[コラム,ブルワー]2020.7.13

ビールを正しく伝えて、美味しく届けるブルワリー【ブルワリーレポート CRAFT BEER BASE Brewing Lab編】

CRAFT BEER BASE Brewing Labブルワリーレポート谷和氏

大阪・梅田を中心に5店舗を展開する「株式会社CRAFT BEER BASE(以下、CBB)」。大阪はもちろん、関西地区の熱心なビールファンであれば、その名前をご存知の方も多いだろう。そのCBBの中の1つに2018年11月28日に発泡酒免許を取得して、2019年1月から自社醸造ビールの提供を始めた醸造部門「CBB Brewing Lab」がある(※1)。

醸造開始から1年半が経過した「CBB Brewing Lab」について代表取締役社長を務める谷和(たに あい)氏にお話を伺うことにした。

※1 CBB Brewing Labに併設する「BrewPub CBB garden」は、新型コロナウイルスの影響により現在休業中。自社醸造ビールは、他の店舗で飲むことができる。

 3つの醸造テーマでビールを正しく伝えていく

1.ビールの成り立ち・基本を知る

2.ビール本来の構造を分解研究する

3.日本独自のビアスタイルを模索する

「CBB Brewing Lab」のコンセプトを聞くと、この3つのテーマを伝えるブルワリーだと話す。

なぜ、3つのテーマを掲げているのだろうか。

「CBBはビールを正しく伝えることをテーマに会社を運営しています。正しく伝えるためには、自分たちで醸造して、この3つのことを掘り下げる必要があるからです」

1については、本などで調べた知識を、2については交流のあるブルワーから得た情報をお客さんに伝達していた。しかし、伝聞だけではなく、自ら醸造をすることで求める答えを出すために醸造部門を立ち上げた。

そして、もう1つのテーマが「日本独自のビアスタイルを模索する」だ。

海外に目を向けるとジャーマンスタイルやアメリカンスタイル、ベルジャンスタイルと地域のオリジナリティを感じられるビールがある。日本のクラフトビールを世界に発信していくには、こうしたオリジナリティが必要だと思うが、谷氏はどのようなイメージをもっているのだろうか。

「日本では食中酒としてお酒を飲む習慣が強く、日本のアイデンティティを作るものとして『和食』に合うことを1つのテーマに考えていきたいと思っています。ビールで日本らしさを表現することは日本のブルワーなら誰もが憧れるテーマかと思います。私達のBrewing Labでも意見は様々出ています。私は発酵大国である日本ならではの酵母や発酵方法からアプローチすることに興味がありますし、CBB醸造士の阿部さんは副原料も可能性があると思っている。ジャパニーズスタイルとは何ぞやということの話は尽きません。今は基本的造りを学んでいくことでビールの可能性を探るための日々を過ごしています」

CBB Brewing Labの外観。2020年7月10日現在、ブリューパブとしての営業は休止している。【画像提供/CBB Lab】

「CBBではそこまでこだわってビールを造っていきたい」といい、繰り返し試行錯誤して造る必要があるため、1回の仕込みは200Lと少量で行っている。

実際にジャパニーズスタイルを確立するには、まだ時間が必要だろうが3つの醸造テーマに飽くなき探求心をもって「ビールを正しく伝える」ことに挑み続けて、オフフレーバーを出さない美しいビールを造ることを心がけている。

株式会社CRAFT BEER BASE谷和代表取締役社長。大阪のクラフトビールシーンを牽引する1人だ。

ビールを美しくお客様に届けられなかった経験がCBBの原点

ビールを正しく伝えるために自分たちの手でビールを造る必要があったわけだが、いつから構想があったのだろうか。

「構想自体は会社を立ち上げる時からありました。正しく伝えるためにはいつか自分たちでやらないとわからないと思っていました」

その原点は谷氏が酒屋で働いていたときにある。

今でこそクラフトビールは冷蔵で保管・輸送がされるようになってきたが、以前は常温で保管・輸送されることが多かった。気温が高い季節に常温でビールを保管・輸送することはビールにダメージを与え、品質を落とすことになる。谷氏はブルワーが思いを込めて一生懸命造ったビールを美しくお客さんへ届けるため、流通関係者に品質保持の重要性について説明したが理解されなかった。

「私たちはお客様に『こういう状態ですよ』『こうやって美味しいビールって造られているんですよ』ということをストーリーテラーになって、関わっている人たちの努力を伝えていくことが使命だと思っています。冷蔵輸送はコスト面からも大変ですが、品質のことを考えると絶対に必要です。状態の良い美味しいビールを届けたいと思い、それには自分で正しい形を示すしかないと決意してボトルショップ兼ビアカフェ『CBB本店』を立ち上げました」

CBB本店で販売されているビールの一部。オンラインショップでは、希望に合わせたビールを選んでくれるカスタムオーダーセットもあるので、クラフトビールに詳しくない人でも安心して頼める。【画像提供/CBB本店】
オンラインショップはこちら

信念である「ビールを正しく広める」を伝えるべく自ら同じフィールドに立ち実践したことで、クラフトビールに関わる人たちと交流を深めることができるようになっていった。

「今では現地のパブと同じくらい品質を保ったビールが日本でも流通されるようになってきました。これはCBBだけで達成できることではなく、業界に関わる人たちの努力の結果だと思います」

その後、「CBB seed@HANSHIN」「CBB BUD」「CBB garden」「CBB BRANCH」と店舗を展開。流通、販売での「正しく伝える」成果を得たことで、醸造分野に足を踏み入れた。

ちなみに「BASE」には、CBB側では「基本」を意味し、お客さんにとっては情報が集まる「基地」の意味を込めている。

二人三脚でビールを探求した1年半

現在、醸造は谷氏と阿部淳哉氏の2人で行っている。

「阿部さんは当社の立ち上げから一緒にやってきた仲間で、『CBB 本店』の店長をしていました。ブルワリーを立ち上げる際、私はブルワーを招聘して始めようと考えていました。でも誰かの考えを学びながら造ると、その方の考え方に影響されてきてしまうのではないかという意見が挙がりました。阿部さんの方からも『自分たちの会社で考えていることを表現するならば、1からやるべきだ』とブルワーに名乗りを上げてくれました」

醸造するビールについて相談する阿部氏(左)と谷氏(右)【画像提供/CBB Brewing Lab】

探求者である彼ららしいゼロからのスタート。しかし、知識として知っていることもいざやってみると様々な壁にもぶつかった。

「実際に醸造を始めてみて色々なことがわかりました。同じレシピでも使用する原産国やメーカーでも同じ原料で成分も異なります。造っていくことでロジックもわかるようになりましたし、ビアスタイルごとの許容範囲も理解できるようになりました。私も10年間世界のビール審査員を務めてきましたが、ジャッジで勉強してきたときと比較にならないくらい知識は向上しました。おかげでお客様にも正しく伝えられるようになりましたし、他社さんからお預かりした(購入した)ビールを理論立てて提供できるようになりました」

造りたいビールを実現するため、原材料は原産国までこだわって使用する【画像提供/CBB Brewing Lab】

壁にぶつかることも多くあったが、醸造開始からの1年半、阿部氏が自主的に調べて取り組んで解決してくれるおかげで掲げたテーマに沿って進められているといい、大きな問題はないがチャレンジしたい課題はたくさんあると話す。

「阿部さんの創作意欲も凄くて毎週新しいレシピを考えて醸造しています。これまでは考えを共有して造ってきましたが、これからは醸造の舵取りは任せることにしました」と、次のステップに進むことにした。

また今後は、各店舗スタッフに対しても醸造作業のヘルプをしてもらうことでスキルアップを図り、お客さんへ流通から販売まで正しく伝えられるよう進めていく方針だ。

阿部氏が作成している醸造シート。レシピ情報のほかにビールへの探求心と考察、結果が書かれている。【画像提供/CBB Brewing Lab】

新型コロナウイルスの影響でみえた目指すべき形

現在、流行している新型コロナウイルス。感染拡大による店舗営業の自粛は、CBBにも大きなダメージを与えた。

「休業せざるを得ない状況になり、ビールが売れなくなったことで醸造もストップしました。対策として、瓶詰めを始めてオンラインショップで販売をしました。そのほかには、国内や海外の情報を収集してCBBはどうあるべきなのかを考えていました」

動きが止まるなか、行きついた考えが「日本のクラフトビール業界がもっと上のステージに昇っていくために必要な活動をする」ということだった。

「まだ日本にはビールがカルチャーとして根付いていないと思っています。ビールそのものにしても、業種としても確立できていない。世界と比べると文化的なところが追いついていません。そのための活動をしないといつか日本からクラフトビールが無くなってしまうんじゃないかと今回の営業自粛で感じました」

文化として根付くブルワリー。谷氏が見出したのはローカルだった。

「これからはよりローカル色が強くなっていくと予想しています。私たちは地元に根付いた町のビール屋を目指します。自分たちの信念を貫くためには、醸造規模を大きくし過ぎてしまうと売ることに意識が強く向いてしまい、伝えたいことを伝えられなくなってしまいます。地域の飲食店などで飲まれるブルワリーであることで、日本のクラフトビールの発展に貢献できる形があると思いました。ネオ地ビールを目指しますよ(笑)」

自分たちの信念を貫くために、あえてスモールスケールで展開することを選んだ「CBB Brewing Lab」。美しいビールを正しく伝え続けるため、「ネオ地ビール」として大阪の地からクラフトビール業界を牽引していく。

そのマインドを新型コロナウイルスが収束したら、大阪に足を運び体感したいと思う。

CBBのビールは、系列店舗で飲むことができる。基本的に週1回新しいビールがリリースされる。

◆いまできる形で一緒にビールを飲んで楽しい時間を共有したい! 2020年7月18日(土)「CRAFT BEER BASE 8周年 BUD 5周年祭~饗宴~」開催

この春に「CBB本店」が8周年、「CBB BUD」が5周年を迎えた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした営業自粛要請期間中のため開催が見送られていた。5月25日に全国で緊急事態宣言が解除され、「新しい生活様式」が打ち出されたことを受けて、7月18日(土)に2店舗合同の周年祭「CRAFT BEER BASE 8周年 BUD 5周年祭~饗宴~」をOSAKA FOOD LAB(大阪市北区中津1-1-36)で開催することが決定した。

「こういう時期なので難しい状況ですが、ビールを一緒に飲む楽しさを大事にしたいと思いました。今の時点では、感染のリスクを考えると店舗でのイベントはできないので、屋外で開催することにしました。皆さん感染対策をしながら一緒に楽しみましょう!」

当日、ビールは15TAPで提供。「CBB Brewing Lab」のビールはもちろん、国内外からCBBの周年イベントらしいビールがたくさん登場する予定だ。スペシャルゲストも参加予定とのことなので、関西のビールファンは感染対策をしっかりしてお祝いしに行ってみてはいかがだろうか。

CRAFT BEER BASE 8周年 BUD 5周年祭~饗宴~の情報はこちらから

※今後の状況で予定が変更になる場合があります。開催については上記のリンクから確認お願いします。

◆CRAFT BEER BASE Brewing Lab Data

住所:〒550-0003 大阪府大阪市西区京町堀1-12-31

電話:06-6445-6510

Facebook 

CRAFT BEER BASE ウェブページ(各店舗情報はこちらから)

JBJAでは、新型コロナウイルスにより苦境に立たされているビール業界を応援するプロジェクトを立ち上げました。近隣のブルワリー、店舗がありましたらご支援よろしくお願いします。

【随時リスト更新中!】全国の通販可能ブルワリー&持帰り可能ビアパブ

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05007木暮 亮

この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビアジャーナリスト/ビールイベントプランナー

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは2000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

音声配信アプリstand.fmで、ビアジャーナリストこぐねえのビールRADIOを配信中

【メディア出演】
<TV>
●テレビ朝日「日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」
<ラジオ>
●TBSラジオ「鈴木聖奈LIFE LAB~○○のおじ様たち~」
●JAPAN FM NETWORK系列「OH!HAPPY MORNING」
<雑誌>
●週刊プレイボーイ(2019年2月11日号) ●DIME(2019年4月号)●GetNavi(2020年2月号) ●週刊朝日(2020年6月12日増大号)●食楽(2020 SUMMER No,116)
<Web>
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