[ブルワー]2015.4.1

【シリーズ☆鳥取のビール事情】大山Gビールの醸造長に工場増設についてインタビューしたのでレポート

大山Gビール工場増設鳥取

鳥取県は大山町に移住してよかったな~と思うことはいくつもある。例えば、魚や海藻や米が家に回ってくるほど食材が豊富だし(道端に大量のブロッコリーが無造作に落ちていたことも)、北に目を向ければ日本海で南には大山と眺望が良く、さらに、子どもと1時間散歩をしても誰ともすれ違わないほど人口過密とは程遠い(寂しいときもある)。

だが、ビール好きとして最も良かったのは、やはり「大山Gビール」が近くにある点だろう。赤いシャツとスキンヘッドでお馴染み、醸造責任者の岩田秀樹(通称:ヒデ)さんは西日本どころか、日本を代表するブルワーの一人。そんな御方が同じ町内に住んでいるのだから、僕のハッピーなビアライフは約束されたようなものなのである。

さて、昨年の秋頃から「大山Gビール」が工場を増設するという噂を耳にしていた。これは直接、当事者にインタビューしなければ!というわけで先日、岩田さんにお会いしてきた。久し振りに対面した瞬間から、ものすごい気力の充実っぷりが伝わってくる。自信に満ち満ちている、というべきか。話を伺って、その理由がわかった。

 

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仕込み釜の前でインタビュー。昨年、安倍総理一行が見学に訪れた際の写真も飾られていた。

 

「今回、未知のことに挑むのはこんなに楽しいのか?って思った。同時に、こんなにきついのか?とも思ったけどね(笑)」と岩田さんは笑う。工場増設の噂は本当だった。「この一年ですごく成長できた。毎日成長し続けている。だから完成ぎりぎりまで、極端に言えば前日まで妥協せず設備をいいものにしたいと思ってる」。

実は数年前から、工場の増設は視野に入れていたという。「製造量のグラフを見て、2015年が分岐点だとわかっていたからね。去年からは実際に見積もりを業者に出してもらったり、内容を具体的に決めていった」。

直近の年間製造量は160kl。この数字は既存の設備では限界だった。そのため、今の倍の2klの仕込み釜を導入し、タンクも現状の2kl×10本を活かしながら、新建屋に4kl×11本を順次追加導入することに。この大規模な増設により、最大で500Kl、つまり3倍の生産が将来的に可能になるのだという。今のところ、今年の8月に引き渡しで、9月から新設備で醸造開始予定とのことだ。

 

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模型による増設ビフォーアフター。オフィスも地階から新建屋の3階へ移るそう。※恐竜は自由に徘徊していません。

 

「欲しいと声をあげてくれた人に確実に届けられるようにしたい」と話す岩田さん。今回の増設では単純に量だけではなく、質も向上させる意気込みだ。「一番の狙いは、綺麗な麦汁を取ること。工場に届いたモルトを糖化させるまでの流れも一新する。これまで手や感覚に頼っていた部分、モルトの粉砕や釜での糖分の作り方とかをできる限り見直し再構築することで、安定した質の高いものを届けたいと思ってるんだ」。

ただし、過去を否定するわけでは決してない。「全部を変えてしまうわけではなく、今のものも活かすよ。タンクなどの設備もそうだし、例えば加熱方式などは変えない。迷ったときに、いつでも原点に立ち返ることができるようにしておきたいんだ」。これまでの18年間で培った一本の軸。これがあるから、色々な挑戦ができるのだろう。

 

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既存のタンクの前で増設部分の概要を説明していただいた。この奥に新しい建屋が加わる。

 

とは言え、「フルオーダーで工場を作る」という挑戦は生半可なことではなかった。億単位という額も額だが、工場長として考えるべきこと、人に相談すべきこと、調べること、そして決断すべきことは膨大だった。

「今回、パートナーの業者とは設計段階前から話し合って、建屋増設部分に関しては知識ゼロから作り上げたんだ。換気扇の位置や排水の方法、梁の位置、人の導線や、光の入り方に至るまで、こちら側に選択権が多過ぎて、気が滅入ることもあった(笑)。でも、逃げてられないしやれるだけやってきた」。そう岩田さんは胸を張る。

例えば、図面の中に細かな文字で「AD」「ALC」「PIT」などと書いてある。普通の人は、多忙を極めていたらわからなくてもそのままにするだろう。ところが、岩田さんは違った。

「知らない、で放置するのが嫌だった。調べるとADがアルミのドアで、ALCは高温高圧で特殊加工されたコンクリ壁材、PITは空間ってことがわかったりする。そうすると、打ち合わせのときに、ここの素材はあれだ、ここの構造はこうだと把握しているから話も早いんだ。設備に関しても自分で調べ切れないときは、日本中のブルワーや色々な人に相談したね。本当に助けられた」。そして、こんな思いも明かしてくれた。「日本の地ビール業界全体のことを考えて、自分がレベルアップしなければという思いもあったんだ。これまではテイクばかりだったように思うけど、これからはどんどん業界全体にギブしていかなければと思っている」と。工場の増設や新設をお考えの全国のブルワリー関係者の皆さん、まずは岩田さんに相談してみてはいかがでしょうか。

そんな熱い思いのこもった工場の稼働は、いよいよ今年の夏から。完成の暁には、ぜひまた取材させていただきたいと思っている。

 
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この記事を書いたひと

矢野 竜広

ビアジャーナリスト

東京から鳥取に移住したフリーライター、ビアエッセイスト。
ビール好きが高じて、『ビールの図鑑』(マイナビ)の
執筆に携わり、さらには地ビール会社にも勤務。
ビールがある人生の素晴らしさを迷文で発信している。

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