[イベント]2011.3.29

ビアファンの盛り上がりがブルワーの励みに:ハーヴェストムーン 園田智子さん

ハーヴェストムーン東北地方太平洋沖地震

東北地方太平洋沖地震で、千葉・舞浜のブルワリー「ハーヴェストムーン」も液状化による断水などの被害を被った。同社の醸造責任者である園田智子さんに、被災の様子や他のブルワリー、ビアファンに対するメッセージを伺った。

■仕込み途中で震災、約2週間の断水

──3月11日の地震が起きたときの状況を教えてください。

ちょうど仕込みをしている最中で。ハーヴェストムーンは建物の4階でかなり揺れ、とても怖かった…。ハーヴェストムーンが入っている商業施設「イクスピアリ」が全館待避になり、まずは誘導係としてお客様を避難場所にお連れしました。落ち着いてからブルワリーに戻り、仕込みを続行し、夜半過ぎに自宅へ戻りました。

報道でご存じとは思いますが、浦安や舞浜は液状化がひどいんです。しかしエクスピアリがあるところは基盤がしっかりしているので、幸い建物もほとんど損傷がなく、電気・ガスも大丈夫でした。ブルワリー自体も詰んでいた樽がかなり倒れる被害はありましたが、幸い出来上がっていたビールや設備に問題がなくホッとしています。

──震災から2週間が経過したが、現状はいかがですか。

3月28日にようやくエクスピアリが営業を再開しました。でも23日までは水が止まっていたため、仕込みができなかったんです。発酵途中のビールがあったのでなんとかしたいと焦りましたが、節電の影響もあり原則的には出社を禁止されていました。なんとか頼み込んで午前中だけ出社させてもらい、できあがったビールの瓶詰めや発送を細々と続けていました。

とにかく酵母をつなぐ作業を早く再開したかったのですが、断水が続いて計画停電も実行されるか否かが不安定だった状態で…。24日以降は水が滞りなく使えるようになったこともあり、仕込み作業のスケジュールをなんとか立てることができるようになった状態です。

■被災したブルワリーにはブルワーみんなでサポートしたい

──他のブルワーさんと連絡を取ったりしていますか?

場所からいっていわて蔵ビールさんが大変だと思っていたので、だいぶ落ち着いてから電話しました。常陸野ネストビールさんは3、4日してから連絡しています。千葉のロコビアさんは施設に問題はないのですが、店舗の方が大変だったとのこと。直接連絡したわけでないのですが、銀河高原ビール福島路ビールさんの無事も確認できました。どのブルワリーも、スタッフに怪我がなかったことに安堵しています。

いわて蔵さんはタンクが倒れそうになってしまい、ビンが割れ、建物の壁が崩れたそうです。復旧は大変そうだが、ブルワーの佐藤航さんがお元気そうなのが救いですね。とはいえ、ビールにとりかかれるような状態ではまだありません。ビール造りが再開できるような時期が来て、助けが必要だとわかったら、ブルワーのみんなでサポートできる体制を整えておきたいと思っています。

■被災した私たちの分も美味しいビールを造ってほしい

──各地のブルワーさんやビアパブ、ビアファンの方々にメッセージをお願いします。

現在首都圏では自粛ムードが強く、パブに訪れるお客様の数が激減しています。被害にあったブルワーだけでなく、ビール界全体の需要が落ち込んで停滞気味になっていますよね。原発の問題もありパーッと明るく過ごしにくい状況ではありますが、みんなで楽しくビールを飲んで、楽しく過ごすことも大切だと思うんです。

私が断水や停電でずっとビールの仕込みができない間、他のブルワーさんたちからこんな声が聞こえてきました。「『水が来ない、電気がこない』というブルワーもあるのに、私たちだけが仕込みをするのが申し訳ない」と。

そうではない、むしろ仕込みができない私たちの分もしっかりやって、美味しいビールを作ってほしい。メールをいただいたブルワーさんにそう返事をしたら俄然やる気を出してくれて…。こちらも元気づけられました。

ビールを提供する方にとって、いまは辛抱しどきだと思います。また以前のような賑わいが戻って来てほしいと思うのは、造る側、提供する側、飲む側のひとりひとり、誰もが強く思っていることです。いまビールを楽しむことができる状況の人は、誰かが与える機会を待つことなく、早く活動してほしい。早く前の生活を思い出してほしい。ビアファンが盛り上がることが、被災したブルワリーさんの励みになるのですから。

もちろん寄付したりすることも大切だけれど、それ以上に被災地の人たちにもビール文化を楽しむ日常に早く戻って来たいと思ってもらえるよう、こちらで盛り上げていきたいと考えています。ブルワー、パブ、お客様に、無理しない程度にそんな気持ちを持ってもらいたい。被災したひとりの造り手として、日々強く願っています。■


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003 野田 幾子

この記事を書いたひと

野田 幾子

ビアジャーナリスト/ビアアンバサダー

94年にベルギービール、96年に国産地ビールの美味しさに目ざめ、ビアアンバサダー活動を開始。2007年にビアバー・ビアパブムック『極上のビールを飲もう!』(エンターブレイン刊)の全体構成、執筆、編集を皮切りに、ほぼ毎年シリーズを刊行。雑誌でのクラフトビール特集の執筆/監修、共著、講習、イベント企画など多数。
食のキュレーションサイト「ippin」でクラフトビールキュレーターを務める。
http://r.gnavi.co.jp/ippin/curator/nodaikuko/

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