[イベント]2011.1.7

石川雅之氏インタビュー:『もやしもん 第8巻』ができるまで

「ビールはね、笑顔が一番似合う飲み物なんだよ」。この名言を生んだ“菌漫画”『もやしもん』。第8巻は、ビールをテーマに1冊描き上げられている。連載中に国内クラフトビールメーカーへ協力を呼びかけたところ約30ものメーカーから応答があり、メーカーのロゴたちが作中のパレードを華々しく飾った。そんなもやしもんの8巻はどのようにして生まれたのだろうか? 今回より3週にわたり、『もやしもん』作者の石川雅之さんインタビュー記事を掲載します。

■日本の地ビールは取り上げないつもりだった

『もやしもん』でビールを取り上げることが決まった際、担当編集者とこんな話をした。「日本の地ビールを取り上げるのはやめよう」。いち消費者の感覚としてハードルが高い、それを知ったところでどうする、という気持ちもあった。

それが180度転換したのは、たまたま入った店で大山Gビールのヴァイツェンを飲んだのがきっかけだ。

「うまいやないかい。わざわざドイツに行かなくてもよかったんでは? そこから俄然、地ビールに興味が出てきたんです」

その直前、ビールを知る取材のために石川さんは取材旅行へ出かけていた。ミュンヘンのオクトーバーフェストへ立ち寄ってからチェコへ移動、ドイツに戻りベルギーへ。「立ち止まるな、寝るな、誰もケガするな」が合い言葉の、11日間の強行軍。だが帰国後、衝撃の事実にぶち当たってしまった。

石川さんも同行した担当編集者も「結局、ビールってなんなのか、どう取り上げていいのか、いまいちよくわからない」。

そんな、頭をかかえていた時期に飲んだのが大山Gビールのヴァイツェンだ。この一杯が、テーマの方向を日本のクラフトビールへと一気に転換させたのだった。

■「ビールとは何か?」への気づき

冒頭で紹介した「ビールはね、笑顔が一番似合う飲み物なんだよ」の言葉は、作中に登場するミス某農大の武藤葵が口にした言葉だ。8巻の頭では地ビール嫌いを公言していた彼女だが、マイクロブルワリーの加納はなが造ったヴァイツェンや、ゼミの教授である樹慶蔵の言葉などからヒントをもらいながら、「ビールとは何か」深く考えるようになっていく。その悩んだ過程と導き出した答えは、石川さんがたどった道筋をそのまま表現しているかのようだ。

「ビール編の展開は、原稿にしながら考えていきました。前半は取材に行ったオクトーバーフェストなんて、頭の片隅にも残っていなかった」という石川さんだったが、ビール編の半分ほどまで話が進み、どう話をまとめようかと困ったとき、たまたま知人宅の通夜に行く機会があった。

「お通夜で飲むビールって美味しくないんですよね。こういう雰囲気は日本酒の方が合う。じゃあ、ビールに何が足りないというよりも、そもそもビールって笑いながら飲む方が似合ってるんじゃないか? ということに思い至って」

そういえば、みんなが笑いながらビールを飲んでいるエライ陽気な祭りを最近どこかで見たな…。地ビールのオクトーバーフェストが出来たら面白いんじゃないか? ──そんな発想が、国内ビールメーカーのロゴが映える華々しい某農大オクトーバーフェストへとつながっていった。■

もやしもんインタビュー石川雅之

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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