[イベント]2014.1.16

新成人に伝えたいいくつかのこと

今年の成人の日は1月13日だったね。まずは成人おめでとう。今まで君が知り合ったどの一人が欠けても今の君にはならない。そう思うと君と関わってきたすべての人たちに感謝したくなるね。もちろん、こうして私の原稿に目を留めてくれているリアルでは会ったことが無いかもしれない君にも感謝しているよ。

ところで、成人と言えば選挙権やら何やらいろんなことが今までと変わってくる。罪を犯せば今までは「少年A」で済んでいたのに、名前が即座に公表される、とかね。大人になる、ということは権利と一緒に責任も生じるということをとにかく忘れないでほしい。二十歳の誕生日が過ぎている君はビールを飲んでもいいのだ。今までに君が隠れてお酒を飲んだことがあるかどうかを私は知らない。でも、酒飲みの先輩として少し偉そうなことを言わせてほしい。

まず、君も聞いたことがあると思うけど「とりあえずビール」について。人や場所を問わず「酒を飲む」という行為にビールはつきものだ。「とりビー」という略称すら存在するほどにね。「とりあえず」という言葉はビールに対して失礼だ、という人がいる一方で、それほどまでにビールは愛されているのだから肯定的にとらえるべき、という人もいる。これに関してどう考えるかは君の自由であるし、他人がどう考えるかについても否定してはいけない。しかし、「とりあえずビール」という言葉が存在するが故に「ビールなんて」とビールの価値を認めたがらない唾棄すべき大人が少なからず存在する。君はこうなってはいけない。他人の酒を馬鹿にするということは酒を通してその人を馬鹿にしていることなのだ。そして、例えば炭酸が苦手、という人にビールを無理強いしてはいけない。人には好き嫌いがあるし、得手不得手がある。それは個性として尊重すべきことだ。公表していないだけでアレルギーがある可能性もある。無理強いは「アルコール・ハラスメント」という恥ずべき行為であり、人間関係を壊しかねないのだから。そして、それと同様に君がビールを飲んでいることを誰かに馬鹿にされたとしたら怒ってもよいことをされていることを自覚しよう。怒るべき、と言わないのには理由がある。その人の知性の無さを憐れんでそっとその場を離れる方がいいこともあるからだ。無駄な議論を酔いに任せて楽しむことが出来る人とは良い飲み友達になれるが、それは他人を尊重するという土壌があってこそ、ということを忘れてはいけない。

次にビールを飲むときに気を付けてほしいこと。それは何かに注ぐということ。今はクラフトビールブームなんて言われているのは知っているかな?そのビールのほとんどは酵母がビールの上の方で活動するエールと言われるタイプのものだ。色も琥珀色だったり、黒かったり、ピンク色のものだってある。でも、日本の大手が作っているのはラガーと呼ばれる下の方で酵母が活動するビールだ。このラガーと呼ばれるビールが日本で一般的に「ビール」と言われている。このビールの特徴は金色の液体に白い泡。このコントラストの美しさはうっとりするほどだ。君が缶を開けてそのままゴクゴクと飲んだらその美しさはどうやって楽しんだらいい?この輝かしい美しさを生み出すためにいくつの工程を経ているのかを考えてみるのもいいかもしれない。それに、炭酸の喉越しも缶の方が強く感じるから、少し強い炭酸のせいで繊細な味わいを感じにくくなったりする。缶から飲むということは例えて言うならロースとカルビのセットを注文しておいてロースだけを食べてカルビを捨ててしまうような、そんなもったいないことなのだ。もちろん、何に注ぐかにも気を配らなくてはいけない。絶妙な色遣いを楽しむためには透明なグラスやジョッキを選ばなくてはいけない。クリーミーな泡を楽しみたいなら素焼きのものを用意するとか、内側に加工が施してあるグラスにするなどの工夫が必要になる。それだけではない。きりっとした苦味を強く感じたいなら口にあたる部分が薄いグラスを選ぶべきだし、あまり苦味を感じたくないのなら逆に厚いグラスを選ぼう。もちろん好みの大きさだってあるよね。そう考えるとグラスはいくつか用意してその時の気分やビールに合わせるのがお勧めだ。ビールによっては専用グラスで飲んでほしい、というものもある。専用グラスにはそのビールをよりおいしく楽しんでもらうために工夫が詰め込まれていることも多いからだ。まずは自分がどんな風にビールを味わいたいのかを知るために、いろいろな形のグラスに同じビールを注いて飲み比べてみるのも一興。

最後に、これは自戒の念も込めて言うのだが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉は聞いたことがあるよね。酒というのは適度に飲む分には薬にもなるし、コミュニケーションツールとしても有用だ。しかも、旨い。ところが、だ。この旨さがついつい飲み過ぎという困った事態を引き起こしてしまう。翌日に頭を抱えてしまうような大失態をしてしまうとか、記憶がないとか、二日酔いで「もう二度と飲まない」という無駄な決意をしてしまうなど愚の骨頂。ほんの数回ならご愛嬌で済むかもしれない。ただ、酒を飲む度にこうでは誰も一緒に飲んではくれなくなる。飲み過ぎて友人を失うのも気分が悪くなるのも「自分の勝手」とうそぶくことは許されない。相手が不愉快な気分になることもそうだし、二日酔いで仕事の効率が下がるなどは言語道断。他人に迷惑をかけるというのは酒飲みの風上に置いてはおけない行為なのだから。当然、二日酔いで会社を休むなどあってはならない。そこをしっかりと肝に銘じておいてほしい。

 

君が立派な酒飲みとなって、乾杯できる日が来ることを楽しみにしているよ。

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

川端 ジェーン

ビアジャーナリスト

ベルギービールをこよなく愛しています。笑顔でビールを酌み交わせば世界平和は実現すると考えています。ビールが好きすぎてたまに他人と知人の境目がなくなってしまいます。ビールの美味しいお店で見ず知らずの人に話しかけていたら、それは私かもしれません。
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