で訪れたドイツ・ミュンヘンのビアガーデンで飲んだビールの爽快さに感激。以降、ビール愛にあふれた生活が始まる。
目下の悩みの種は、自宅の冷蔵庫がビールで占有されていっていること。レアなビールを開栓するきっかけと勇気、そして一緒に味わってくれる仲間を募集中。

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