[ビアバー]2014.1.13

台湾のビールは薄いのか?(3)Gordon Biersch―ビアエッセイ

台北では今日もバイクが走っていた。

バイクの波から逃れながら道路を渡り、見知らぬ土地を歩き回る。それはそれで楽しいのだが、今日はMRTで移動してみようと思い、地下に潜った。台北のMRTは東京までとはいかなくとも、多くの路線が整備され、かなり便利になっていた。たいていの場所ならMRTだけで移動できる。中国語ができなくても、乗り方の難しいバスに乗る必要もない。

今日訪れたビアバーは「Gordon Biersch」。

台湾には「新光三越」というデパートがある。日本の三越と台湾の企業が合弁で造ったデパートで、台湾に何店舗もある有名なデパートだ。「Gordon Biersch」は、その新光三越にあるという情報を仕入れていたが、そのメモをホテルに置いてきてしまっていた。これではどこの新光三越かわからない。

とりあえず、その時いた場所から一番近かった新光三越へ、MRTに乗って行ってみた。しかし、棟がいくつもあり、新光三越の中でも迷子になってしまいそうなほど。ええい、と受付のお姉さんに「Gordon Biersch」の場所を聞いてみた。「ここじゃなくて別の新光三越だったら恥ずかしいな…」と思い、日本だったら聞きもしないほどの人見知りなのだが、ここは台湾、ちょっとだけ行動力が上がる。
「すみません、えーと、ご、ゴードン、ビ? ビー…」
「ああ、GBですね? A11棟です」
台湾では「GB」と呼ばれているらしい。ところで、ここでは中国語でのやりとりを日本語で書いているが、もちろん実際の雰囲気はこんな感じではない。受付のお姉さんの話し方を雰囲気を含めて直訳するとこうなる。
「え? GBでしょ? A11!」
とにかく店の場所はわかった。早速A11棟に向かう。

「Gordon Biersch」は、ドイツ人かアメリカ人が台湾に来てビールを造り始めたものだと勝手に思っていたが、実はアメリカ・カリフォルニア州で1988年創業のクラフトビールブリュワリーだった。直営のビアレストランがアメリカに35店舗あり、アメリカ以外ではなぜか台湾にだけビアレストランがある。

「Gordon Biersch」の外観。窓からはたくさんの樽が見える。

「Gordon Biersch」の外観。窓からはたくさんの樽が見える。

店はそれほど混んでいなかった。カウンターに通され、タップの前の席に座る。注文するのはもちろんテイスティングセット。「GB六小福」(250元=約875円)だ。「金色三麥啤酒組合」よりも量は少ない気がするが、6種類も味わえる。ビール好きにも関わらず、酒が弱い自分のような人にはありがたい。

テイスティングセットの専用シート。

テイスティングセットの専用シート。

左から、ゴールデンエクスポート、ヘーフェヴァイツェン、チェコピルスナー、メルツェン、シュバルツビア、オクトーバーフェストビア。

左から、ゴールデンエクスポート、ヘーフェヴァイツェン、チェコピルスナー、メルツェン、シュバルツビア、オクトーバーフェストビア。

6種類のうち「ゴールデンエクスポート」「ヘーフェヴァイツェン」「チェコピルスナー」「メルツェン」「シュバルツビア」の5種類は定番。もう1種類がシーズナルで、この時は「オクトーバーフェストビア」だった。

テイスティングセット用にシートが準備されており、6種類の解説が書いてある。その上にそれぞれのグラスをセットしてくれるのでわかりやすい。小さいグラスだが、濃度が違うビールが6種類並ぶ様を見ていると、「美しい…」と思ってしまう。飲まなくてももうこの時点である程度満足しているのだ。もちろん飲むのだけれども。

自分の好みとしては「ヘーフェヴァイツェン」が特によかった。軽い口当たりのラガーである「ゴールデンエクスポート」も、食べごたえのあるハンバーガーとの相性は最高だった。ああ、なんだろう、異国の地にありながら不安がほとんどないこの落ち着く感じは。こうなると、身も蓋もないがどれもおいしく感じられるのだ。

でっかいチーズバーガーはこの店のウリ。

でっかいチーズバーガーはこの店のウリ。

ビールはもちろん、飲食というのはそのものの味だけでなく、その時の状況に左右される部分が大きいと思っている。店の雰囲気、ちょっとした気遣い、気のきいた会話…。こういったことが多分に影響するのだが、この店は僕にカチッと「ハマって」しまった。

店員さんは客と適度な距離を保ち、会話は付かず離れず。店の半分は若い人たちのパーティー。カウンターを含めたもう半分は、あまり他人に干渉せずに1人または2人でビールを楽しむスペース。いい店の基準は人それぞれかもしれないが、僕にはぴったりの店だった。

「ビール、おいしいですか?」

突然、女性店員から話しかけられた。しかし、新光三越の受付のお姉さんのような話し方ではなく、まったく嫌悪感を抱かせない。そして落ち着いた笑顔。僕にぴったりの店だということを伝えたいとも思ったが、日本語でもうまく言えなそうだったので、それを言うのはやめておいた。

「はい、おいしいですよ、とても」

それだけで十分なのではなかろうか。

 

台湾のビールは薄いのか?(1)プロローグ―ビアエッセイ
台湾のビールは薄いのか?(2)金色三麥―ビアエッセイ
台湾のビールは薄いのか?(3)Gordon Biersch―ビアエッセイ
台湾のビールは薄いのか?(4)Jolly―ビアエッセイ
台湾のビールは薄いのか?(5)エピローグ―ビアエッセイ

台湾

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

富江 弘幸

ビールライター

1975年、東京都生まれ。法政大学社会学部卒業後、出版社でライター・編集者として雑誌・書籍の制作に携わる。その後、中国留学、英字新聞社ジャパンタイムズ勤務を経てビールライターとして活動中。ビアジャーナリストアカデミーの講師も勤める。

【著書】
教養としてのビール(サイエンス・アイ新書、SBクリエイティブ)
BEER CALENDAR(ワイン王国)

【執筆・監修】
和樂web(小学館)
Discover Japan(ディスカバー・ジャパン)
東京人(都市出版)
ビール王国(ワイン王国)
ビール大全(楽工社)
るるぶキッチンmagazine 秋冬号(JTBパブリッシング)
あなたのしらない、おいしいビール(cakes)
他多数。

【出演】
金曜たまむすび(TBSラジオ)
ちきゅうラジオ(NHKラジオ第1)
すっぴん!(NHKラジオ第1)
浜美枝のいつかあなたと(文化放送)

Twitter:hiroyukitomie
Website: 地域とビール
Weblog: 地域とビールとブログと

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