[ブルワー,新商品情報]2018.1.31

ビア女の酒場放浪記(47)日本で一番宇宙に近い醸造所「Local Breweryからはな」

からはなビア女種子島

「種子島」と聞くと何を連想されるだろうか?
鉄砲伝来、JAXA宇宙センター、それともサーフィン?

種子島は鹿児島県本土から南へ40kmの洋上に浮かぶ南北58km東西4~12kmの細長い形をした離島だ。
島の南西側からは屋久島が見える。
屋久島の最高峰が1,936mであるのに対し、種子島は最高地点でも282mしかなく平地が多い。島を吹き抜ける強風と荒波にさらされ、東側の海岸線には奇岩がダイナミックな地形を作る。
透明度の高い海と高い波はサーファーたちのパラダイスだ。

そんな種子島に2017年7月にクラフトビール醸造所「Local Breweryからはな」が誕生した。

島の一次産業に直結したビール造り

種子島宇宙センターへと向かう国道75号線と586号線の分岐に現れるピンク色の建物。
白く塗られた木の看板に「LOCAL BREWERY」の文字が良く映える。
地元を愛し、地元に愛される、地元の醸造所。それが「Local Breweryからはな」だ。

「Local Breweryからはな」。種子島宇宙センターから車で5分の場所にある。

柑橘類の甘い香りに誘われて扉を開けると、奥から、長靴をはいた優しい目の男性が現れた。からはなのオーナー・醸造家である伊藤理人(いとうりひと)さんだ。

「いらっしゃい。今日は午前中に漁に出ていたので、午後からは島のタンカンを使ったビールを樽に詰め替える作業をします。あ、今朝獲った鯖を刺身にしたんですけど食べます?」

漁に、タンカンに、ビール??
一体どういうことだろう。

島での伊藤さんは色々な顔を持っている。
定置網の漁師として午前中は海に出る。季節ごとのフルーツピッキング、ロケット打ち上げの事業の下請け、波が高い日はサーファー、家に帰れば3人の娘の父だ。

「いろいろやっています。主に島の一次産業に従事しながら、島ならではの素材を生かしたビールを造っているんです」

多種多様な仕事っぷりは、地元に根を下ろした島人ならでは。

「Loacl Breweryからはな」オーナー・醸造家 伊藤理人さん

伊藤さんは、2001年に埼玉県から種子島に移住した。サーフィンが好きで種子島の海と風土に惚れてのことだった。
大好きなビールで地域に貢献したいと、地元の副原料を使用する醸造所を計画。
石見麦酒でビール造りの研修を受け、昨年2017年7月に製造免許を取得した。

「発泡酒製造免許をもらうまでに2年もかかってしまいました。製造許可が出てからも設備の調整と試作に苦心して、ようやく昨年10月に商品として売り出せるようになりました」と伊藤さん。

現在は島の素材で味付けした3種類のビールを定番商品として製造している。

島の恵みを感じる3種類のビール

種子島のあかだいだい Tankan Ale アルコール度数5.5%
地元でタンカンと呼ばれている柑橘類を加えたペールエール。知り合いの農家で無農薬栽培されたタンカンを自身で収穫し、セミドライにしたものを使用している。ホップの苦みとジューシーな甘みが好バランス。

種子島のあかだいだい Tankan Ale

種子島のパッションウィート Passion wheat アルコール度数5.0%
同じく自身で収穫した種子島産のパッションフルーツ。フルーティーな酸味が味わえる。

種子島のパッションウィート Passion wheat

種子島のもえぎ Green tea Season アルコール度数5.0%
意外なことに種子島でも茶が栽培されている。南種子町の田上製茶で栽培された緑茶を使用したセゾンエール。醸造所から出た麦芽粕を肥料として茶畑で使っている。

種子島のもえぎ Green tea Season

島だからこそできること、できないこと

からはなでは週に2~3回ビールを仕込む。1回の仕込みは100リットル程度だ。
家族の協力は欠かせない。帳簿は奥さんが、賞味期限の記入は娘さんが手伝うこともある。

醸造所には付属のレストラン等はなく、現在のところはボトルとビール専用容器での販売のみだ。
島内の飲食店や宿泊施設にも卸しているので、ほとんど島外に出回らない。

1回の仕込み量は100リットル程度。臨機応変に客の要望に応えられるのは小規模醸造所だからこそ

亜熱帯気候に属する種子島では、一年を通じて様々な作物が採れる。
手間はかかるが小規模であることを活用し、金柑や安納芋などの特産物を使った季節ごとのビールにもチャレンジしている。

「何でもやってみよう精神で取り組んでいます。
ゆくゆくはホップも種子島産のものを使いたいんです。醸造所の庭にホップ苗を植えました。夏場は厳しい日差しを遮るためのプラントカーテンとして活用して、ゆくゆくはホップを収穫してビールに使用したいとも考えていたのですが、台風にやられて全滅してしまいました!」
と島ならではの悩みもあるようだ。

醸造所の名前である「からはな」は、ホップの和名だ。
現在はアメリカ産のホップを使用しているが、いつの日か台風にも夏の日差しにも負けずにホップが育ち、種子島産ホップのビールが完成することを祈りたい。

目指す醸造所の姿を伺った。

“味わう・見る・体験できる”クラフトビール醸造所を目指しています。種子島のレストランや企業がここでオリジナルビール造りを体験して、それをお客さんたちに味わってもらうようになれば嬉しいです。みんなが笑顔になるビール造りをしたいと考えています」

そう言って大きな笑顔を見せる伊藤さん。
ビールは島の人だけでなく伊藤さん自身も幸せにするツールのようだ。

定番3種類。種子島ののんびりとした空気にぴったり

2017年2月25日に予定されているH-ⅡAロケット38号機の打ち上げの際には、長谷展望公園に出店予定だ。
クラフトビールを飲みながらロケット打ち上げを見守る。
ビールと宇宙ファンにとって、そんな夢のような日が現実になろうとしている。

応援してくれる人はいるとはいえ、まだ地方でのクラフトビールの認知度は低い。
本土から長距離輸送されてくるビールではなく、島で造られたビールを、島の人が自ずと手に取るように。
島の人が、誇りに思える唯一無二の味を。

伊藤さんのチャレンジは始まったばかりだ。

魅力いっぱいの種子島をご案内

このビールを育んだ種子島をまるごと楽しもう。
種子島へは鹿児島から飛行機で35分、高速船では90分だ。
世界遺産屋久島ともアクセスが良い。屋久島にも2017年にクラフトビール醸造所がオープンしている

島の南にある種子島宇宙センターは日本最大のロケット発射所。
付属の宇宙科学技術館には、日本のロケット開発が映像や巨大な実物模型とともに紹介されていて宇宙ファンでなくとも楽しめる。見学は無料だ。

高台より発射台を望む

マリンブルーの海と緑の木々に間に配された建造物が美しく、“世界一綺麗なロケット打ち上げ場”と呼ばれるのにも納得だ。

事前に予約をすれば、実際に打ち上げに使用されている指令センターや格納庫、ロケットガレージを見学できるガイドツアーに参加できる。

ガイドツアーで見ることができる実物のH-2ロケット7号機

種子島の透明度の高い海ではマリンスポーツが盛んだ。発射台をバックにサーファー達が波を楽しんでいた。
海岸沿いには荒波や風に浸食されてできた奇岩や洞窟が数多く存在し、自然の造形美と迫力に圧倒されることだろう。

「象の水飲み岩」象が水を飲む姿に似ていることから名付けられた

「千座の岩屋」干潮のときだけ入ることができる洞窟。岩の間から波が押し寄せる様は幻想的

2016年公開の『君の名は。』が大ヒットした新海誠監督による連作アニメーション映画『秒速5センチメートル』の第2話『コスモナウト』は種子島が舞台
アニメでは島の風景や建物が細かく丁寧に描かれており、スマホを片手に聖地を巡るのも面白い。

主人公貴樹と花苗が学校帰りに立ち寄った商店には、外観も雰囲気もアニメそのままだ。ファンノートには日本語のみならず、ハングル、中国語、英語、スペイン語などでメッセージが書かれており、ファンの幅広さを感じる。

アイショップ石堂太平店

歴史の授業で習う「鉄砲伝来」も種子島だ。
1543年種子島に漂着した南蛮船によって伝えられた鉄砲が戦術を変え、群雄割拠の戦国時代に終止符をつけることになる。
1551年にはフランシスコ・ザビエルが上陸している。歴史の舞台だ。

「鉄砲伝来偉功碑」の立つ門倉岬

まだまだ知られていない美しく刺激的な種子島。
島の産物で造られる個性的なローカルビールをきっかけに、種子島の魅力に触れてみよう。

からはな Local Brewery
住 所:南種子町茎590-6
営業時間:10:00~17:30
定休日:日曜日・祝日
メール:karahana(アットマーク)outlook.jp
電 話:0997-26-7461
Web:http://karahana.blog.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/karahanabrewery/
☆配達などで不在の時間あり。訪問前に連絡しておくのが確実。

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この記事を書いたひと

コウゴ アヤコ

ビアジャーナリスト

1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。
ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた「旅ール(タビール)」をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして雑誌『ビール王国』、海外生活情報誌『ドイツニュースダイジェスト』など様々なメディアで執筆。『ビールの図鑑』『クラフトビールの図鑑』(マイナビ)、『極上のビールが飲める120店』(エンターブレイン)など。

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