[ブルワー]2022.9.6

《松本さちさん》女性ブルワー 連載取材 「彼女がビールを造る理由」vol. 3

クラフトビールのブルワリーで働く女性を取材するこのシリーズ。
第3回は東京狛江市にある和泉ブルワリーの松本さちさんにお話を伺いました。

和泉ブルワリー 松本さちさん


ブルワリーとタップバーが併設されたBCT(ビアセラートウキョウ)の、ブルワリーで仕事をしているさちさん。はにかんだ笑顔がとってもキュートな彼女。まず、1週間のお仕事ルーティンを聞いてみました。

2拠点で活躍するパワフルウーマン

「土日は仕込みをすることが多いですね。平日は10時頃から夕方までブルワリーでビールの世話・管理をしています。」
夜型だというさちさん、朝は余裕を持って通勤できるのが嬉しいとのこと。
「あと、私は名古屋の方でもお店をやってるので・・・
ーえ?そうなんですか?!
と、私も初耳でしたが、なんとさちさんは名古屋の飲食店の経営もしているパワフルウーマンだったのです。(しかも2店舗!)

では今、和泉ブルワリーで勤務しているのは何故なのでしょう?まずは今に至るまでの経緯を順を追って聞いてみました。

2018年4月Beer Bar マーブル開店

自分でビールを造るという夢を持っていたさちさん。醸造免許の取得には飲食店など3年以上の経営経験が必要ということで、飲食店をやってみたいという友人と一緒にお店を開店することに。アラサー女子2名で「Beer Bar マーブル」をオープンさせました。

2021年6月みゃーブルー開店

3年を経た後二人の意思は変わらず、本格的にブルワリー開設の準備に動き出しました。タップルームと醸造所が同じ敷地内にある、いわゆるブルーパブの開設を目指します。醸造免許申請のために醸造する場所を確保したので、醸造免許取得までの期間、先んじてタップルームを完成させ、営業をスタートしました。
「醸造所が出来上がっていく過程もお客さんと一緒に楽しみたいと思っています。醸造設備が入る日にはイベントみたいにして店を開けて、お客さんと設備を迎えたいと思ってます!搬入業者さんのお邪魔になるので実現するかはわかりませんが…。」

醸造の勉強では、はじめに岐阜のCAMADO BREWERYで丹羽さんへ弟子入り。今まで本やインターネットで調べていた知識が、実際の現場で見られることでもっともっと面白くなっていったというさちさん。“もっと色々なところでも学びたいし違いや工夫も知りたい!”他のブルワリーの技術や手法に興味を持ちながら、醸造所見学をする中で和泉ブルワリーの和泉さんに出逢います。

2021年11月和泉ブルワリーでインターン開始

和泉ブルワリーは、醸造所とタップルームがシームレスになっていて、お客さんが気軽に見学しやすいブルーパブ。さらに、ヘッドブルワーの和泉さんがとてもフレンドリーなお人柄で、さちさんのようにブルワリーを目指す人が相談にくることも多々。
「僕にわかることはなんでも答えるから。なんでも相談してね。」
見学の際にそう声を掛けてもらったのを思い出し、その言葉に導かれるように、再度訪れ、「無償でいいのでここで働かせてください!」と、次のステップとして和泉ブルワリーの門をたたきます。それからインターンを開始し、今年に入ってからは、醸造スタッフの一員としてお仕事を任されています。

ー実際にお仕事してみてどうですか?
「思ったよりも面白い。楽しい!」
弾ける笑顔で答えてくれました。
「和泉ブルワリーは定番があるので何度か同じビールを仕込むのですが、同じようにやっていてもバッチ毎にビールの違いが出てきます。何か起きた時に原因を考え、調べて、対応する。作りたいビールに向かって何度も何度も修正して追い求める、そんなことが楽しいです。だからもっとここで勉強したいし、自分の醸造所の立ち上げを遅らせたいと本当に思っていますが、許してもらえないので笑。」

ービールの醸造工程で一番好きなタイミングを教えてください。
「酵母が動き出すとぽこぽこ音が聞こえてくるのですが、それが可愛いです。(笑)命が宿った!って思います。逆に音が弱いと心配になります。」
さちさんが真心を込めてビール造りされているのが伝わってきますね。

発酵により生み出された二酸化炭素がタンクから管を通って抜ける際、管の先の水からポコポコと音が聞こえてきます。


インド人のビール?

さて、ここでさちさんがクラフトビールにはまったきっかけについて聞いてみました。さちさんは8年前ワーキングホリデー制度を利用しオーストラリアに滞在していました。現地のお友達とお酒を飲む席で、あるビールに出会います。その美味しさに感動したのでそれについて尋ねましたが、当初まだ英語がうまく聞き取れず、理解できたのが「India」という単語。「インドのビールって美味しいなぁ!」と完全に勘違いしたまま、記憶に残り、その後”インド ビール”で検索し、「IPA」の存在を知ることになりました。微笑ましいですね!その後、休暇中にニュージーランドやカナダを旅しながら海外のビールもたくさん飲み、影響を受けたそうです。

ワーホリでオーストラリアに滞在した後カナダにも渡りクラフトビールを堪能! 左:オーストラリアのMatso’s Broome Breweryのもの 右:カナダのYUKON BREWING

趣味はブルワリー巡り

ー休日の過ごし方について教えてください。
「実際にブルワリーに足を運ぶと、お店の雰囲気とか大事にしているものが伝わることがあるので、ブルワリーを巡るのが好きです。作り手の思いがたくさん詰まったクラフトビールが全国にはこんなにあるんだ!!!とお客さんに伝えたくて日々探しています。」
ブルワリー巡りで発見したビールの中からセレクトし、BeerBarマーブルで提供しています。
「趣味は旅とマラソンなので、遠いところのブルワリーにも積極的に遊びに行っています。」

ビール=女の飲み物じゃない?

この日はこれから詰めの作業。その準備をしていました。

ー女性ならではの大変なことってありますか?
「力仕事ですね。私は両手で15L樽二つ、30キロ持つのが限界。ですが男性が70キロを普通に担いでるのを見ると、もう生き物として別ものだから張り合ってもしょうがないなと思い、台車をフル活用してますよ!」

ー女性だから良かったこと、などのエピソードがあれば教えてください。
「以前名古屋のお店で仕事している際、女性のお客様が“女性がいるから行きやすい”って言ってくれました。それは私が女性で良かったことかもしれませんね。」
さらに男性からはこんなことも言われたことがあるそうです。
“女なのにビール飲むんだ?”、“女がビールを造りたいってどういうこと?”と、ビール=女性の飲み物ではない、という発想の方もまだ多い様です。

余談ですが私は二児の母ですが、それを知っている男性客からお店で飲食中に“お母さんなんだから早く家に帰りなよ!子供が可哀想じゃない。”と言われたこともあります。性別や役割への理想や価値観は個人の自由ですが、ビールを愛する権利は平等です。男女関係なく、個人がビールと向き合う時間や姿勢は尊重されるといいですよね。

応援してくれるお客さんに支えられ、今、新たなスタートへ

みゃーブリュー醸造所の設計図 大まかなレイアウトは丹羽氏によるもの。現在は、醸造所に入れる設備は大まかに決定しているのでそれを実際の大きさに当てはめて調整している所です。

名古屋のみゃーブルーでは醸造設備が来年2023年に到着し、工事が完了次第、醸造がスタートする予定。
ーどんなブルワリーにしていきたいですか?
「今は不安しかないですけど・・・(笑)。和泉ブルワリーのようにお客さんとの距離が近いブルワリーにしたいです。今回は免許を得るために時間がかかってしまいましたが、悪い事ばかりではなくて。お店を先にやることで、お客さんに出会えました。そのことで、お客さんが飲みたいビールも分かりました。今はどんなビールを造ろうか、考えるときにお客さんの顔が浮かんできます。応援してくださるお客さんがいるから頑張れる。そう感じています。」

BEER CELLAR TOKYOからのお知らせ

昨年の醸造開始4周年を記念して、チームメンバー9人で仕込んだスペシャルビール「over shift」の2ndバッチが開栓中です!
・Over shift
Style:Sour IPA /ABV:6.0%/IBU:40
酸味、苦味、ボディ感、チームメンバーそれぞれのビール偏愛が詰まったビール。ドライホップはサブローとシムコで優しいトロピカル感。名前の由来は偏った9人にちなんで、野球英語でサードがセカンドベース付近を守るような「変則守備体形」という意味。

  • BEER CELLAR TOKYO(ビアセラートウキョウ)
    醸造所 / タップルーム
    所在地 :〒東京都狛江市和泉本町1-12-1 豊栄狛江マンション 101
    TEL : 03-5761-7130
    小田急線狛江駅北口/喜多見駅北口より徒歩8分
    営業時間:[火~金] 16:00~21:00 [土・日・祝] 11:00~20:00 月曜定休日
    Instagram / Facebook / Twitter

 

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

五十嵐 糸

ビアジャーナリスト

化粧品会社で16年間にわたり、営業・宣伝・PR業務等を経験。
楽しい時も辛い時も毎日ビールを飲んでサラリーマン時代を駆け抜ける。
大好きなビールについて勉強するうちにどんどんその魅力にはまり、PR経験を活かしてフリーに転身。ビールの美味しい飲み方や魅力を日々SNSや協会HPで発信。ビールを通したローカルコミュニティの活性化や、街の復興を目指し、渋谷の街のオリジナルビール「渋生」をプロデュース。

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