[コラム]2026.1.1

新年あけましておめでとうございます。
藤原ヒロユキが2026年元旦に思うこと。

新年あけましておめでとうございます。
今年も、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会のメンバーをよろしくお願いいたします。

去年は日本のクラフトビール生誕30周年。
今年は新たな時代へ。

昨年2025年は「日本のクラフトビール生誕30周年」でした。
簡単に「30年」と言いますが、長い年月です。

クラフトビールが誕生した年に、成人をむかえて飲酒人生を始めた人が50歳になっているのですから。
もう、ええおっちゃんとおばちゃんですよね。笑

その間に様々な出来事がありました。

地ビールと呼ばれてスタートし、ブームが起こり、一旦は下火になったものの、再び人気が出始めましたが、大きな震災やコロナ禍がありました。

そんな時代の波の中で浮き沈みしながら、現在は醸造所数も右肩上がりで1,000近くになりました。

クラフトビールという言葉の認知度も上がってきています。

2026年は、クラフトビール生誕31周年として新たな時代への第1歩を踏み出す年でもあります。

酒税の統一は、ビール業界にとってどのような影響を与えるのか?

今年、もっとも注目されているのは、10月に酒税が変わることです。

『ビール』の税金が下がり、『発泡酒』や『第3のビール』の税金が上がり、その差は無くなります。

ビールも発泡酒も第3のビールも税金が同じになるのです。

『ビール』と『発泡酒や第3のビール』の価格差は、税金の差が大きな理由です。

原料価格は、ほとんど差が無い(どころか、麦芽より高い副原料もあります)ので、ビールと発泡酒と第3のビールの価格差は無くなる可能性があります。

発泡酒や第3のビールの存在価値が薄れ、銘柄自体が無くなってしまうかもしれません。

そうなると、消費者はどのような選択をするのでしょうか?

低価格であることを理由に発泡酒や第3のビールを選んでいた人達はビールに流れるのでしょうか?

それとも、ビール系飲料を飲むことをやめるのでしょうか?

私の思いとしては(希望的かつ我田引水かもしれませんが)、日本人はビールの持つ【麦とホップの味わい+炭酸の刺激】の魅力から離れることはできない! と考えているので、「ビールが安くなった」という喜びに満たされると信じています。

ビール界におけるクラフトビールの立ち位置は?

税率の統一により、ビール業界内の勢力図も変わってくることでしょう。

商品群の価格が横並びになると、消費者は満足感で商品を選ぶようになります。

さらに「品質の良いものと悪いもので価格に差があるのは当たり前だ」と思い始めます。

実は今、ビールは価格の差がほとんどないお酒なのです。

例えば、ワイン1本の価格は? ウイスキー1本の価格は?
という質問の答えは「物によって差がある」です。日本酒も焼酎も同じです。

しかし、ビールだけが「350ml缶で220〜240円」が正解となります。

ところが、これがクラフトビールとなるとどうでしょうか?

200円台のものもあれば800円台の物もあり、なかには1000円以上の物も存在します。

本来、「ビール1本の値段はいくら?」の答えは「物によって違う。味や品質によって差がある」が正解であるべきなのです。

クラフトビールは、すでにそれを実践している存在なのです。

クラフトビールの定義:Smallとは

さて、そんなクラフトビールに関して、いまだに「クラフトビールは【小規模】である」と盲信している人達が多いことに驚かされます。

結論から言うと「クラフトビール=【小規模】とは限らない」のです。

たしかに、アメリカでクラフトビールが生まれた当初は、小規模な醸造所がクラフトビールを造っており、マイクロブルーなどと呼ばれていました。

また、アメリカのブルワーズ・アソシエーションでは、クラフトビールの定義に【Small】という言葉が今も含まれています。

しかし、この【Small】の条件は、【年間の醸造量が600万バレル以下】です。

リットルに換算すると約71万キロリットル=7億1千万リットル以下ということです。
これが、アメリカで言う【小規模】の定義なのです。

年間の醸造量が7億1千万リットル以下であれば【Small:小規模醸造所】なのです。

この数字を見ても、まだあなたは「クラフトビールは小規模醸造でなければならない!」と叫び続けたいのでしょうか?

クラフトビールは「伝統と創造」の両輪

それでは、クラフトビールの定義とは何なのでしょうか?

それは、アメリカ西海岸で1960年代中頃に始まったビアカルチャーなのです。

醸造所の規模の問題ではなく、文化であり思想であり哲学なのです。

具体的には、「伝統と創造」の両輪からなるビール造りと言って良いでしょう。

この件は、私が2025年4月にリトルモア社から上梓した「BEER LOVER’S BOOK〜一生ものの趣味になるビール入門〜」に詳しく書きましたが、
・ヨーロッパやアメリカ禁酒法以前の伝統的なビアスタイルと醸造テクニックを理解し習得している。
・コピーに終わることなく創造性を発揮したビールを醸し出していく。

この両輪がクラフトビールの精神なのです。

不出来なビールを「小規模な醸造所が造っているからクラフトビールだ」と評価することも、優れたビールを「大手ビールメーカーが造っているからクラフトビールではない」と排他することも共に大きな間違いなのです。

ビールはビール

私は、この「クラフトビールの精神」は今後も広まっていくべきだと信じています。

すべてのビールが、伝統と創造の両輪をバランスよく回すことによって造られるべきだと思います。

つまり、すべてのビールがクラフトビールになるべきなのです。

そうなると、もう「クラフトビールとは? 定義とは?」という無意味な論争も無くなって、クラフトビールという言葉も無くなることでしょう。

すべてのビールはビールであり、そこに住み分けは無くなります。

ビールはビールなのです。

目の前の木をしっかりと見つめることは大切ですが、その背後に広がる大きな森を見渡すことはさらに重要です。

私は、これからもビールという大きな森を見続けていきたいと思います。

2026年 元旦 藤原ヒロユキ

2026年元旦藤原ヒロユキ

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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