[テイスティング,ビアバー,ブルワー]2021.1.4

【東北で出会うビールの世界】~町の魅力の発信基地となるコミュニティスポットに併設~ 福島・桑折町の半田銀山ブルワリー

福島県桑折町(こおりまち)は、福島県中通り北部に位置する人口約11,500人の町です。県庁所在地の福島市に隣接し、JR東北本線の桑折駅は福島駅から3駅13分という近さです。
昨年8月、この桑折町に地元食材を使った料理やクラフトビールを提供するレストラン「上町CHEERS」がオープンしました。同じ建物にクラフトビール醸造所「半田銀山ブルワリー」が併設されています。
昨年12月中旬、オープンから4ヵ月あまり経った現地を訪問してきました。

訪問前に、不思議に感じて調べたことがふたつありました。
◎「半田銀山」というブルワリー名について
半田銀山は桑折町と隣の国見町にまたがって存在した銀山。石見銀山、生野銀山とともに日本三大銀山(あるいは佐渡金山・生野銀山と共に日本三大鉱山)と称せられたそうです。江戸・明治期にその隆盛を極め財政を大きく支えましたが、昭和25年、その歴史に終止符がうたれました。
◎ブルワリー名ではないお店の名前の「上町」について
これは単純に「福島県伊達郡桑折町上町」という住所から来ています。地元の方にとっては場所がわかりやすいネーミングなのだと思います。

誰でも立ち寄れる地域のコミュニティスポットとしての飲食店「上町CHEERS」、そして新たな特産品の創造を目的としたクラフトビール醸造施設「半田銀山ブルワリー」。私たちは、この2つの切り口から地域資源を掘り起こし、発信しきれていない町の魅力の発信基地として広く活動をしていきます。
(上町CHEERSホームページ ABOUT  USより引用)

数日前に降った雪が残る中、桑折駅から徒歩数分で、上町CHEERSに到着しました。
到着するまでは古い店舗の改装か古民家カフェのようなこじんまりしたお店を想像してましたが、全く様相が異なったのでちょっと驚きました。ビール醸造所を併設した建物は、黒を基調としたシンプルかつモダンな外観。内部も広々として明るい雰囲気になっていました。


オリジナルビールが限定を入れて5種類とゲストビールが3種類。飲み比べセット(4種類か8種類)もあります。
いろいろ味わうために、まず4種類の飲み比べセットで、オリジナルビールから超限定というクリスマスチョコレートスタウト、定番の王林ペールエール、半田銀山ペールエール、半田銀山IPAと選びました。

クリスマスチョコレートスタウトは、ココアの風味とコーヒーの苦みがあるものの思ったよりも柔らかな印象。2種類のペールエールは王林のほう爽やかですが、どちらもすっきりとした味。IPAはホップの香りと苦みのバランスが良いと感じました。、

次も飲み比べセットにして、最初に飲んだペールエール2種に加えて、オリジナルビールのSolder Blackとゲストビールからふくしまエールをチョイス。Solder Blackはブラックエールで、苦み少なめで飲みやすいビール。ふくしまエールは、福島県内のブルワリー3社(みちのく福島路ビール×南会津マウンテンブルーイング×半田銀山ブルワリー)のコラボビールでブラックIPA。飲みやすいけれど味わいのあるビールでした。

ここで醸造されているビールは、いい意味で奇をてらっていなくて飲みやすいものが多いと感じました。これなら、クラフトビールに慣れていない地元の方でも受け入れやすいと思います。もちろん、クラフトビール好きが訪問しても十分満足出来るはずです。

裏にある蚕糸記念公園のライトアップを眺めながら、居心地のよい空間でゆっくりとビールを味わうことが出来ました。

現地を訪問したことで、さらに知りたいことが生じて調べてみました。
◎ロゴにHANDA GINZAN BREWERYよりも目立つようにある文字「SOLDER CRAFT」の意味
SOLDERは英語で「はんだ」のことで、車体の継ぎ合わせ部分の溝を埋めるために用いられる低融点合金を意味します。「はんだごて」という道具は、半田銀山が発祥の地という説もあるそうです。

◎定番になぜ珍しい「王林ペールエール」があるのか
桑折町はりんごの生産も盛んで、甘味が強く独特の芳香とサクッとした軽い食感が特長の「王林」発祥の地だそうです。「りんごの中の王様」という意味をこめて「王林」と命名され、普及が推進されたとのことです。
◎裏にある蚕糸記念公園の歴史的背景
桑折町では江戸時代の半ばごろから盛んだった養蚕業に代わり、明治後期以降は製糸工場の誘致が行われたとのことです。現在は製紙工場の建物は解体され、製糸工場時代の面影が庭園部分に残され、交流の場として活用できるように整備されています。

また、桑折町は果物の生産が盛んで、福島県の中でも特に高品質な桃を提供することで知られています。20年以上連続で皇室への献上桃として指定を受けていることから、「献上桃の郷」と呼称しているほどです。もしかしたら、そのうち季節限定で桃のビールも飲めるかもしれないと期待しています。

日頃からクラフトビールを飲むなら出来るだけ現地で飲んで、その背景を感じたいとは思ってきましたが、ここまで調べたくなることはめったにありません。ブルワリーに関してネーミングなどを調べているつもりが、いつの間にか町の観光情報や歴史に足を踏み入れてしまうという仕掛けがあったみたいで…「発信しきれていない町の魅力の発信基地」というコンセプトに、すっかりはまってしまいました。

なお、半田銀山ブルワリーの定番3種類の瓶ビールも店頭販売されています。これは、現在ネットでも購入出来るようになっています。

現地で購入した瓶ビールには、手書きのメッセージが付いていました。

半田銀山ブルワリーのビールは魅力あふれる桑折町の現地で飲んでほしいのですが、なかなか現地に行けない場合は、是非こちらからまず瓶ビールを注文し味わってみてくださいね。

上町CHEERS(半田銀山ブルワリー併設)
〒969-1603 福島県伊達郡桑折町上町72-1  ℡ 024-563-3862
https://www.uwamachi-cheers.com
営業時間
Lunch:11:00~15:00(Lo.14:30)
Cafe:11:00~22:00(Lo.21:30)
Dinner:17:30~22:00(Lo.21:30)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)

上町チアーズ半田銀山ブルワリー桑折町王林

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。今後は、あまり日本語での情報がない韓国のビールについても書いていきたいと思っています。

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