[ブルワー]2015.7.16

私の“きっかけ”ビール[2杯目] 那須高原ビール 小山田 孝司さん『Orval(オルヴァル)』

Orvalオルヴァルクラフトビールナインテイルドフォックスラベル那須

一杯のビールとの出逢いが、人生の転機に。ビール業界の第一線で活躍している人にインタビューし、「私の“きっかけ”ビール」について語っていただきます。

二回目は、那須高原ビールの代表取締役 小山田さんに、ビール事業を始める前に飲んだベルギーの修道院ビール『Orval(オルヴァル)』にまつわる話を伺いました。

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家具屋の三代目がビール事業をはじめたきっかけ

ビール事業を始める前は、代々続く家具屋を継いで事業をしていました。祖父や父のものづくりというDNAを受け継いでいるからか、小さい時から工作やデザインが得意でしたね。

ビール造りを始めるきっかけは、1994年の規制緩和のときに長距離トラックのドライバー向けに仮眠もできる食堂「ザ・トラック・イン」を経営していたので、まずここでビールを出そうと考えたんですね。年間60キロリットルであれば、いけそうだ、と。

『Orval(オルヴァル)』は理屈も次元も超えた味

画像:オルヴァル
ベルギーのオルヴァル修道院で作られるトラピストビール。ホップの苦味と酸味のバランスが絶妙。

『Orval』は、1996年に地ビール業を始める前に、神楽坂のブラッセルズで飲みまして、当時出会ったビールの中でダントツで印象に残ったんです。まさに“次元の違う味”。五感を超えて、とにかく好みだなと感じました。

以前、ビール評論家の故マイケルジャクソン氏にお会いした時に、「人生最後のビールに選ぶとしたら、どんなビールがいいですか?」と伺う機会があったんですが、そのときにOrval と答えられたんです。私が世界で一番美味しいと思っていたのも Orval でしたから、驚きと嬉しかったのとで、今でもとても印象に残っているんです。

ところで、このラベルのストーリーご存知ですか? 修道院を設立したマティルダという未亡人が、結婚指輪を誤って泉に落としてしまったところ、鱒が口で拾ってくれたという。そういったストーリー性や瓶の形といった、Orval のデザイン性も好きですね。

那須高原ビールのラベルデザインも自ら手がける

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那須高原ビールのラベルは、私自身が納得できるものにしたんです。実は、イラストレーターさんにお願いしていたのですが、たまたまこのデザインを自分で描いてみて建物の設計士さんに見せたら、とてもいいね! となって(笑)。最終的にこのデザインに決まりました。

太陽と月、道化師は「幸せ」という意味。那須連山の守り神である「大鷹」、騎士道の高貴な精神「王冠」をイメージして手書きで書いたんです。「大高山に見守られながら、美味しいビールを飲んで、幸せになろう」がコンセプトですね。こうしてイメージしながら、考えている時が本当に楽しいんですよね。

下見で行ったドイツで無濾過ビールとの出逢い

ドイツではブルワリーを40社くらい回りました。1ヶ月くらいのあいだで、毎日3リッター、4リッター飲んでましたね。でも不思議と二日酔いにならないな、と気づいたんです。自分の体で感じて調べていくうちに、濾過と無濾過ビールの違いは、ビール酵母なんじゃないかって。ビール酵母は活性酸素を除去する働きがあると言われているんです。

チェコのピルゼン地方の場合、無濾過の場合だと、最大頑張って、1年間で4、500KLがマキシム、と言われているそうです。それ以上になると、ろ過器を設置して、流通のことを考えないといけなくなると聞いたことがあります。本当の意味でのクラフトというのは、工業製品ではなくて、手作り感のことをいうのではないか、と思うんですよね。クラフトビールの良さは「時を楽しむ」。そこにつきますから。

画像:那須高原ビール工場
“整然の中に感性が宿る”という考えのもと、工場のタンクの配置を自ら設計した

事実なんだけど、真実ではない

みんなが感じたことは、すべて事実なんですよ。ただ、事実なんだけど、真実というのは、その事実の総合的なものなんですよね。だから事実なんだけど、真実ではない。そこが重要なのかなと。楽しむっていうのは、真実に近づいたそのもの本体を感じ取れるかどうか。たとえばホップが効いているというのは事実なんですけど、それだけじゃないんですよ。

うちで全く同じレシピで、それぞれのブルワーが作ったものは味が違います。それはどうしてか、っていうのは、性格が出るのだと私は思います。例えばブルワーが60℃でレストしてください、って言った場合、59.9℃で止める人と、60.1℃で止める人。その微妙な差の繰り返しが、個性となって現れます。料理でも、工作でも、同じ材料をもらって作っても、その差は出るでしょうね。

なので、作り手の個性がストレートにでるのが、クラフトビールの良さってことでしょうか。ひとタンク、ひとタンクが味のすべて。レストランだったら鋭いお客さんは、「シェフ、変わったでしょう。」と。そこで五感だけの人だったらもう来ないってなるし、六感の人は、それでもなにか好きだからと思うか。

『ナインテイルドフォックス』のラベルの意味

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『ナインテイルドフォックス』は、麦芽とホップと酵母、水だけを使用し、バーレイワインとは異なる造り方で長期的に熟成が可能な世界初の熟成ビールです。1998年からですから、今も18年前から各年代とってあります。このラベルに描いている「九尾の狐」は、異次元の世界で「英雄」という意味なんです。月と太陽という幸せのテーマは必ず入れています。メソポタミアの格言で、「ビールがあってはじめて、家庭の幸せが保たれる」というのがあるのですが、ビールの世界のことを私なりに想像を膨らませて、私が描きました。

ビールの味わい方も、「五感プラス、第六感で飲む」ものだと思っています。五感だけで飲むと偏るけど、そこに感性を加えながら、理屈を超えて美味しいとか、楽しい、と思って飲む。一番縛られないでビールを味わえる方法だと思います。

今後は“世界で初めて”に挑戦したいですね! ナインテイルドフォックスは“ビンテージ”という概念がなかったときに作ったビールですし、98年に出した本物のいちごだけを使った「いちごのビール」も世界で初めて作ったんです。業界人じゃない発想を活かして(笑)、また皆さんを驚かせるような、新しいものを作りたいですね!

★ 取材後記(みつき)

「那須高原ビール」の“品の良さ”は、小山田社長のお人柄から醸し出されていると感じた取材でした。皇室とのご縁とか、数々の受賞歴からも、独自の哲学から生まれる美意識が幅広いファンを惹きつけているんですね。「那須 愛の思風塾」の世話役もされている小山田社長の夢は、ビールというジャンルを超えてもはや世界平和レベル! また那須に遊びに行きたくなりました。 次回もどうぞお楽しみに。

私の“きっかけ”ビール[1杯目] 木内酒造 木内洋一さん『アンカースチームビール』

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この記事を書いたひと

みつき ゆきこ

ビアジャーナリスト

酒イベンター・ライター。ビアテイスター・利酒師。職人好きが高じて、日本酒蔵元、地ビール会社に就職経験を持つ。現在は「ゆこらぼ」でお酒を通じたゆるい地域活性イベントなど企画。 Webマガジン「ビール女子」でもライターを務める。
https://www.facebook.com/yucollabo

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