[イベント,コラム]2017.8.19

国産ホップの地を訪ねて 【京都与謝野ホップ生産者組合の取り組み】

ホップは現代のビール造りには欠かせない原材料です。日本ではその多くをドイツやアメリカから輸入しています。日本では大手ビール会社が農家と契約を結び、東北を中心に栽培が行われています。しかし近年は、日本のクラフトビールメーカーが自ら栽培したり、独自にホップを栽培し、販売する会社が登場したりと新たな展開が生まれてきています。

今回、ご紹介する京都与謝野ホップ生産者組合もその1つです。2015年よりホップ栽培を開始しました。3年目の収穫期を迎えた8月6日、毎年恒例のホップ収穫体験が開催されました。生産者がどのような思いでホップの栽培に取り組まれているかを現地を訪問し、聞いてまいりました。

栽培のきっかけは藤原代表の個人的な興味から

与謝野町は京都府北部に位置します。人口22,000人のこの町は日本海に面した丹後半島の尾根を背景とし、大江山連峰をはじめとする山並みに囲まれています。野田川流域には肥沃な平野が広がり、天橋立を望む阿蘇海へと続いていくところです。

自然に囲まれている与謝野町(赤色の部分)【Googleマップより引用】

古くから織物業が盛んにおこなわれている地域で、「丹後ちりめん」は日本遺産にも認定されています。

農業では米の栽培が盛んに行われていますが、どのような経緯でホップを栽培することになったのでしょうか。

「元々は与謝野町に縁があった藤原ヒロユキさん(日本ビアジャーナリスト協会代表)が与謝野町で、ホップ栽培を始めたことがきっかけです」と教えてくれたのは与謝野町役場農林課主任井上氏です。

なんと、与謝野町におけるホップ栽培のきっかけは藤原代表でした。後日、聞いてみたところ「個人的な興味からホップの苗を植えてみたところ育ちました。それを地元の人が見て、本格的に栽培してみたいということになり、与謝野町の協力もあり実現しました。」と個人的な興味から始めたものが町の取り組みへと発展していきました。

与謝野町ホップの生みの親は藤原代表だった

ゼロから始めたホップ栽培

ホップは暑さに弱く、平均気温が20℃程度の地域が栽培に適していると言われています。東北地域が盛んなのはこうした理由があります。与謝野町の平均気温は14.5℃なので、適した環境です。

しかし、開始当初は様々な苦労があったといいます。

「ホップ栽培にあたり、どのようにして栽培していけばいいのか全然わかりませんでした。苗をどこから入手するのか。どんな道具が必要なのかというところからみんなで勉強していきました。ノウハウがないということが大変でした」と振り返ります。

少しずつノウハウを蓄え、収穫量も増加してきている。

栽培方法は藤原氏と交流のある方々からアドバイスをもらい、知識と経験を積み重ねていきました。地道な取り組みを続けた結果、「収穫量は昨年が175㎏、今年は300㎏近くの収穫量を予想しています。今年は生育が早かったですね」と確実に成果をあげています。

現在、栽培している品種は、カスケード、センティニアル、ナゲットなど17種類と豊富です。「3年やってきて、どの品種がこの土地に合うのかとかもだんだんわかってきた」と藤原代表は話します。

数多くの品種を栽培しているのには驚きだった。ここからどんなビールが誕生するのか今から楽しみだ

与謝野産ホップを通じて、人のつながりを広めたい!

収穫量も増え、今後はどのような展開を考えているでしょうか。

「ホップの活用法としても地元の酒造会社に相談したところ、リキュールを造ってみたいとの声を聞いています。以前はホップを使用したアイスクリームを製造し、販売しました」とビール以外での活用法も進んでいるといいます。

ホップ収穫体験については「やっぱり、与謝野町に興味をもってもらうことですね。次に与謝野産ホップを使ったビールを通じて、ビールを好きになってもらいたいです。そして、農業を通じて人のつながりが広がっていくことを期待しています」と来年以降も継続して開催していく意向です。

今回の収穫体験では、特に西日本での栽培は珍しいためか総勢100名を超える方が収穫に体験参加し、関心の高さがうかがえました。収穫前のホップを実際に見る機会はなかなかありませんから貴重な時間になったとのではないでしょうか。親子での参加者も目立ち、夢中でホップを摘み、香りを体感する姿がとても印象的でした。

収穫体験には地元以外からも多くの人が参加した。

今年収穫されたホップを使用したビールは、9月22日から開催予定の「フレッシュホップフェスト2017」で飲める予定です。どんなビールになって私たちの前に登場してくれるのか今から楽しみです。

参加者には与謝野産ホップを使用した「与謝野絶景ビール」がお土産に配られた。草のアロマが強く香るのが特徴的。しかし、後味に感じる苦味はマイルドで爽快感が溢れるビールだった

◆与謝野ホップについてのお問い合わせ

〒629-2498 京都府与謝郡与謝野町字加悦433番地

与謝野町役場 加悦庁舎 農林課 林業水産係 塩見雅樹宛

電話:0772-43-9023

FAX:0772-43-2194

京都与謝野ホップ組合

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

●音声配信アプリstand.fmで、ビールに恋するRadioを配信中
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