[コラム]2025.2.5

【連載ビール小説】タイムスリップビール~黒船来航、ビールで対抗 83~老舗酒蔵の次男、麹で覚醒する 其ノ弐

ビールという飲み物を通じ、歴史が、そして人の心が動く。これはお酒に魅せられ、お酒の力を信じた人たちのお話。
※作中で出来上がるビールは、実際に醸造、販売する予定です

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「お前はありえないことをした。にも関わらず、しらを切りとおすつもりか?」

ひときわ威圧的な声が響く。声の主は悪評で有名な同心、村岡だった。口元を歪めて嫌な笑みを浮かべている。

「何度も申しておりますように、わたしは何も知りません。何かの間違いです!」

「ああ、恐ろしいことよ。自らの罪を認めようともしない。これだから傾奇者ばかりが集まる店は!」

村岡はつるの手のひらをギリギリと踏み潰す。

「……っ」

「お前は黒い船に乗ってきた客人に対し、酒を用意しなかった。あろうことかお上の顔に泥を塗ったのだ。その罪は死罪に値する」

「……だからそんなことは何も……!」

「ひっ捕らえよ」村岡の一声で、つるは大勢の男たちに羽交い絞めにされた。手に、足に縄がぐるぐると巻き付けられていく。

「だから!わたしは何も知らない!」

泣き叫ぶ口には布を詰められ、つるは地面に蹴り倒される。その瞬間、新之亟とバチリと目があった。ぎらぎらと怒りを帯びた、真っ赤な目。その目は涙を流しながら、まっすぐに新之亟を見つめていた。

『お兄ちゃんに、喜兵寿に伝えて』

新之亟はつるにそう言われた気がして、咄嗟に頷く。

「さっさと座敷牢へ連れていけ!」

村岡の怒声と共に、つるは馬に乗せられる。そしてあっという間にその姿は見えなくなってしまった。

大変なことになった……

新之亟は落ち着くために、大きく一つ深呼吸をした。背中から、脇から冷や水のような汗がだらだらと流れているのがわかる。

「まずは状況を把握しなくては」

あたりを見渡すと、道の端で泣きじゃくる小さな背中があった。

「夏か……!」

新之亟が駆け寄ると、知った顔を見た夏は、さらに大きな声で泣き始めた。

「つるが……つるちゃんが!」

嗚咽でうまく話せない夏に、新之亟は持っていた水を飲ませる。

「夏、落ち着け。一体なにがあったんだ?」

夏はしばらく「ひっ、ひっ」と浅い息を繰り返していたが、どうにか途切れながらも話し始めた。

―続く

※このお話は毎週水曜日21時に更新します!
協力:ORYZAE BREWING

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

ルッぱらかなえ

ビアジャーナリスト

ビールに心臓を捧げよ!
お酒をこよなく愛する、さすらいのクラフトビールライター。
和樂webや雑誌「ビール王国」など様々な媒体での記事執筆の他、クラフトビール定期便オトモニでの銘柄選定、飲食店等へのビール提案などといった業務も行っています。
朝から晩まで頭の中はいつだってビールでいっぱい!

ビールの面白さをより多くの人に伝えるため、ビールをテーマにした小説「タイムスリップビール~黒船来航、ビールで対抗」を連載中。小説内で出来上がる「江戸ビール」は、実際に醸造、販売予定なので、ぜひオンタイムで小説の世界を楽しんでいただきたいです!

その他、ビールタロット占い師としても活動中(けやきひろばビール祭り、ちばまるごとBEERRIDE等ビアフェスメイン)
占い内容と共に、開運ビアスタイルをお伝えしております。

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