[テイスティング]2014.9.12

ビアポエム(12)セゾン・デュポン・キュヴェ・ドライホッピング2014 〜短編映画のようなセゾン

ベルギービール

潮騒をテーマにした短編映画のようなセゾン

ドライホッピングはビールの味に波を与える。
モルトが静、ホップは動。印象的な香りを漂わせて、苦みをほろっと感じさせた後に、さらりと消える。
わずか数秒の間でストーリを語りきる。ホップにはそんな語り部の魅力がある。

セゾン・デュポン・キュヴェ・ドライホッピング2014

セゾン・デュポン・キュヴェ・ドライホッピング2014

セゾン・デュポンといえば、デュポン社の看板商品でもありその味わいの評価も高いビールだ。醸造所は1850年創業、1920年にデュポン一族が買い取り、現在に至る。セゾンビールというスタイルは、スペルでは”saison”、英語にすると”season”、つまり「季節」を意味する言葉に由来する。ここでいう季節とは、夏。ベルギー南部のワロン地方は暑い時期が続くこともあり、農作業の合間に喉の渇きを潤すビールが求められた。しかし冷蔵技術もない時代、アルコールの低い水のようなビールでは夏まで保存がきかない。そのため、ある程度高い度数(6%〜7%程度)で、さらに殺菌効果のあるホップを多めに、場合によっては乳酸菌発酵も用いてビールの保存性と爽快さを両立させようとしたのが、セゾンのはじまりと言われる。はじまりといっても、誰かが突然発明したというよりは、長年にわたって味わいを進化させた結果、このような味わいになっていったと考えるのが正しいのではないかと思う。

前置きはさておき、定番商品であるセゾン・デュポンに「ドライホッピング」が産まれたのは2011年のこと。毎年異なるホップをドライホッピングして、限定リリースしている。ドライホッピングについてはご存知の方も多いとは思うが、おさらい。ホップの投入タイミングは、伝統的な手法では大きく2つに分けられる。麦汁煮沸中の投入か、煮沸終了直前の投入か。前者は苦みを抽出するためのもの、後者は香りを抽出するためのもの。それぞれに使用されるホップを、ビタリングホップ、アロマホップという。最近では、IPA、特にアメリカンIPAを中心に、もっと自由な手法でホップが使われている。ドライホッピングもそのひとつで、煮沸が完全に終了した後、冷却後の麦汁(発酵タンク、熟成タンク)にホップを投入する手法だ。こうすることでホップの油脂成分が煮沸の高い温度で揮発することなくビールに残り、ホップの芳香がより強くなるというわけだ。

前置きばかりが長いので、そろそろ飲もう! さらに今回は通常のセゾン・デュポンと飲み比べてみることにする。

・・・tasting
セゾン・デュポン・キュべ・ドライホッピング2014 6.5% 瓶内二次発酵。
ドライホッピングに使われているホップは「チャレンジャー」。
ゴールドマリーの色が少し入った美しい金色。発泡性高く滑らかな泡が盛り上がる。香りはハーブのようで、レモンやセージに青みがかったもの。味わいの波は酸味から始まり、柑橘系のフルーティな甘みが寄せるやいなや、スパイシーな波が訪れては一斉に引いていき、綺麗な苦味が舌の奥に残る。この移ろいがものすごく美しい。浜辺の短編映画のようなセゾン。

セゾン・デュポン 6.5% 瓶内二次発酵
キュべに比べると、香りに柑橘らしさは少なく、甘やかに感じる。酸味、フルーティさも同じ程度だが、キュべでは柑橘で包まれていたために見えなかった甘みがくっきりとする。苦みへの移り変わりはこちらでも健在。レモンのようなキリッとしたフレーバーはなくなる代わりに、乳酸系のモチっとした舌触りが、グラッシーな苦味の余韻とともに後味を印象づける。言わずもがな、これもまた良し。

セゾン・デュポン

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この記事を書いたひと

ニシバヤシ タツマ

ビアジャーナリスト/びあけん1級(2013,2015)

大学時代に自転車旅行でビールのうまさを知る。ほどなくしてベルギービールにカルチャーショックを受け、 世界のビールの虜に。ビールは大人の趣味の1つ。その一期一会を記事やビアポエムとして伝えていきたい。

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