[ブルワー]2022.11.24

《園田智子さん》女性ブルワー 連載取材 「彼女がビールを造る理由」vol.4

クラフトビールのブルワリーで働く女性を取材するこのシリーズ。

第4回は舞浜地ビール工房「ハーヴェスト・ムーン」の園田智子さんにお話を伺いました。

 

ハーヴェスト・ムーン 園田智子さん

世界的なビアコンペティション、ワールドビアカップ2022でピルスナーがゴールドを受賞するという快挙を成し遂げた、日本が世界に誇るブルワリー「ハーヴェスト・ムーン」。今回は、ブルーマスター(醸造責任者)を努める園田さんに取材させていただきました!

美味しくビールを飲むためにも食事を大切に。

ー早速ですが1日のルーティンを教えてください。

「起床は6時半。毎朝欠かさないのは朝ご飯を食べることですかね。始業は9時で5時半までが勤務時間ですが、最近はイベントなどが重なり、かなりバタバタしていたので帰宅が遅くなることもありましたけれど。。でも帰ってからなるべくお料理をするようにしています!

彩りも美しい手料理の数々。最近のヒットは青唐辛子とライムとクミンシードを効かせたおかずとIPAのペアリング。

“せっかく美味しいビールを飲むなら美味しいものを食べたいから”という思いから、お料理にも手を抜かない園田さん。彩りも良く、栄養のバランスも考えられているのが分かります。忙しくても、お料理は気分転換にもなるということで日課にしているそうです。

マスター・ビアジャッジの資格も取得している園田さんですが、やはり普段から豊かな味わいを楽しんでいることで味覚が冴えているのかもしれませんね!レシピ作りも食べ物からインスパイアされることもあるそうです。最近はレストランで食べたデザートのハーブがアイディアの元になったとか。基本的にレシピは使ってみたいフルーツやホップを元に組み立てることが多いとお話ししてくれました。

好奇心から始まったビール造り。自信を持てるようになるまでの10年間。

ー園田さんがビールを造ることになったきっかけを教えてください。

「イクスピアリの事業計画の中に、自社でクラフトビールを造ってレストランで提供するというものがあり、社内でビール職人募集の公募があったんです。まさか自分がビールを造れるとは思ってなかったのですが単純に“面白そう”だな、と思い応募しました。」

ー2000年7月にイクスピアリの開業と同時に販売がスタートした「ハーヴェスト・ムーン」は今年23年目を迎えます。今は大人気のブルワリーですが、軌道に乗るまではやはりハードルはあったのでしょうか。

「当時は直営店がイクスピアリ内に何店舗もあったので出荷量の目標は割と早い段階でクリアできてたんです。外販も少しずつ上がっていきましたし。でも、“自分が造ってる”っていう風に自信を持って言えるようになったのは10年目になってからでしょうか。大きなタンクで造っているし、フライパンでお料理しているのとは違って、自分自身が造ってるという感覚がなかなかつかめないんですよね。」

立ち上げ当初からビールの審査会でアワードを獲得してきた実績があるだけに、少し意外な答えでしたが、新規事業としての立ち上げ、ゼロからのビール造りの勉強、走り続けてきたからこそ現状に甘んじることがなかった。自信がないというよりとても謙虚な姿勢でビール造りを追求してきているのだと感じました。

ー心境の変化に繋がった、きっかけはあったのでしょうか。

「2010年あたりからクラフトビールのイベントも増え、自分が外に出るようになり、他社さんとお話しする機会も増えてからですかね。ブルワーとしてお互いを刺激し合うような会話があったり、お客様から美味しいという声を聞けたり、そういった機会が少しずつ増えていき、落ち着いて見渡せたところで、やっと自分達が造っているんだ、という自信と実感をもてるようになりました。

客観性を忘れないビール造り

ブルワリーのポリシーとして、1年目から毎年必ずアワードに出品をされている「ハーヴェスト・ムーン」さん。その目的は客観的に自分達のビールを捉えるため、とのこと。

「ビール造りが独りよがりにならないよう、客観的に評価してもらうことが重要なんです。メダルを取るためにビールを造っているわけはないですが、もちろん結果的にアワードをいただけたら嬉しいです。でも、逆に評価されなかった場合は、理由をちゃんと考え振り返るきっかけにしています。」

ーアワードで言うと今年はワールドビアカップでピルスナーがゴールドを受賞しました。おめでとうございます!改めて感想をお聞かせください。

「本当に取れるとは思ってなかったです。(前談の通り)出品していることに意義があると思っていて、私は自分が審査員もやっているので受賞がどれほど難しいかを知っています。うちのビールはそんなに特徴的なビールではないと思うし、、、でも受賞できて、地道にやってきて本当に良かったと思っています!

ワールドビアカップは世界最大規模のビールの品評会。 今年は世界57ヵ国から1万以上の銘柄が出品された。 103の部門があり、ハーヴェスト・ムーンさんが受賞した部門と受賞したビールは次のとおり。 Category 42:ドルトムンダー/エクスポートまたはジャーマンスタイル・オクトーバーフェスト部門(エントリー数84) 金賞:「 Pilsner」

大枠のレシピは変えずに少しずつブラッシュアップしながら造ってきたのが功を奏したのではと振り返る園田さん。大きな会場で受賞発表された時はまずは驚き、そして喜びや嬉しさが押し寄せ感無量だったそうです。

アメリカと日本の”女性ブルワー”の違い

ワールドビアカップはアメリカのミネソタ州ミネアポリスで開催された大会ですが、アメリカでもまだまだ女性ブルワーは少数派。そんな中、アメリカではビール業界で働く女性の人権保護やキャリアアップ支援などを目的とした「ピンクブーツソサエティ」という団体も発足しています。園田さんは創設当初からミーティングに参加したり、創設者の女性との交流があるそうです。

ーアメリカでは「ピンクブーツソサエティ」のように女性ブルワーが中心となった団体もありますね。

「2008年頃の話ですが、日本とアメリカでは背景がだいぶ違っていて。アメリカでは、女性が造っていること自体に偏見がもたれるケースも多かった様で、例えばメディアからの取材で、“ヘッドブルワーにインタビュー”といった企画で女性が出ていくと“なんだ女か”といったリアクションも多かったと聞きました。」

当時はまだ古い考えや偏見の残るアメリカに比べたら日本の方はやりやすかったと園田さんはいいます。

「どちらかというと日本ではブルワーで女性だというと良い意味で注目してもらえることが多いですよね。他の国に比べても女性のブルワー比率は高いんじゃないかな。今回のワールドビアカップで日本は受賞しているブルワリーの半数のヘッドブルワーが女性でした。

ービール造りにおいて、女性ならでは出来たことなどはありますか?

「この秋造ったパンプキンエールはスパイスをちょこちょこと調合しているのですが、これは真似できないと言われました。でも、女性だからということではなく、お料理が好きな人なら楽しみながらアイディアが浮かんでくると思います。」

繊細な味覚やスパイスへの探究心は日々のお料理の経験も活かされているのでしょうね。

ー逆に大変だな、と感じるのはどういうことでしょうか。

「やはり力仕事は筋力が違うし、そこは敵わないのでお願いしたり頼ることもあります。」

これまで取材した女性ブルワーの方と共通して、やはり、力仕事は大変なようですが、コミュニケーションを大切にしているようです。

「例えば高い場所に重たいものを置く、といったことに抵抗がない人は不自由に感じる人に気がつかないだけなんですよね。なので積極的にきちんと言うようにしています。言うと“あ、そうか、すみません”と言う風に分かってくれますしね。半数以上は男性ですが、そうやって言い合える職場の環境作りはすごく大切ですよね。

これは空の樽ですが中身が入った状態で4段は積み上げないようにしています。

男性には男性しか分からない悩みもあるかもしれないですから。そこも含めてコミュニケーションをしっかりとろうと思っています。」

取材中、ブルワリー長としてスタッフ全員のことを考える姿勢が印象的でした。

ー最後にビールを造っていて一番嬉しいと思う瞬間はなんですか?

「ビールを飲んで美味しそうにしている顔を見るのはとても嬉しいです。楽しい、幸せな瞬間に立ち会えて、それに私も幸せを感じます。」

ありがとうございました!これからもたくさんの人の幸せな瞬間を作っていってください!!

定番5種に加えて季節ごとに醸造される季節限定ビールもバラエティ豊かなランナップで魅力の一つ。 冬に向けて「ゆずエール」、「クリスマスポーター」、「ニューイヤーピルスナー」などの発売が予定されている。

 

  • ロティズ・ハウス
    〜クラフトビールを味わうビアホール〜
    所在地 :千葉県浦安市舞浜1-4 イクスピアリ 4F
    TEL : 047-305-5652 ★予約専用ダイヤル:050-3134-5652
    営業時間:11:00~22:30
    クラフトビール「ハーヴェスト・ムーン」の醸造所に隣接する大型ビアホール!
    職人の研ぎ澄まされた感覚と技によって造られる多彩なクラフトビールをお楽しみください。 ビールによく合うグリル料理もおすすめです。
    お店の詳細はこちらから

 

「彼女がビールを作る理由」シリーズ記事

vol.3 和泉ブルワリー 松本さちさん

 

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

この記事を書いたひと

五十嵐 糸

ビアジャーナリスト

化粧品会社で16年間にわたり、営業・宣伝・PR業務等を経験。
楽しい時も辛い時も毎日ビールを飲んでサラリーマン時代を駆け抜ける。
大好きなビールについて勉強するうちにどんどんその魅力にはまり、PR経験を活かしてフリーに転身。ビールの美味しい飲み方や魅力を日々SNSや協会HPで発信。ビールを通したローカルコミュニティの活性化や、街の復興を目指し、渋谷の街のオリジナルビール「渋生」をプロデュース。

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