[ビアバー]2014.1.14

台湾のビールは薄いのか?(4)Jolly―ビアエッセイ

台北の道路はバイクで埋まる。

台北のビアバーめぐりも今日で終わり。昼間の所用は思ったより時間がかかってしまい、自由になった時には20時頃になっていた。週末でもあり、店はもう混み合っているだろう。早く店に行きたいし、かなり疲れていたこともあり、店まではタクシーで行くことに。運転手に「Jolly」と店の名前を言ってもわからないだろうと思い、最寄駅のMRT南京東路駅までと伝えた。

「南京東路站!」
焦っていたせいか、ぶっきらぼうに言ってしまったのは否めない。乗車して少しすると、運転手が、
「大陸か?」
と、聞いてきた。お前は「台湾人」ではなく「中国人」か? ということだ。相手に嫌悪感を示すような言い方でもなく、かといって歓迎するでもない、ニュートラルな言い方だった。
「いえ、日本です」
「日本か…」
そう言うと、タクシーが南京東路駅に着くまで沈黙が続いた。信号で停まる度にバイクが横を通り過ぎ、前方もバイクで埋まっていた。この沈黙をどうにかしたいという気持ちと、早くビールを飲みたい気持ちが相まって、タクシーに乗っている時間が恐ろしく長く感じられた。

台湾クラフトビールの草分け的存在「Jolly」

台湾クラフトビールの草分け的存在「Jolly」

「Jolly」に着いた頃には20時半を過ぎていただろうか。やはり店は混み合っていた。入口で1人ということを告げると、店員さんは店の予約状況を確認しているのか、手元の紙を見てしばらく黙ってしまった。1人だと伝えたものの、もしかして自分の存在に気づいていないのか? と思い始めたら、
「21時半までになるけど、それでもいい?」

店にいられる時間は1時間程度だが、まったく問題ない。
「大丈夫です」
連れられた席は自分1人にも関わらず4人席で、まわりはコンパをしているような若者たちに囲まれていた。本当はカウンターに座りたかったのだが仕方ない。

もちろん注文するのはテイスティングセットだ。「Jolly經典啤酒組合」の6種類セット(290元=約1,015円)。「ピルスナー」「ペールエール」「スタウト」「スコッチエール」「ヴァイツェン」が定番で、もう1種類がシーズナル。そのシーズナルが何なのかは、店員さんが説明してくれたようだったが、早口でまったく聞き取れず。「愛爾(エール)」だけは聞き取れたような気がするのだが。

「Jolly」のメニュー。

「Jolly」のメニュー。

奥から、ピルスナー、ペールエール、スタウト、スコッチエール、ヴァイツェン、シーズナルビール。

奥から、ピルスナー、ペールエール、スタウト、スコッチエール、ヴァイツェン、シーズナルビール。

この「Jolly」は、台湾クラフトビール界の草分け的存在でもある。いつから営業しているのかはわからないが、タイ料理とクラフトビールの店として少なくとも2006年にはすでに営業していたようだ。日本でもクラフトビールの認知度は高くなかった頃だ。しかも、「Jolly」は恐らく台湾唯一のブルーパブ。台湾は自家醸造が違法ではないようなので、「恐らく」と付けておくが、「Jolly」は現在台北市内に3店舗を抱えるまでになっている。

明日の今頃はもう日本か…と思いながらビールを飲んでいたが、今のこの状況が日本とそれほど変わらないような気もしていた。台湾っぽくない、ということではない。今回の訪台でまわった3軒のビアバーは、それぞれ特徴があるものの、日本で飲んでいるような感覚があった。恐らく、これはヨーロッパやアメリカのビアバーで飲む感覚とは違うのだろうと思う。

その感覚が何なのかわからないままだったが、気分は悪くない。14年経って再訪した台湾で、自分の好きなビールを楽しめるのだ。今回はビアバーめぐりのために訪台したわけではないので仕方ないが、他にももっと行きたいビアバーがあるのに行けなかったのは心残りだ。でも、台湾は近いし、また来ればいい。その時には台湾のクラフトビールももっと盛り上がっているだろう。

1時間というのはあっという間に過ぎるものだ。店員さんに言われるまでもなく、ビールを飲み干して店を出た。店員さんからもう時間だとも言われていないが、自分から店を出た。もうこの店にいたくないというわけではない。が、自分でも不思議なくらい「よし、帰ろう」という気持ちになっていたのだ。

なんとなく、またこの店には来るだろうなと思っていたからだろうか。

台湾のビールは薄いのか?(1)プロローグ―ビアエッセイ
台湾のビールは薄いのか?(2)金色三麥―ビアエッセイ
台湾のビールは薄いのか?(3)Gordon Biersch―ビアエッセイ
台湾のビールは薄いのか?(4)Jolly―ビアエッセイ
台湾のビールは薄いのか?(5)エピローグ―ビアエッセイ

台湾

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

アバター画像

この記事を書いたひと

富江 弘幸

ビールライター

1975年、東京都生まれ。法政大学社会学部卒業後、出版社でライター・編集者として雑誌・書籍の制作に携わる。その後、中国留学、英字新聞社ジャパンタイムズ勤務を経てビールライターとして活動中。ビアジャーナリストアカデミーの講師も勤める。

【著書】
教養としてのビール(サイエンス・アイ新書、SBクリエイティブ)
BEER CALENDAR(ワイン王国)

【執筆・監修】
和樂web(小学館)
Discover Japan(ディスカバー・ジャパン)
東京人(都市出版)
ビール王国(ワイン王国)
ビール大全(楽工社)
るるぶキッチンmagazine 秋冬号(JTBパブリッシング)
あなたのしらない、おいしいビール(cakes)
他多数。

【出演】
金曜たまむすび(TBSラジオ)
ちきゅうラジオ(NHKラジオ第1)
すっぴん!(NHKラジオ第1)
浜美枝のいつかあなたと(文化放送)

Twitter:hiroyukitomie
Website: 地域とビール
Weblog: 地域とビールとブログと

ストップ!20歳未満者の飲酒・飲酒運転。お酒は楽しく適量で。
妊娠中・授乳期の飲酒はやめましょう。