[イベント]2010.9.10

お気に入りのビアグラス

グラス

ビールの特性に合わせて多種多様な形や大きさがあるビアグラス。素材もガラスのみならず、陶器、錫、銅、チタン、竹など実にさまざま。ビールを泡立てて飲むピルスナーの場合、一般的にはグラスの内側にざらつきがないものがよいとされている。液体にフタをする役割の泡が、グラス内部の凹凸によって壊れるのを防ぐためだ。

以前、日本の家庭でビールを飲むグラスといえば、小ぶりなタンブラーが圧倒的多数だった。このグラス、ビールのことを考えて作られたというよりは、食卓であるちゃぶ台に合わせたサイズであったというのが真相のようだ。

とにもかくにも、家呑みにはグラスが不可欠。それがお気に入りのものであれば、家呑みはもっと楽しく、うれしくなるに決まっている。


我が家の戸棚には、形が気に入って購入したベルギービールの専用グラス群や、いただきもののタンブラー、ピルスナーグラスなどが並んでいる。これまでは、飲むビールや気分によってグラスを選び、ビールを楽しんできた。

ところが近ごろは、旅先で買い求めたタンブラーに夢中になっている。琉球ガラスで作られたもので、ちょっと厚手。どっしりとした重量感、持ち手部分の緩やかなデコボコ具合、グラスを通して見える風景が屈折するところなどが気に入っている。有人島で日本最南端の島、波照間島の中心部にあるカフェ&ギャラリー「仲底商店 2号店」で8月に購入した。

このグラスは、カフェのオーナーである仲底美紀さんが琉球ガラスの職人に作ってもらったものだ。琉球ガラスというと、気泡が入った赤や青などの色とりどりなものが一般的だが、このタンブラーは透明かつ気泡がほとんど入っていない。

「わざとらしく気泡を入れて作るやり方は好きでなかった。透明にしたのは、飲み物が一番美しく映えるから」(美紀さん)

彼女が波照間に住み始めたのは8年前から。長野県の職場で出会ったご主人が生まれ故郷の波照間で家業を継ぐことになり、共に移住した。店には八重山在住の作家が制作したアクセサリーなどの雑貨が並び、壁のギャラリーには、波照間の姿と住民達を撮り続ける写真家、矢口清貴氏の写真が飾られている(9月30日まで)。一枚一枚デザインが異なるドアは、気に入ったものをインターネットオークションで購入。ロゴデザインは知人の絵本作家に依頼したという。オーナーのセンスが随所にちりばめられた、心地よい空間だった。

カフェでは、グッと冷やされたオリオンビールが上述のタンブラーで供される。波照間の、目に刺さるような太陽の光と痛いほどの熱。緑に囲まれた仲底商店の中庭で口にした、喉に心地よい冷たさ、苦み、手に感じたグラスとビールの重み。旅先で出合ったタンブラーが愛しくてたまらないのは、波照間で飲んだうますぎるオリオンビールの快感をありありと思い出させてくれるモノだから、なのかもしれない。■


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003 野田 幾子

この記事を書いたひと

野田 幾子

ビアジャーナリスト/ビアアンバサダー

94年にベルギービール、96年に国産地ビールの美味しさに目ざめ、ビアアンバサダー活動を開始。2007年にビアバー・ビアパブムック『極上のビールを飲もう!』(エンターブレイン刊)の全体構成、執筆、編集を皮切りに、ほぼ毎年シリーズを刊行。雑誌でのクラフトビール特集の執筆/監修、共著、講習、イベント企画など多数。
食のキュレーションサイト「ippin」でクラフトビールキュレーターを務める。
http://r.gnavi.co.jp/ippin/curator/nodaikuko/

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