[ブルワー]2013.5.29

Cheers!In Guam~ISHII BREWING CO.訪問記2013~ その1 近況

Cheers!In Guam~ISHII BREWING CO.訪問記2013~ はじめに の続き

 

グアムの中心地、タモンから西へ車で15分。Toshiさんのブルワリーはタムニング(Tamuning)という各国領事館の集まる地区にある。醸造開始は2010年10月なので今年3年目。ローカルをはじめ、ミリタリー関係者、観光客に「MINAGOF(ミナゴフ)」という名前のクラフトビールを創っている。「MINAGOF」とは、現地のチャモロ語で「幸せ、喜び、楽しみ」という意味だ。ブランドのキャラクターには、地元グアムのマスコット的存在ゲッコー(ヤモリ)を採用。命名もデザインも奥様の有樹子さんが独力で考案した。

グアムはアメリカ領であるため、会社形態が伝統的なアルコールライセンス法に守られ、製造会社(ISHII BREWING CO.)はToshiさん、流通会社(ISHII DISTRIBUTING CO.)は有樹子さんと別々に会社を設立し、それぞれが社長を務めている。業務は、製造に関すること全般をToshiさんが一手に担い、有樹子さんが営業や卸流通、デリバリーや経理に至るまでを担当している。現在、現地の大学に通う学生を始め数人を雇用し、ISHII BREWINGを切り盛りしている。ブルワリーの面積も学校の教室一つ分くらいとそれほど広くなく、その規模はまさに“マイクロ”ブルワリーと呼ぶにふさわしい。ちなみに、アメリカでは年間製造量100バレル以上をマイクロ、それ以下をナノブルワリーと呼び、ISHII BREWING CO.は一昨年までは100バレル未満のためナノ、去年からマイクロに昇格した。

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ブルワリーの外観。大通りに面した場所にあるが、階下にあるので訪れる際は要注意。

 

ここで創られたMINAGOFは、ケグに詰められて島内の飲食店へ運ばれる。現在、11のレストランやシガーバーで飲むことが可能。Toshiさんは言う。「MINAGOFはろ過も熱処理もしていません。僕はビールを農産物、生モノだと捉えています。だから何も引かず、加えずに、ありのままの状態で届けたい。とりわけビールに負担を掛けさせたくないのです」と。そのため現在、MINAGOFをグアム以外で飲むことはできない。だが、グアムでは、新鮮な一杯を飲むことができる。島内唯一の流通ローカルビールであるMINAGOFは冷蔵状態のまま各店舗に運ばれ、専用サーバーで即時提供されるのだ。大手ビールが常温で長旅を経て運ばれるのに比べると、鮮度の違いは歴然としている。

販売において日本と違うのはお店だけではなく、グローラ―ボトルという詰め替え式の瓶で購入することもできる点。アメリカでは伝統的に浸透している買い方だ。

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現在は32オンス(約1リットル)のボトルがメイン。ブルワリーで購入することが可能。

 

このグローラーボトルを購入すると、客は瓶持参でブルワリーに行くことでリーズナブルにリフィルし、自宅やパーティー等でMINAGOFを飲むことができる。また、アメリカ海軍、空軍、陸軍の基地内施設や、タモンエリアの一部のコンビニ・マート・ホテル内ではグローラーボトルでの販売も行っている。基地内での評判はいいようだ。「ベース内で購入したミリタリーの家族はブルワリーにリフィルに来ます。ほぼ圧倒的にIPAですね。うちのお客さんは“陸海空、海兵隊、沿岸警備隊”と全米5軍からやって来ますよ(笑)」。

開業からの製造量は2010年の17バレルを皮切りに、77バレル(2011年)、113バレル(2012年)、160バレル(2013年予定)と順調に推移しているが、「グローラーボトルの販路をいかに拡大できるかが今後のキーになる」。そうToshiさんは考えている。現在、基本的には月水金(木)の週3~4回のペースで仕込んでおり、1日の仕込み量は1バレル(約117リットル)。これは、一般的な日本のクラフトビール会社(1kl製造サイズ)の10分の1 の量なのだという。

朝は早く、起床は6時半でブルワリーには7時半までに現れる。午前中に4時間かけてハーフバレルを仕込み、昼食を挟んで午後にまた4時間かけてハーフバレルを仕込む。これがToshiさんの仕込み日のおおまかなタイムスケジュールだ。火曜と土曜はケグ詰めの日で、長いときには数時間に及ぶこともあるが、「品質を均一化するため、味をチェックしながらバッチ間ブレンドをするので、五感を最大限フル活用しています。が、時間によっては飲み過ぎになることもあります(笑)」とのこと。

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予め連絡すればブルワリー見学が可能。日本やメインランドからやって来るファンも多く、入口を入って右手の壁には訪問者のメッセージがズラリ。

 

ブルワリーの中は必要最低限の設備機材と原材料が綺麗に整理整頓されており、非常にシンプルな印象を受ける。間近で醸造している姿を見させてもらったが、全ての動作がキビキビしていることに驚いた。そして、手が空いているように見えるときでも椅子に座ることがない。仕込みの時は、お昼も外へ食べに行くことは決してない。スタッフ達を外へ出すことはあっても、自らはブルワリーに留まって食事を摂る。外ではグアムの青空が広がる中、「醸造終了まで一度も太陽を見ないですね」と平然と語っていたのが印象的だった。ブルワリーの環境にはメリットもあるという。「グアムは365日真夏です。その炎天下の日差しを防げる階下のスペースは、比較的涼しい温度で安定し、余分な熱が滞留しないんです」。ビールの安定醗酵を視野に入れた場所選びをしていたのだ。

そんな環境の中、日々の情熱の積み重ねで創られるMINAGOFとは、一体どんなビールなのだろうか。次回はMINAGOFのスタイルや味わい、特徴を紹介したい。

 

Cheers!In Guam~ISHII BREWING CO.訪問記2013~ その2 陣容 に続く

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この記事を書いたひと

矢野 竜広

ビアジャーナリスト

東京から鳥取に移住したフリーライター、ビアエッセイスト。
ビール好きが高じて、『ビールの図鑑』(マイナビ)の
執筆に携わり、さらには地ビール会社にも勤務。
ビールがある人生の素晴らしさを迷文で発信している。

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