[イベント,コラム,ブルワー]2019.8.18

ホップ収穫体験にビールイベント&花火と盛りだくさん。松江の夏はアツかった!【クラフトビアフェス松江&松江ビアへるんホップ摘みツアー2019 現地レポート 後編】

2015年から続いている「松江ビアへるん(会社名:島根ビール株式会社)」のホップ収穫ツアーも今年で5回目。季節がら直前直後に台風に見舞われることもあったが毎年開催している。今年は地元のお祭り「水郷祭」、さらにはその一環として企画された「クラフトビアフェス松江」と日程が重なり、ビールファンとしては濃い内容となった。後編の今回は、ホップ収穫の様子をお届けする。

★前編はこちらから

ホップ収穫体験にビールイベント&花火と盛りだくさん。松江の夏はアツかった!【クラフトビアフェス松江&松江ビアへるんホップ摘みツアー2019 現地レポート 前編】 

9年目となる今年のホップ収穫ツアーは、2ヶ所に分かれて摘む

ホップ収穫ツアーは宍道湖の北側、醸造所のある「松江堀川地ビール館」を中心に開催された。ホップ栽培は、矢野社長の「やってみたい」という思いから。平地におけるホップの自生南限は長野県といわれており(※1)、駄目もとで9年前よりスタートした。また「他社と同じ品種を育ててもつまらないことと『神々の国しまね』から」という理由でゼウスを選択した。

※1 ホップ栽培は、夏の平均気温20℃前後が適していると言われている。松江ビアへるんの所在地松江は夏の平均気温が26℃を超える。

ブルワリー前の圃場。後ろがお城のお堀になっているので、転落しないように注意が必要(今のところツアー中に転落した人はいない)。

条件が厳しいなか、試行錯誤をしながら栽培方法を毎年変えて収穫量を増やせるよう挑戦し続けている。昨年は猛暑の影響から収穫量が少なく、長年の夢である麦芽とホップをすべて島根県産で醸造する「ゼウスビター」を実現させることができなかった。「今年こそ!」の思いから、昨年から栽培を始めた新たな圃場での収穫もあり実現を目指している。

ホップ収穫ツアーは、はじめは有志3人から始まった企画も年を追うごとに参加者が増え、今年は30名が集まった。興味深いのは、地元以外からも人が集まってくることだ。東京や富山、岡山、遠くからは今年は北海道からの参加者もいた。

ホップ収穫ツアーの説明をする矢野社長とそれを聞く参加者たち。

今回はホップ摘みのほか、昨年も好評だったブルワリー見学と収穫後宴会に加え、「クラフトビアフェス松江」での二次会(希望者のみ)が組み込まれた。

昨年は生育状況が良くなく実現しなかった新しい圃場での収穫も実現。新しい畑は醸造所から車で30分ほど離れたところにあるので2班に分かれて行動(そちらに参加する方はスケジュールの都合上でブルワリー見学はなし)。ちなみにブルワリー前ではゼウスとセンテニアルが。新圃場はゼウスとチヌークを栽培している。

移動組を見送り、ブルワリー班は早速ホップ摘みを開始。こちらはさらに2班に分かれ、交替でブルワリーを見学。

メンバーには初めてホップを見る人もいて興味津々に摘んでいる様子が印象的。西日本の地域では東日本と比べると一般から参加者を募りホップを収穫するイベントはまだ少なく、特に山陰地方の方にとっては貴重な体験となっている。

ホップを収穫する参加者たち。

初めて触れるホップに「どれを摘んでいいのかわからない」と不安だった方たちも摘んだホップを割ってみて香りを嗅いでみたり、中にあるルプリンをみたりして「これが苦味の成分なんですね」と感想を話してくれた。

摘んだホップを見せてくれた。みんな楽しんだ様子だった。

一方、ブルワリー見学では、醸造工程の説明を受けながら実際に使う原料や設備を見ながら行われた。麦芽破砕室では、麦芽を試食しながら使う麦芽の種類でビールの色が変わる話やなぜ発芽させる必要があるのかを説明。皆一様に食い入るように話を聞いていた。

麦芽について説明を受ける様子。ツアーの担当は、ビアへるん元ブルワー大石泰史氏。

その後は仕込み工程や発酵、ボトルや缶詰めの話を聞きながら進行。特に0℃の冷蔵庫で行うラベルを貼る作業にはつくる以外の大変さを知る機会になった。

普段、立ち入ることができないブルワリーを間近で見ることができるのもこのツアーの良さだ。

今回、筆者はブルワリー班を担当したので、直接新しい圃場の収穫風景は一緒に取材にあたった西條はるビアジャーナリストが様子を教えてくれた。初対面の人が多かったにもかかわらず、話題が途切れることなく収穫が行われたとのこと。やはり人をつなぐ力をもっているのがビール。新たなご縁をつくってくれる。

昨年、始めた圃場も今年は順調に育った。【PHOTO BY 西條はる】

ゼウスについては、「これまでで今年が1番の収穫量」のようで、悲願の島根県産原料100%「ゼウスビター」が現実味を帯びてきた。

収穫されたホップ。【PHOTO BY 西條はる】

収穫後は、みんな乾杯して宴に突入!

収穫後は恒例の宴の時間。例年はブルワリー前の圃場の一画で行うが、この日も猛暑日。「熱中症になっては大変」と急遽、事務所で乾杯することに。すでにホップを摘むなかで交流が生まれ、和気藹々とした雰囲気。宴で初めて話す別班の人とも自然と笑顔で会話する光景があちらこちらで見られた。ビールも「おろち 2018玉櫻Ver.」「宍道湖ムーン」と、この時期に飲めないものや隠岐の島の藻塩米を使った「しまねっこラガー」、県内で採れた生山椒を使った発売直後の限定ビール「山椒ホワイトエール」が用意された。

参加者全員で乾杯! みんなの気持ちが1つになる瞬間だ。

ちなみに今回のツアー参加費は無料。「働いた分はしっかり飲んでね」という矢野社長の方針からビールも無料で振る舞われた。宴の途中には、「採ったホップをビールに入れて香りと味の変化を楽しんでみてください」と矢野社長。即席フレッシュホップビールを楽しむことができる。実はこれが収穫イベントの最大の楽しみ。参加者はホップを入れて変化を楽しんでいた。まだ体験したことがない人は、ぜひ経験して感じてみてほしい。

自分で摘んだホップをビールに入れて楽しむ。なんとも贅沢な時間。

話が尽きないが終了時間がきて今年のホップ収穫ツアーはお開きに。まだ楽しみ足りない参加者はクラフトビアフェス松江の会場へ移動して二次会に突入。宍道湖に夕陽が沈むころまで盛り上がった。

ご縁があり集まった協力者とともに充実したツアーに!

ホップ収穫ツアーを矢野社長に振り返ってもらうと「今回は少人数のブルワリースタッフなのにクラフトビアフェス松江と重なることになったうえに半年前から告知をした効果で過去最高の30名の参加者が集うということで焦りを感じながらの開催となりました。実は、新しい圃場での収穫は予定していなかったのですが、予想以上に成長具合が良く『これは、いま摘まなきゃ!』ということで急きょ摘むことにしました。結果、自分達だけでは運営することが難しく、同じ業界内である北海道の『澄川麦酒醸造所』の斎藤さん、『JAP BREWERY(475ビール)』の樋本さんをはじめ、元スタッフである大石くんなどにサポートいただき無事に終えることができました」と、参加者や協力してくれた方々への感謝の気持ちを込めてホップを感じるビール「ゼウスビター2019」をつくると心意気を語ってくれた。

今年は水郷祭の花火にクラフトビアフェス松江と、当初の計画から変更になり松江ビアへるんのスタッフも慌ただしく大変だったが、ご縁を大事にする彼らの心くばりにより充実した2日間になった。この場を借りてお礼を伝えたい。

来年もホップ収穫ツアーは開催される予定で水郷祭の日程と合わせるかは未定だが、参加者からは「来年も合わせてほしい」と要望が出ているという。筆者もその1人だが「体力と相談して決めさせて(笑)」と矢野社長はお茶を濁したが、きっと実現してくれるだろう。「面白そうだな」と、感じたビアファンは今から来年夏の予定を組んでおいてはいかがだろうか。

Special thanks 西條はる・木暮文世

※2019.8.18 a.m.10:00 前編のリンクが反映されていないのを修正いたしました。

◆松江ビアへるん「ホップ収穫ツアー」2019 概要

日時:2019年8月4日(日)

場所:松江堀川地ビール館

参加人数:30名

参加費:無料

特典:収穫後のビール、クラフトビアフェス松江 ビールチケット2枚

主催:島根ビール株式会社

◆松江ビアへるん(島根ビール株式会社)Data

住所:〒690-0876 島根県松江市黒田町509-1

電話番号:0852-55-8355

Homepage:http://www.shimane-beer.co.jp/

Facebook:https://www.facebook.com/beerhearn/

ゼウスゼウスビターフレッシュホップホップホップ収穫ツアー松江ビアへるん

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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