[コラム]2020.9.5

麦酒婆(ビアバー)の泡話(バブルストーリー)No.1 「ペンギンズバー」

ビールのキャラクターが大人気に

サントリーペンギンズバー

<1983~1984年>

 

◆ バブルに向かってかる〜く

 

1983年、東京ディズニーランドが開園!イタめしブームが始まりました。片岡シェフのアルポルトがオープン、翌年には落合シェフが赤坂のグラナータで料理を作り始めた頃です。いつのまにかスパゲティはパスタと呼ばれるようになったその頃、サントリーが発売したのが「ペンギンズバー」です。

大手各社は当時、キレがあり苦味が少なめのライトなビールを発売し始めました。当時のビール業界では、フィルターを使い、非加熱で出荷する「生」ビール作りに力を注ぎ、家庭では、瓶ビールから、缶ビールへ移行していました。

そんな中でこれまで、ビールは大手3社から一歩遅れた位置をキープしていたサントリーが、思いもよらないビールを発売したのです。

 

◆ペンギンのキャラクターが大ヒット

 

「ペンギンズバー」は、サントリーが1983年から1984年にかけて発売したビールです。これまでのビールのイメージとは全く異なる、カジュアルなデザイン、パッケージ(缶やビン)にはペンギンが描かれていました。

そして、このペンギンズバーのテレビCMは、ペンギンのキャラクターが演じる映画風アニメでした。音楽は松田聖子が歌う「スイートメモリーズ」。当初はこのBGMを歌う歌手の名は発表されておらず、話題になりました。1983年8月に発売された松田聖子14枚目のシングル「ガラスの林檎」のB面に収録された、ジャズ風で大人っぽい「スイートメモリーズ」はA面同様にヒットしました。(それにしてもA面B面とか、シングル盤とか懐かしいのです、還暦世代には!)

ビールの味の方は、私の記憶が正しければ、「軽くて飲みやすい、苦味少なめ」。ビール自体よりも、音楽とペンギンのキャラクターが注目を浴びました。

当初は写真右の缶デザインで発売されました。が、CMのペンギンのキャラクターが大人気になったので、アニメに使われたペンギンのキャラクターデザインの缶がいろいろな種類でどんどん発売されました。

「パピプペンギンズ」と名付けられたペンギンのキャラクターグッズも発売。銀座のソニープラザには、このサントリーペンギンズバーのグッズショップができました。自称ミーハーだった私も、当時デザイン事務所でデザイナーをしていましたが、先輩と一緒に銀座へ出かけ、トレーナーを購入、1983年秋から冬に愛用していました。あまりの人気にニセモノも登場し、また、サントリービールという文字の入ったグッズを子供が持っていていいのかと問題になったのも印象的な記憶として残っています。

何より、ビールのキャラクターが、これだけ注目されたことは最初で最後ではないでしょうか? また、CMで人気になったアニメは1985年に「ペンギンズメモリー幸福物語」という映画になって公開されました。偶然だと思いますが、ペンギンズバーが発売された1983年には、映画「南極物語」が公開され大ヒットしました。とにかくペンギンが大人気でした。

1980年映画「私をスキーに連れてって」のヒット以来、1983年当時もスキーは大ブームで、ペンギンキャラクターはスキー場のお土産のキーホルダーなどにもなぜか使われ、ビール以上にペンギンブームになっていました。

 

◆ビールはパッケージ重視?の時代

 

というわけで、日本はバブルに突入する中、ペンギンのビールは、いろいろなパッケージ、絵柄でどんどん発売されました。まるで食玩のごとくいろいろなデザインのものが出たはずで、とっておけば良かったと今さらながら後悔。 スーパードライ発売に向け、ビールの味はどんどん軽く飲みやすくなっていた中、サントリーはこの「見た目・イメージ重視」のペンギンズバーを発売し、ある意味大成功しました。

当時のビールはパッケージで売ろうとしていたようで、容器の多様化がすごかったです。樽の形をした2リットルなどの大きなパーティ用の缶は私もバーベキューなどで使っていました。

調べてみると、すでに当時、ペットボトルのビールが発売されていました。キリンからは、1.2Lの「ビアシャトル」(スペースシャトルにちなんで)が発売。アサヒは2Lの「生とっくり」を発売。サッポロはなんとリターナブルの2.4L「PANボトル」を発売していました。もちろんペンギンズバーも300ml、900ml、1.8Lの3種のペットボトルを発売していたという記録を発見。ただし、流通、保存においてのビールの劣化をカバーできず、瓶と缶に統一されていったようです。

 

◆バブルに向かってデザイン重視?

 

1983年「美味しんぼ」の連載がスタートし、1984年ホテルニューオータニの中にトゥールダルジャンがオープン、青山通りにできたハーゲンダッツには大行列、世の中はグルメな時代に突入していきました。そして、マハラジャが麻布十番にオープンしました。ファッションは、DCブランド全盛期、コムデギャルソンのような真っ黒な服だらけ。食べ物もファッションも新しいものがどんどん出てくる中で、ビールは中身ではなく、見た目重視の時代だったのかもしれません。

私はと言うと、その頃、仕事で、初ヨーロッパ・2週間の一人旅を経験。スイスでは、山へ登り、ユングフラウの氷河でスキーをし、チーズフォンデュと白ワインにはまり、パリのオペラ座裏の安レストランの飲み放題赤ワインに感動していました。

次回は「キリン・ハートランドビール」にまつわるお話を。

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

根岸 絹恵

ビアジャーナリスト/フードコーディネーター/ビアソムリエ

ビールが大好きなフードコーディネーター。おいしいビールに合わせたレシピを考えるのがライフワーク。 登山、スキー、キャンプなどアウトドアスポーツとウエストコーストミュージック&ビールが元気の素!

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