[コラム]2023.6.16

【ビールを通して感じる韓国⑧】野球観戦でビールを飲む@大邱サムソンライオンズパーク

4月に韓国を訪問した時、釜山で迎える日曜の昼の予定が決まらないままでした。
あてもなく街歩きをして雰囲気を感じるだけでもいいか…と考えていた前日の夜。何気なくテレビをつけたときに映った野球の試合に急に心が動きました。
「そうだ、久し振りに野球場へ行ってみよう! 昼から美味しいビールが飲めるかもしれないし。」

調べてみると釜山での試合はなかったため、釜山からは約90km離れている大邱にある野球場まで足をのばすことにしました。

大邱とは…

大邱(대구・Daegu)は、韓国東南部の内陸にある人口約240万人の広域市で、ソウル、釜山に次ぐ韓国第3の都市と言われています。山に囲まれた盆地であるため、夏は暑く冬は寒いことでも知られています。特に夏は韓国で1番暑い都市として有名です。
ソウルが東京、釜山が大阪にたとえられることがありますが、それでいくと大邱は名古屋になると思います。
大邱の玄関口はKTX(韓国高速鉄道)の東大邱駅。高速バスや市外バスのターミナルや百貨店も隣接しています。KTXに乗るとソウルから2時間弱、釜山からだと40分ほどで東大邱駅に到着します。KTXの移動に比べると時間はかかりますが、各都市から大邱までは高速バスを利用するのも割安で便利です。

ビール好きとして大邱で気になるのが「チメクフェスティバル」です。フライドチキンとビール(メクチュ)という韓国で大人気の組み合わせの「チメク(チキン+メクチュ)」のお祭りで、以前に養鶏場が発達し韓国のフライドチキンフランチャイズの多くが大邱から始まったという背景があるそうです。
チキンとビール関連の会社が数多くのブースを出して、毎年100万人を超える来場者でにぎわうそうですが、残念ながら、私はまだ行ったことがありません…

韓国のプロ野球

概要

韓国のプロ野球は、1982年に6球団でスタートしています。運営するのは韓国野球委員会(한국야구위원회・Korean Baseball Organization、略称KBO)で、韓国プロ野球リーグはKBOリーグという名称です。1991年からは長らく8球団制を維持してきましたが、2013年に1チーム(NCダイノス)、2015年にさらに1チーム(KTウィズ)が1軍リーグに新規参入し、現在は1リーグ10球団制で運営されています。
2023年の公式戦は144試合(日本は143試合)、延長戦は日本と同様時間制限なしで12回までとなっています。日本でのクライマックスシリーズにあたるポストシーズンには、公式戦1位から5位までのチームが進出可能です。
なお、日本だと土・日曜の試合開始は昼過ぎになることが多いですが、韓国の場合は土曜の試合開始は17時か18時。春・秋の日曜のみ14時試合開始になります。

大邱を本拠地とする球団は?

今回私が行った大邱を本拠地とする球団はサムソンライオンズ。その名前からもわかる通り、日本でも有名な電子部門を中心とする財閥が親会社です。
2004年から2011年にかけて、日本の千葉ロッテマリーンズ・読売ジャイアンツ・オリックスバファローズの3球団でプレーし、韓国球界を代表する選手だったイ スンヨプ(이승엽)選手が活躍した球団で、付けていた背番号36はサムソンライオンズの永久欠番となっています。

大邱サムソンライオンズパーク

サムソンライオンズが本拠地にしている野球場はサムソンライオンズパーク。2016年に出來た新しい野球場です。収容人員24000人。八角形の外形、内部は左右非対称なのが特徴です。スタンドはチームのシンボルカラーでもあるブルーで統一されています。

大邱サムソンライオンズパークへ

釜山から大邱サムソンライオンズパークへ

この日の試合は14時開始。午前中に釜山から高速バスに1時間半ほど乗車し、東大邱駅に隣接しているバスターミナルに到着。そこから直結している地下鉄1号線に乗り、途中2号線に乗り換え40分ほどで地下鉄大公園(대공원)駅に到着。
この駅の4番・5番出口から出ると、目の前が大邱サムソンライオンズパークです。


かつてクラフトビールが飲めた…

私が大邱サムソンライオンズパークへに来たのは7年ぶり2回目。前回はここが出来たばかりの2016年でした。
その時に印象に残っていたのが外から入るスポーツパブ。当時、まだ日本でも野球場でクラフトビールの提供はほとんどなかったと思いますが、ここではD FIRSTという野球場でしか飲めないクラフトビールが何種類か提供されていました。

(2016年撮影)

今回もそのまま残っていることを期待してまず行ってみましたが・・・

外観は残っていましたが、残念ながら閉まっていました。要因は、この間の厳しかった情勢に加え、試合が開催されないときには人がほとんど来ない場所での運営の難しさもあったのかもしれません。

現在飲めるのはTERRA

気を取り直して、中に入るためにチケットを購入。SKY自由席は最上階の5階ですが、野球場全体が見渡せ、9000ウォン(約900円)で入れるのはありがたいです。

以前は野球場内でも外のパブと同じクラフトビールを売っているスタンドがあったので、今回も入場するまではまだ一縷の望みを持っていたのですが…

(2016年撮影)

やはりそれも見当たらなかったので、目に入ったTERRAのスタンドでビールを買いました。

*TERRAについて詳しくはこちら(【ビールを通して感じる韓国】3年前に登場したビール「TERRA」が大人気!)から…



500mlで4500ウォン(約450円)でした。他でも経験したことはありましたが、蓋とストロー付きです。

グラウンドを眺めていて、バッターボックス付近にもTERRAの文字があるのに気が付きました。ここの広告までTERRAということになると、残念ながらこの野球場にクラフトビールを含む他のビールが入る余地は今のところないように思います。

結局、野球場で飲めたのはTERRA 1種類。ビールではやや物足りなさも残ってしまいましたが、この日はホームのサムソンライオンズは9対1と大勝で盛り上がりも最高潮に達しました。前日の思いつきで決めた野球観戦でしたが、なかなかいい試合を観ることができました。

野球観戦での日本との主な違い

野球場での試合観戦の際、日本ではタンクを背負ってビールを売り歩く売り子さんが当たり前でありがたい存在です。でも、韓国ではあまり見かけません。(野球場によって差はありますが、いることはいます。)待っていてもビールが飲めるとは限らないので、積極的に買いに行くことをお勧めします。

ビールからは離れますが、それ以外に感じてきた主な違いについて2つ触れておきます。

◎応援は内野席が中心
内野席に設置の応援ステージで応援団長が指揮をとり、舞台横のスピーカーから曲やリズムが大音量で流され、それに合わせて選手名などをコールするのが韓国流。チアリーダーも舞台上でダンスで盛り上げます。
ビジター側には応援団がいないことも多く、地域を超えたチームのファンは日本より少ないように感じます。(今回私が観戦した試合は相手チームが釜山のロッテジャイアンツだったので、距離も近く遠征と思われる応援団がビジター側にもいましたが。)

◎5回裏終了後のウォーミングアップ
韓国では、5回裏終了後にしっかりとしたグラウンド整備時間があります。その際に、両チームの控え選手が外野でウォーミングアップしている姿が目立ちます。
以前は両チームの選手がセンター付近で雑談する姿も見受けられ違和感たっぷりでしたが、それは今年KBOが禁止したとのことです。

これ以外にも、細かなことを含め違いはいろいろあり、野球場でも韓国らしさをいっぱい感じます。もちろん同じだなあ…と思うところも多いです。
韓国に行った際には、日本と似ているところ、違うところを感じながら野球観戦はどうでしょうか? もちろん片手にはビールを持って。

*参考文献:室井昌也「韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑2023」(論創社)・「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK 2018)」BEER POST PUBLISHING
*10ウォンを約1円として換算しています

KBOTERRAサムソンライオンズパーク大邱韓国ビール韓国プロ野球

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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