[コラム,ビアバー,ブルワー]2025.1.31

【東北で出会うビールの世界⑮】大雪の青森を再訪して飲んだビール(Aomori Brew Pub・蛍火醸造)

青森県では昨年末から今年の年始にかけて記録的な大雪となり、12年ぶりに豪雪対策本部が設置されました。
気象庁のデータによると、1月5日午前7時現在での積雪は青森市で139㎝、弘前市で111㎝など、津軽地方を中心に平年の3倍を超えていました。この時は市道など生活道路を中心に除雪が間に合わず、酷い交通渋滞が発生したようです。

もともと青森市は雪が降りやすい地域です。市の北西に位置する津軽半島方面から吹く北西の風と、市中心部から見て南東部にある八甲田山系を迂回した南西の風がぶつかって上昇気流が発生し、上空で水蒸気が冷やされて氷のつぶができ、雪雲になりやすいためです。今年はそれに加えて、極東ロシアの東南の端あたりから線状の雪雲(線状降雪帯)が次々と青森県側に流れ込むことによって、大雪をもたらしてきました。
そんな青森市では未だ平年より多い積雪があり、1月27日現在で平年の1.3倍を超えています。同日には臨時の市議会が開かれ、30億円の除排雪費用を盛り込んだ過去最大の1月補正予算が可決・成立したとのことです。これで今年度の除排雪対策事業費は、当初予算と合わせ過去最大だった2021年度を約3億円上回る62億1000万円となっています。
雪がほとんど降らない地域に住んでいる方には、なかなか想像するのも難しい状況と言えます。

そんな状況で以前訪ねた青森市のクラフトビール醸造所がどうなっているのか…あえて雪の多い今冬に再度訪問してみました。

新青森駅へ

新幹線で青森市に入る場合、玄関口になるのは新青森駅になります。東京駅から3時間あまり、盛岡駅からなら約1時間で着きます。

在来線で移動する場合は駅の外に出る必要はありませんが、時間に余裕があれば是非駅の外へ出て、駅前ロータリーの雪の状況だけでも見ておきたいところです。


最初はニュースで流れてきたよりは、意外と雪が少なく例年並みに感じました。でも訪問した日も含めて数日は天気がよく雪が溶けるような気温の日が続いていたのにこれだけの積雪があるということは、ピーク時にはどんな状況だったのか…想像するだけでも大変さを感じます。

Aomori Brew Pub

新青森駅から青森駅へはJRでひと駅。6分で着きます。距離は3キロあまりでタクシーやバスの利用もできますが、冬は天候に左右されがちなので注意が必要です。現に、訪問する1週間間に乗車した新幹線では、新幹線で新青森駅まで行ってもその先のJR在来線はすべて夕方までは運転を見合わせていること、バスの状況についても情報がないことなどが繰り返しアナウンスされていました。

青森駅から徒歩5分ほどで行けるのが、Aomori Brew Pubです。距離はそれほどありませんが、この時期の歩道には雪で段差ができているので歩くのには注意が必要です。

以前の記事は下記から…
【東北で出会うビールの世界⑪】今、青森市のビールが楽しい!(後編) 量り売りでビールを飲むAomori Brew Pub(2023.7.6)

渡されるカードを使って、8つのタップからセルフで注いでビールが飲めるという基本的なところは変わっていませんでした。


フードについては、持ち込み不可でスマホから注文という形になっていました。

軽めの5種類ほどのフードの中から、おつまみほたて(600円)とフレンチフライ(550円)を注文してみました。


この日味わったビールは4種類で合計で1,538円。自由に量を調整できるので、いろいろ味わえてお得感を感じました。営業時間も15時からと少し早くなっていたので、夜までに半端な時間ができたときにも利用しやすいと思います。
(営業形態・時間等については変わることがあるので、お出かけ前に確認をお願いします。)

◎Aomori Brew Pub
青森市安方1-5-11 ギャレスビル2F
営業時間 水〜土 15:00~22:00⁡(L.O 21:30)
⁡定休日⁡ 日~火曜日

蛍火醸造

青森駅からの列車は、JR東日本のほかに青い森鉄道が走っています。こちらに20分ほど乗ると、浅虫温泉駅に着きます。
駅から徒歩2分ほどの場所にあるのが、1年半ほど前にオープンした蛍火醸造(KEIKA BREWING)です。
こちらも青森市ですが、雪での歩きにくさはほとんど感じずにすみました。


当初から営業時間が少し変わっていましたが、昼過ぎから夜まで飲める点は同じです。温泉地なので、宿泊をここにしてチェックイン前や夕食前後に利用するのもお勧めです。

開店直後の記事は下記から…
【東北で出会うビールの世界⑩】今、青森市のビールが楽しい!(前編) 先月オープンした浅虫温泉の蛍火醸造(KEIKA BREWING)へ行ってきました(2023.7.3)

この日のビールは自家醸造の定番3種類、限定2種類に加えてゲストビールが1種類でした。

私は沖縄のシークワーサーを使っているという限定のTINK TINK(写真左、アルコール分4.3%・IBU24)、フラッグシップエールの蛍火(写真右上、アルコール分5.5%・IBU33)、ESBスタイルで限定のDARK AND LONG(写真右下、アルコール分5.7%・IBU34)と飲んできました。
軽めのおつまみも10種類ほど用意されています。

この日は平日の午後だったのでお客さんが少なく、お店の方といろいろ会話が尽きず楽しい滞在になりました。お店がそれほど大きくはないので、タイミングによってはかなり混みあうこともあるようです。
残念だったのは浅虫温泉駅前の足湯にビールを運んできてくれるというサービスが体験できなかったこと。土日限定とあったので、足湯につかりながらクラフトビールを飲みたい方はぜひ土日に訪問してみてくださいね。

◎蛍火醸造
青森県青森市浅虫蛍谷64−15
営業時間:水~日 13:00~21:30
定休日:月・火曜日

冬の東北は…

久し振りに再訪した青森市のブルワリーは、どちらも少し変化はありましたが冬でも元気に営業していました。オフシーズンで人が少ないからこそ、外に比べて暖かな店内で落ち着いてビールを飲むには適しているという考え方もできます。

青森市以外の東北でも、ウィンタースポーツを楽しむ方以外にとっては、冬は基本的にオフシーズンに当たります。ただし、天気予報などでも「東北では…」とまとめて語られることがありますが、もちろん場所によって気温も積雪量も違います。
各県の県庁所在地の1991年から2020年の気温と降雪量の平年値(2月)を見ていただくと、だいたいの傾向はつかめます。

青森県青森市:気温-0.4度・降雪量141㎝
岩手県盛岡市:気温-0.9度・降雪量55㎝
宮城県仙台市:気温2.4度・降雪量18㎝
秋田県秋田市:気温0.8度・降雪量79㎝
山形県山形市:気温0.4度・降雪量79㎝
福島県福島市:気温2.5度・降雪量34㎝

*平年値とは30年間分の気象データについて算出した平均値のことで、その時々の気象や天候を評価する基準として利用されたり、その地点の気候を表す値としても用いられています。この平年値は10年ごと、西暦年の1の位が1の年に新しいものに更新され、2021年から2030年まで用いる「平年値」は1991年から2020年までの平均値ということになります。

降雪量が一番多いのは青森市、続いて秋田市と山形市ですが、一番寒いのは盛岡市です。行く場所によって、服装や雪対策など考えなければならないことも変わってきます。
もちろん同じ県内だとしても場所が少し違うと状況が違うこともありますし、同じ場所でも数日ずれるだけで全く状況が変わってしまうことも多いです。そして残念ながら、寒さはともかく大雪になれば公共交通機関が乱れることも増えます。

冬に限ったことでも東北に限ったことでもありませんが、情報収集も含めて空振りになってもいいので備えは十分にして、寒い季節にも旅とビールを楽しんでほしいと思います。

Aomori Brew PubKEIKA BREWING蛍火醸造青森市

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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