[ブルワー]2017.7.22

奈良の魅力を伝える、つなげるBREWERY 【ブルワリーレポート ゴールデンラビットビール編】

日本には数多くの酒神神社があります。なかでも、京都府の梅宮神社と松尾神社、そして奈良県の大神神社(おおみわじんじゃ)の3つは「日本三大酒神神社」として全国的に有名です。このうちの1つである奈良県に2015年9月、「ゴールデンラビットビール」は誕生しました。今回は代表を務める市橋健氏に立ち上げのいきさつや今後の展望についてお話を伺いました。

「ローカル」、「ソーシャル」がキーワード!

「『ビールを通じて、奈良の魅力を伝えること』を使命と感じ、『ローカル』と『ソーシャル』をキーワードとして大切にしています」

キーワードとは具体的にどのようなものなのでしょうか。

「『ローカル』ですが、調べてみると奈良県は食にまつわる生産量や消費量は全国でかなり低い水準でした。もちろんビール消費量もです。しかし、奈良にはさまざまな魅力がありました。そこで『ビールを通して、その魅力を伝えられないか?』と考えました。現在は少量ですが、自分達で育てた奈良県産の二条大麦でのビール造りに取り組んでいます。『ソーシャル』は、NPO法人『日本こども支援協会』とコラボレーションして、『やさしさの贈り物プロジェクト』を発足しました。これは震災や虐待といった理由で、親と暮らせない子どもたちの里親支援を通して『すべての子どもに家庭のある暮らし』を目標とした活動です。子どもとお酒って遠い存在かもしれませんが、子どもたちを救えるのは大人しかできません。ビールを飲むと協会に寄付される「ソーシャル・ビール」となっています。ぜひ皆さんの楽しい時間を少しだけ、お裾分けいただき、子ども達の未来を救っていただけたら嬉しいです」と教えてくれました。

大麦の自家栽培もおこなっている。奈良が誇れる魅力をビールを通じておこなうのが「ゴールデンラビットビール」の信念でもある【写真提供:ゴールデンラビットビール】

愛着が生まれた土地でビールを造りたい!

市橋氏は数ある場所からなぜ奈良という土地を選んだのでしょうか。

「私は関東や九州など様々な土地で過ごし、結婚を機に奈良に住むようになりました。この地に愛着が生まれ、『地域に貢献したい!』と考えるようになり、奈良は自分がこれからも生きていく土地と思ったことが選んだ理由です」と話します。

「『ビールはどう造られるのだろう?』と疑問に思ったのも大きいです。元々、製造に携わる仕事をしていたので、培った技術を応用して醸造できないかと思いました。2013年に奈良市主催のビジネスコンテストに応募し、見事優勝をしました。クラフトビールのニーズがあると感じたことも奈良を選んだ理由です」と加えます。

ビールが造れない…

企業当初は醸造所を構えようとしたが、諸事情により断念をしたといいます。

「そこで辞めようとも思いましたが、本当にしたいことを悩んで考え抜きました。そして、今は自分で醸造することはできないが『ビールを通じて、奈良の魅力を発信する』という軸はブレていないのだと至り、ファントムブルワリーから開始しました」

しかし、ファントムブルワリーとして支援してくれるブルワリーが見つからないという壁にぶつかってしまったといいます。

「メールをしても返信が無い、担当者につないでもらえないことも多数でした。でも諦めずに続けていきました。知り合いを通じての紹介など、さまざまな方法でアプローチを行い、『奈良のクラフトビールを実現したい!!』という熱い想いを訴えました。結果、この活動を複数の醸造所が支援してくれることになりました」とビールを造るまでの大変な道のりを教えてくれました。

自社を理解してくれるパートナーはファントムブルワリーでは絶対に欠かせない。現在では市橋氏の熱い想いが理解されつつある【写真提供:ゴールデンラビットビール】

「幸福のうさぎ」と伝えられる撫でうさぎから名付けられた!

「大神神社には撫でうさぎという、うさぎの像が鎮座されています。そのうさぎを撫ると身体の悪い痛いところを癒してくれる、願い事を叶えてくれる『幸福のウサギ』と伝えられています。その物語にインスピレーションを受け、自分達のビールが飲まれる方の幸せやうさぎのように飛躍、繁栄を願って『ゴールデンラビットビール』と命名しました」とその想いを語ります。

ロゴは古典柄のうさぎをモチーフとし、奈良の県花であるさくらの花びらで王冠をつくっています。24枚の花びらは「時」を表現しています。これは永遠にサクラサクようにという想いからとのこと。また大和の大地と神聖な鳥居は、奈良の土地に末永く根付くようにという願いが込められています。

奈良へのさまざまな想いが込められているロゴ。1つ1つにこだわりを感じられるところは大きな魅力と感じる【画像提供:ゴールデンラビットビール】

「そらみつ」と「あをによし」に込められた想い

現在「ゴールデンラビットビール」は2種類の定番ビールがあります。それが「そらみつ」と「あをによし」です。それぞれのビールについて聞きました。

「『そらみつ』は、大和にかかる枕詞で日本書紀の神武記に『大空から見て、よい国だと選びさだめた日本の国』という意味だと言われています。日本のルーツともいえる古都・奈良と同様、ピルスナー発祥のチェコのボヘミアン・ピルスナーです。チェコ産の最高級ファインアロマホップ、ザーツ種を100%使用しています」とフレッシュな味わいを感じる一方で、奈良を表現したどこか懐かしさを感じるものだといいます。

ピルスナー 麦芽100% 内容量:330ML 原材料:麦芽・ホップ アルコール度数:5.0%

「『あをによし』は、万葉集に記される奈良に係る枕詞で、奈良坂で顔料の青土を産した説と、空の青と丹(に)の色で美しい奈良と言われています。夏の青空と赤色の美しさが『あをによし』なアメリカン・レッドエールです。ホップにアマリロを使い、シトラスやフラワリーアロマを感じる非常に香り高いビールに仕上げました。クセが少なく、さっぱりとした口当たりで、後味にモルトの旨味を味わえます」とどちらも古都、奈良を連想させるビールに仕上げたとのこと。

レッドエール 麦芽100% 内容量:330ML 原材料:麦芽・ホップ アルコール度数:5.0%

「このほかに『ひのひかり』を限定リリースしました。食味評価6年連続最高ランクの特Aを取得している奈良県特産米「ヒノヒカリ」を使用したビールです。自分達で田植えから収穫まで行い、造りました」と新たなビール造りにも励まれています。

ライスビール 内容量:330ML 原材料:麦芽・ホップ・米 アルコール度数:5.0%

自社醸造所を設立し、もっと奈良をアピールしたい!

「今後ですか? やはりブルワリーの設立です。『みんなで造る醸造所』プロジェクトを企画準備しています。これまでも多くの方のご支援で活動を続けることができました。ですから醸造所の設立も、みんなで造りあげていきたいと考えております。あと、クラフトビールのイベントにも積極的に参加してきたいです。主催者様はお声掛けいただけると嬉しいです」とのこと。

ブルワリー設立からこれからの目標について熱く語ってくださった市橋氏【写真提供:ゴールデンラビットビール】

様々な課題を1つずつ乗り越えながら着実にその想いを形にしてきた「ゴールデンラビットビール」。「ソーシャル」の輪を広げながら地元で愛されていく姿を見守っていきたいブルワリーが奈良に誕生しました。

◆ゴールデンラビットビール Data

住所:奈良県生駒市本町7-12 本町ビル302

TEL/FAX:0743-75-1800

E-mail:goldenrabbitbeer@gmail.com

Homepage:https://www.goldenrabbitbeer.com/

Facebook:https://www.facebook.com/GoldenRabbitBeer/?fref=ts

ゴールデンラビットビールブルワリーレポート市橋健氏

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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