[イベント,テイスティング,新商品情報]2018.3.21

クラフトビールを「ブーム」から「文化」へ【株式会社ヤッホーブルーイング プレス発表】

さて問題です。
酒税法等の改正により2018/4/1から使用できる「ビールの副原料」として該当しないものは次のうちどれでしょう?(第6回 日本ビール検定2級の問題を一部改変)

1. そば
2. バジル
3. かつお節
4. 海苔

正解は…以下の文中で!

この4月の酒税法改正に合わせて大手ビールメーカーが新商品のプレス発表を行っており、ビールの定義が広がることについてのニュースや記事をあちこちで見かけるようになりました。

そんな中、株式会社ヤッホーブルーイングは、かつお節を使ったSORRY UMAMI IPAを「新ビール定義」対応のジャパニーズクラフトビールとして、4月から公式通販サイトおよび公式ビアレストランにて数量限定で販売することを発表しました。

日本を代表するクラフトビールメーカーであるヤッホーブルーイングは、この酒税法改正をどのように捉えているのか。3/14(水)にYONA YONA BEER WORKS 赤坂店で開催されたプレス発表でお話を聞くことができましたので報告いたします。

かつお節と共に記念撮影

酒税法改正の内容

簡単ですが酒税法改正の内容のおさらいです。

1. 麦芽比率の下限を67%から50%に引き下げ。
2. 従来の副原料に加えて、5%の範囲で使用できる副原料の種類を追加。

ビールの定義の拡大(出典:財務省「酒税法等の改正」(参考8))

ビールの副原料の範囲拡大(出典:財務省「酒税法等の改正」(参考9))

ここから分かる通り、最初の問題の答えは「4. 海苔」になります。

酒税法改正の意義

ところで素朴な疑問があります。
今まで「発泡酒」であったものが「ビール」に分類されることになっても、中身が変わる訳ではありません。ベルギービールの多くが日本の酒税法上「発泡酒」になっているのであって、世界的には立派な「ビール」です。では、この改正にはどんな意義があるのでしょうか?

この疑問に対し、ヤッホーブルーイングの井手代表取締役社長(ニックネーム:てんちょ)はこのように答えます。

イベントでお客様と直接お話する機会があるときに、発泡酒というだけで、安いのでは?美味しくないんでしょ?という悪いイメージの声を聞くことが多々ありました。ビールと同じ麦芽量で税率もビールと同じなのにイメージが悪い。それがようやく正しいイメージを持ってもらえるのはとても大きいメリットです。

名物のてんちょの仮装はやはり「かつお」でした!

発泡酒も実は麦芽比率で税率が異なっているのですが、世間ではあまり知られていません。一度ついた悪いイメージはなかなか変えられないため、日本での多様なビールが広がりが阻止されていたのだとすると勿体無い話です。これを機に一般の方が多様なビールに出会えるようになる。それはとても意義のあることだと思います。

テイスティングタイム!

さて、そんなヤッホーブルーイングで、4月以降、発泡酒からビールになるのがこのSORRY UMAMI IPAです。米国向けに定番ビールとして製造しているこの商品が、4月から限定で日本でも販売されることになりました。

テイスティングでいただきましたが、マンゴーを思わせるフルーティな香りが特徴的。飲んだ後の小麦感がベルジャンホワイトを思わせます。
ただし、さすがクラフトビールの本場アメリカで販売されているIPA。旨味がぎゅっと詰まったボディは強めで、しっかりとした苦味が後からやってきます。

パッケージから想像できないフルーティな香り

なお、かつお節の成分は発酵を促す目的で使用されているため、かつお節自身の風味はありません。念のため。

ヤッホーブルーイングの今後

「クラフトビールを『ブーム』から『文化』へ」。
「ブームでは終わらせない」。
発表の中のこれらの言葉には「現在はまだブームなのだ」という危機意識が伝わってきました。

確かに今回の酒税法改正では使用できる副原料は増えました。しかし、この中に含まれない材料が入ると「発泡酒」になることは変わりません。それを「残念ながら…」とお話されたところに「ビールが美味しくなるなら何でも使うぞ!」という意気込みを感じました。

今までも個性的な材料を使ったクラフトビールを作り、「かつお節」まで使う人たちなのです。
これからも、どんどん新しい味にチャレンジしてくれることでしょう。楽しみです!

IPASORRY UMAMI IPAヤッホーブルーイング

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

古川 人士

ビアジャーナリスト

1975年名古屋生まれ。2003年に就職して上京。
社会人になって趣味で登山を始め、山頂で飲むビールの美味さに感動。
さらに、登山で訪れた街のビアバーでクラフトビールの美味しさに目覚める。
ビールの魅力にはまり、2017年に日本ビール検定2級に合格。

自分の感じたビールの魅力や楽しみ方を、様々な方法で発信していきたいと考えています!

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