[コラム,ブルワー]2016.12.3

自然環境と一体になったサステナブルなクラフトビール生産活動を目指して COEDOクラフトビール醸造所を訪ねて

COEDOブルワリーレポート埼玉県東松山市朝霧重治氏

2016年9月1日、COEDO BREWERY(以下、COEDO)が埼玉県東松山市へ移転しました。国内外から高い評価を得ているCOEDOがどんな想いを抱いて、新たな場所でビールを造ろうとしているのかを実際に工場を訪ね、朝霧重治CEOにお話を伺ってきました。

埼玉県東松山市に移転したCOEDO新工場。田園地帯に囲まれた中にある

埼玉県東松山市に移転したCOEDO新工場。田園地帯に囲まれた中にある

サステナブルを強く意識したビール造り

「COEDOのビール造りは農業がベースにあります」

COEDOのビール造りのきっかけは今から約30年前に土壌を健全に保つための緑肥として栽培していた麦で「ビールが造れないか」が始まりとなっています。この計画は実現しませんでしたが、1996年に地元、川越産のサツマイモを使用したビール(紅赤)を誕生させました。紅赤に使用しているサツマイモは様々な理由で規格外となってしまったものを使用しています。こうした廃棄物となってしまう農作物を「どのように有効活用していくか」がCOEDOのビール造りの基礎となっています。

COEDOのラインアップ。左から白、伽羅、紅赤、瑠璃、漆黒。これに飲食店限定の毬花や限定ビールがある

COEDOのラインアップ。左から白、伽羅、紅赤、瑠璃、漆黒。これに飲食店限定の毬花や限定ビールがある

移転先は周りが田園地帯と森が広がる丘の上にあります。ビール造りに使用する水は地下水を井戸で汲み上げ、排出される水は浄化して自然に返しています。麦芽の粕は家畜の餌として利活用しています。

こうした自然循環を強く意識したサステナブル(※)なビール造りを目指すため、新たなステージに移すことになったのです。

※環境用語で環境に多大な負荷を与えず、持続可能な状態であるさまとして用いられる。

ブルワリーに生まれ変わるために誕生した施設

移転とありますが、施設を新設したわけではありません。高度経済成長期に建てられた某企業の研修施設をリノベーションしています。

工場の裏側。レンガ調の建物が偶然にも工場らしさを感じさせている。

工場の裏側。レンガ調の建物が偶然にも工場らしさを感じさせている。

「ここはブルワリーに生まれ変わるために造られたのではないかと思っています」

工場を案内中に朝霧CEOが話されたのですが、私自身もそのように思いました。研修施設であるため、数多くの部屋が設けられています。中庭を囲む形で部屋が造られており、醸造工程ごとに部屋を再利用しています。また、部屋が区切られていることで、麦芽やボトル、缶を保存しておく場所を新たに作ることなく保存しておくことができています。しかも、空調設備も残されていたため、温度管理もできる好環境となっています。

部屋が区切られていることで、質の高い衛生管理も可能になっています。「私も必要最低限にしか醸造スペースには入りません」と徹底した業務分担と部屋への出入りには二重扉を設置し、外から雑菌が入り込まないよう食の安全に努めています。

写真右側はモルト粕が運ばれてくる。ここで、ビニール袋に入れ、真空状態にすることで菌の繁殖を防いでいる。

写真右側はモルト粕が運ばれてくる。ここで、ビニール袋に入れ、真空状態にすることで菌の繁殖を防いでいる。

しかし、全てにおいて設備が適応していたわけではありませんでした。糖化釜といった釜はそのまま搬入するスペースがなかったため、工場の一部の壁を1度取り壊し、建物の強度を高めるために梁を設けたりしています。

蛍光灯の高さが元々の天井の高さ。安全に作業できるよう業者と綿密な打ち合わせを行ってきたという。

蛍光灯の高さが元々の天井の高さ。安全に作業できるよう業者と綿密な打ち合わせを行ってきたという。

元々は丘を切り拓いて建築された建物であるため、新設した貯蔵施設との高さを調節する必要があったと言います。「実はこの工場には様々な分野の職人におけるレベルの高い技術が色々と組み込まれています」と新工場のこだわりも教えてくださいました。

貯蔵施設では自動で決められた場所へ置いたり、出したりすることができる設備がある。こうした設備を取り入れたことで、スタッフの負担も軽減し、作業効率も良くなったという

貯蔵施設では自動で決められた場所へ置いたり、出したりすることができる設備がある。こうした日本のものつくりの技術が新工場の至るところにある

新設備により労働環境にも変化

移転に伴い、醸造釜をはじめ、新しい設備に変更したものもあります。醸造釜はこれまでのものよりも大きくなったことで生産能力が増すことになります。

これまでの倍の醸造量で仕込めるようになったとのこと。機械化も進み、作業効率も良くなった

これまでの倍の醸造量で仕込めるようになったとのこと。機械化も進み、作業効率も良くなった

醸造に必要な釜は開業当時から付き合いのあるドイツのメーカーによるオーダーメイドです。「これまでは麦芽の袋とか重いものを運んだりして、重労働でした。コンピューターでの管理になったことや新しい機械を使うことで、醸造スタッフの負担も軽くなりました」と作業効率も向上したことを教えてくださいました。

とはいえ、樽の洗浄など、人の手で行う作業もある。こうして、1つ1つ丁寧にきれいにしてくれることで美味しいビールが飲めている

とはいえ、樽の洗浄など、人の手で行う作業もある。こうして、1つ1つ丁寧にきれいにしてくれることで美味しいビールが飲めている

ビアアミューズメント化も!?

実は新工場はまだ、施設のすべてを活用しているわけではありません。研修施設であったため、建物内には食堂や宿泊施設も当時のまま残されています。食堂は今後、一般の工場見学を開始した際(※来春、開始予定。予約制が検討されています)にタップルームとして生まれ変わる計画とのこと。COEDOのビールとともに食事も提供する予定とのことです。東松山名物のやきとんとのペアリングが味わえるかもしれません。

宿泊設備を備えていることで、翌日に近隣の秩父や川越へ足を運ぶことも可能になります。関越自動車道東松山ICから車で15分と地方のビールファンも訪れやすい環境にあります。「埼玉をより楽しむ」コンテンツとしての魅力を非常に秘めている場所だと現地に足を運び、朝霧CEOのお話を聴き、思いました。

新工場へ移転し、生産能力の向上のみならずビールを通じて、自然環境への取り組みや地域の観光産業として、どのように成長していくのか今後の動向に目を離すことができません。COEDOが魅せてくれる活動に来年は大注目です!

これからどんな展開をみせてくれるのか楽しみだ! 朝霧CEO、ご多忙にもかかわらず対応していただきありがとうございました。

これからどんな展開をみせてくれるのか楽しみだ!
朝霧CEO、ご多忙にもかかわらず対応していただきありがとうございました。

◆COEDO BREWERY Data

本社住所:埼玉県川越市中台南2-20-1

COEDOクラフトビール醸造所住所:埼玉県東松山市大谷1352

電話:0493-39-2828

Homepage:http://www.coedobrewery.com/jp/

Facebook:https://www.facebook.com/coedobrewery

Twitter:https://twitter.com/COEDOBREWERY

 

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05007木暮 亮

この記事を書いたひと

木暮 亮

ビアジャーナリスト

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは2000種類以上。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」、「うちの逸品いかがですか?」、「Beerに惹かれたものたち」、「ビール誕生秘話」、「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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