[コラム,新商品情報]2016.8.19

伝説のSORACHI ACE発売記念!「ソラチエース」誕生の地、上富良野「北海道原料研究センター」訪問レポート(前編)

2016年8月19日(金)、サッポロビール株式会社100%子会社であるジャパンプレミアムブリュー株式会社が販売する『クラフト ラベル』シリーズの第4弾として、『CRAFT LABEL THAT’S HOP 伝説のSORACHI ACE』が登場した。

“THAT’S HOP”=まさに、ホップ。

このホップをこう言い切れるのは、サッポロビールだからこそ、だ。
「SORACHI ACE = ソラチエース」は、1984年に品種登録された、サッポロビール株式会社の北海道原料研究センターで生まれたホップなのだ。
今回、その誕生の地、北海道原料研究センターを訪れ、同センター長である須田成志さんに「ソラチエース」について話を伺った。

ソラチエース

北海道原料研究センター センター長 須田成志さん

不遇の運命をたどる、北海道原料研究センター初の登録ホップ

(宮原)収穫直前の準備などで忙しい中、お時間をいただきまして、ありがとうございます。
(須田さん、以下敬称略早速、ご覧にいれたいのがこちらです。まさにこれが、当社がソラチエースの品種登録をした登録証です。

ソラチエース

ソラチエース品種登録証

(須田)ここ、上富良野のバイオ研究開発部北海道原料研究センターは、元々1923年(大正12年)に北海道内の数カ所で行ったホップの試作を経て、上富良野町が一番適所であるということから1925年(大正14年)上富良野ホップ園をスタートした場所です。1970年代初めから、上富良野でのホップの品種開発をスタートしました。現在は定年退職を迎えているホップ育種家荒井康則が、1974年に交配をスタート、8年間の育成やさまざまな試験を繰り返し、上富良野での初の品種登録となったのが、この「ソラチエース」です。同時に開発したもう一種の「フラノエース」と共に1983年3 月15日に出願し、翌年1984年9月5日に登録されました。登録番号は「ソラチエース」が613番、「フラノエース」が614番です。
(宮原)「ソラチエース」は、この北海道原料研究センターにとって記念すべきホップなのですね。
(須田)そうなのです。通常、開発品種として登録された後は、農作物として普及を目指していくのですが、実は、この「ソラチエース」と「フラノエース」は、その後、国内での普及には至りませんでした。
(宮原)どうしてそうなってしまったのでしょうか?
(須田)当時、ホップに求められていた特徴は、個性的なものよりも、穏やかな香りを楽しめるようなもの、と思われます。具体的に言うと、ホップのα酸の成分であるコフムロンという苦味成分が少ない、ヨーロッパ系のアロマホップにみられるような特徴をもつホップを開発することが、当時の品種選抜の大きな指標のひとつでした。コフムロンはその数値が大きいと粗さや重み、渋味のある苦味が強くなると言われています。「ソラチエース」と「フラノエース」の2種は「ブリュワーズ・ゴールド」や「ザーツ」などの品種を交配し、コフムロンの割合が低いことが当時評価されました。当時、このホップで行った醸造試験では、「ソラチエース」はちょっと香りが強すぎるという評価、そして、「フラノエース」は好評価であったため、「フラノエース」を上富良野周辺の畑で栽培し普及活動を試験的にスタートしました。が、その「フラノエース」も、その他のホップ品種に比べると面積辺りの収穫量が少ないことで、結果、どちらも普及品種には至りませんでした。

フラノエース

フラノエース品種登録証

世界的な脚光を浴びる道への転機は、品種交換で海を渡ったこと

(宮原)成分だけでなく、球花の収穫量が普及品種となる重要なポイントなのですね。でも、そこからどうして、これほど世界的に注目を集めるようになったのでしょうか?
(須田)「ソラチエース」と「フラノエース」は当社の遺伝資源として保存されていました。転機は、当社の糸賀裕研究員が、1994年にアメリカ・オレゴン州立大学へ渡り、ホップの遺伝資源の交換として「ソラチエース」を含むいくつかの品種のひとつとして持っていったことがきっかけです。糸賀はその後、アメリカ産ホップの担当フィールドマンとして現地訪問を重ねておりますが、2010年頃から、アメリカのクラフトビール業界で「ソラチエース」をつかったビールが登場し、注目を集めていると報告がありました。
(宮原)2010年頃からElysian BrewingやBrocklyn Brewery、2013年にはベルギービールのDuvel Tripel Hop(※1)にも「ソラチエース」が使われていますね。
(須田)当社では、ホップの育種だけではなく、ホップの香り成分の研究も行っています。その中で、「ソラチエース」は、レモンのような柑橘的な香りやレモングラス、ウッディーなどとも表現される独特の香りの成分※2)が他のホップよりも多く含まれていることも分かってきました。そういった他のホップにはない特徴が評価されているのだと思います。

 

(※1)Duvel Tripel Hopは特徴的なホップを第三のホップとして使用したビールを毎年リリース。その2013年版は「ソラチエース」を第三のホップとして使用。
(※2)2016年8月開催の世界ビール学会(WBC/ World Brewing Congress)で発表。ソラチエースで醸造したビールは、レモングラスなどの成分である「ゲラン酸」が他のホップで醸造したビールより多く含まれ、特徴的な香りになっていると評価された。

 

後編へ続く。いよいよホップの試験圃場で「ソラチエース」と対面へ!

伝説のSORACHI ACE発売記念!「ソラチエース」誕生の地、上富良野「北海道原料研究センター」訪問レポート(後編)

クラフトラベルソラチエース伝説のSORACHI ACE

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

宮原 佐研子

ビアジャーナリスト/ライター

ビアLover 宮原佐研子です。 ビールの大好きなトコロは、がぶがぶ飲める、喉ごし最高、大人の苦味、世界中でも昼間でも飲める、 果てしなくいろんな味わいがある、そしてぷはぁ〜っとなれる、コトです。
ライターとして、雑誌『ビール王国』(ワイン王国)/『じゃらん酒旅BOOK 2023』(リクルート)/『うまいビールの教科書』(宝島社)/『クラフトビールの図鑑』(マイナビ)、ぐるなびグルメサイト ippin キュレーター など

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