[イベント,コラム]2022.8.4

【東北で出会うビールの世界⑧】福島・いわきで開催された「ビア博いわき2022」に行ってきました!

「ビア博いわき」は、2016年から開催されている全国のクラフトビールといわきの食を楽しむ屋外イベントです。
今年は7月29日~31日の3日間、国内およそ50社のブルワリーの約90種類のビールの提供、そして福島県内のブルワリーと市内飲食店10数店舗の出店により開催され、私は初日に行ってきました。

福島県いわき市

まずイベントが開催された福島県いわき市がどんなところなのか、簡単に紹介したいと思います。

市の概要

福島県いわき市は、福島県および東北地方の東南端に位置し、南端は茨城県に接しています。面積は約1230㎢と東京23区の約2倍になります。
人口約327,000人は、東北地方では宮城県仙台市に次いで2番目に多く、福島県では最大の人口になっています。ちなみに、福島県の人口の2番目はほぼ同規模の郡山市、県庁所在地の福島市は3番目です。
西方の阿武隈高地から東方へゆるやかに低くなり、東は太平洋に⾯し海岸線は南北60km余りに及んでいます。太平洋を流れる⿊潮の影響を受け、⽐較的寒暖差が少なく晴れの⽇の多い、温暖な気候に恵まれた地域です。

明治以降の産業

明治初期より東京に最も近い炭鉱である常磐炭田の開発が始まり、明治期の日本の近代化に欠かせない地域となりました。鉄道の常磐線は、この地域で産出される鉱物資源を首都圏へ運ぶ重要路線として早期に敷設されています。
高度経済成長期には石油へのエネルギー革命が進み石炭産業が急速に衰退しましたが、首都圏から近い地の利を生かし、仙台市に次ぐ東北2位の工業製造品出荷額の工業都市に転換していきました。
炭鉱会社が会社存続をかけて1966年に開業したスパリゾートハワイアンズは、「フラガール」として映画化されいわき市の顔になっています。他にも、アクアマリンふくしま、いわき湯本温泉など多彩な観光資源を持ち、観光都市への転換にも成功しています。

アクアマリンふくしま周辺はマリンパークになっています

東日本大震災の被害

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、震度6弱の揺れと市内沿岸部全域が津波に襲われ大きな被害を受け、福島第⼀原⼦⼒発電所から30kmのエリアに含まれていた北部の地区では、地震に伴い起きた原子力発電所事故により一時⾃主避難も⾏うことになりました。
事故以来、放射性物質汚染を懸念する風潮により福島県の産物は敬遠され大打撃を被りましたが、それに対しいわき市は、独自に放射性物質の検査を実施して公表するなど、水産業・観光業を加えたあらゆる情報を積極的に開示することで、風評被害の払拭に積極的に努めてきました。

公園でもいまだに放射線量の測定器が稼働しています…

ビア博いわき2022

概要

ビア博いわきは、全国各地のクラフトビールといわきの美食を一堂に集め、県内外から訪れるたくさんの人たちと交流しながら、ビールと食を楽しもうと2016年から開催されているクラフトビールのフェスティバルです。非日常をコンセプトにした空間で「地元にこれまでにはなかった飲食イベントを根づかせたい」という想いのもと、6年前に市内の有志で実行委員会を作り、2016年よりいわき市の平城跡で行われてきました。
2年続けて開催が見送られていましたが、今年は下記のとおり開催されました。
■開催期間:2022年7月29日(金)~31日(日)
■開催時間:12:00~21:00 ※29日のみ16:00〜21:00
■会場:平中央公園(福島県いわき市平字三崎1)
■アクセス: JRいわき駅から徒歩で約10分(東京駅からいわき駅まではJRの特急ひたちで約2時間半)・車利用の場合はいわき中央ICから約15分

ホップジャパンのブースからスタート

私が会場に到着したのは、初日の開場直後の16時過ぎ。今年の会場の平中央公園はいわき芸術文化館アリオスに隣接し、市役所や美術館などが集まるエリアにあるアクセスのいい場所です。


まずは、インフォメーションで体温測定・アルコール消毒・マスクのチェック。すでに10数人の列ができていました。チェック完了後に、スターターキットとしてリストバンドおよびドリンクチケット5枚をセットで1500円で購入して会場内へという流れになっています。
各ビールには必要なチケット枚数(3~5枚)が設定されており、不足分はは追加でチケットを購入することになります。

私は、まず入り口近くの福島県内のブルワリー、ホップジャパンの独自のブースへ。

ホップジャパンは2020年8月、原発事故の影響でほぼ休眠状態となってしまった福島県田村市の公共施設「グリーンパーク都路」を改修し、ホップの栽培から手がけるクラフトビール醸造所「ホップガーデンブルワリー」を開設しました。
ホップをふんだんに使ったビールで1次産業から6次産業化に繋げていくサイクルを一つのまちで展開し、「人」×「もの」×「こと」を繋ぐブルワリーを目指します。(ホップジャパン公式サイトより)

4種類のビールがそれぞれチケット3枚で提供されていましたが、どれも味わってみたかったのでお得な飲み比べセット(チケット5枚)を選びました。
開場してまもないこの時はまだ空いていましたが、時間が経つにつれこのビールを求める列はかなり長くなっていきました。


ホップジャパンはAbukuma GREEN、HOPJAPAN IPA、Abukuma GOLD、いちご香るSOURの4種提供

この日は全国的に猛暑になり、福島県も内陸部では最高気温が35度を超えたようでしたが、海風が入るいわき市内はこの時30度を切っていて、外でビールを飲んでいてもとても快適。
平日の夕方でしたが、すでにかなりの人々が広々とした芝生広場など気に入った場所でビールを楽しんでいました。

タイムテーブルを組んでのビール提供

ビア博いわきの最大の特徴は、ブルワリーが直接販売するイベントではなく、樽で仕入れた各種のビールをビア博スタッフが販売することです。
ビアスタイルごとにサーバーが用意され、タイムテーブルを組んで1時間ごとに銘柄が切り替えられます。ビアスタイルが良くわからない方でも、分かりやすい解説があるのでビールを選びやすくなっています。



ビールは全国各地から集まっています

この日、タイムテーブルに沿って私が飲んだのは、まめまめビール(香川)のしろまめまめ、和泉ブルワリー(東京)のシュバルツ、大三島ブルワリー(愛媛)のスタウト、京都一条寺ブルワリーの一条寺レッドエールの4杯。普段飲む機会の少ない西日本のビールが多くなりました。


まめまめビールは初めて飲みました

普段なかなか飲めないブルワリーの気になるスタイルを選び、手元にあった20枚のチケットをきれいに使い切った頃、時刻は19時半になっていました。提供されるまでの時間を公園内を散策して待つこともでき、居心地がよくて待つ時間もそれほど気になりませんでした。

フードは市内飲食店の出店

フードの持ち込みも出来ますが、市内飲食店が提供しているフードも種類が豊富で美味しくてリーズナブル!


どちらも500~600円でボリュームもたっぷり

中でも一番私が気に入ったのは、いわき小名浜の郷土料理のあかいちの「浜のおつまみセット」600円。めひかり開き干し2枚、あんこう唐揚げ、さかなげっと(白見魚ナゲット)を味わうことができました。


その土地のものが味わえるのも嬉しいです 

参加して感じたこと

金曜日の夕方からの参加だったこともあり、早い時間は小さな子ども連れや年配のご夫婦の姿も。日が落ちてからは、仕事帰りという雰囲気のグループが目立つようになりました。
次から次へとビールをあれこれ飲むというよりも、気になったビールを片手に、美味しい食べ物もつまみながら、ゆっくりとその場の雰囲気を楽しんで飲んでいる方が多い感じがしました。


参加する前は、樽で仕入れた各種のビールをスタッフが販売する(ブルワリーが直接販売するのではない)点がどうなのだろうかと少し不安でしたが、実際はそれによっていろいろなブルワリーのビールを飲むことができ、とてもいい時間を過ごせました。提供されたビールの状態がとても良かったこと、ブルワリー名だけでなく銘柄とビアスタイルをはっきり提示していたことに加え、タイムテーブルに沿って1時間ごとに銘柄が切り替えられるということで、いくつかの楽しみ方ができることがとても良かったと思います。
好きなスタイルがあれば似たスタイルのビールを時間ごとに飲むのもいいし、あまりスタイルを気にせず気になるブルワリーのビールを飲んでいくこともできます。このやり方だと、幅広い時間帯に渡って飲むことにもなり短時間で飲みすぎることは少ないかも。時間が限られている方は、一定の時間帯に提供されているビールを飲み比べてスタイルの違いを感じることもできますし、もちろん気になった一杯だけ飲むのもOKです。
こういう提供方法のビアフェスに行ったことがない私は、手持ちのチケットを使ってどうビールを飲んでいこうか考えるのも楽しかったです。

今回、翌日の土曜日には想定を大幅に上回る来場者があり、入場までに時間がかかったり、早めにスターターセットや追加ドリンクチケットが完売となってしまったそうです。そんな反省点は来年に生かして、きっとさらに素敵なビア博いわき2023が開催されるに違いない…私はもちろん来年も参加するつもり。楽しみに待ちたいと思います。

いわきビア博いわきホップジャパン福島

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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