[コラム]2018.4.8

4月です。新たな一歩をふみ出します~ビール飲み的酒税法改正の話~

ビール発泡酒酒税法改正

平成29年度税制改正で大きく注目された「酒税法改正」。この改正によって、これまで税率はビールと同じであるにも関わらず「発泡酒」と表記されていたものが、堂々とビールを名乗れるようになりました。
(あぁ、よかった。)というのが、ビールをこよなく愛する私の正直な感想です。だって、これまでの状態って、昔の少女マンガやドラマで、本当は町一番の権力を誇るご当主の子なのに、ちょっと事情があって、その名を名乗れず生き辛い日々を過ごしている主人公のようではないですか……。
ホッと胸をなでおろした私です。が、ビールについて書いているにも関わらず、この酒税法改正が実際にはどのような内容なのか、実はきちんと理解できておりません。お恥ずかしい。インターネットを検索すれば、どれを読めばよいのかわからないほどたくさんの情報が出てきますが、これまで放置していた反省もこめて、私という「ビール飲み視点」での酒税法改正について今さらながら整理してみました。

関係するのはビール・発泡酒だけではない

この改正は、酒類間の税負担の公平性を回復するという観点から、ビール系飲料にとどまらず、清酒、果実酒、チューハイなどにも及びます

  • ビール系飲料(ビール/発泡酒/新ジャンル)は一本化される。ビールと麦芽率の高い発泡酒の税は下がり、麦芽率の低い発泡酒と新ジャンルの税は上がる
  • 清酒の税は下がる
  • 果実酒とチューハイの税は上がる

ことになります。

4月から突然変わるわけではない

下の図のように、酒税の変更は、2020(平成32年)年10月 ~2026(平成38年)年10月 にかけて何段階かに分けて行われます。

「酒税法等の改正」(財務省)より引用

ビール(および麦芽比率50%以上の発泡酒)、発泡酒、新ジャンル(第3のビール)という、現在あるビール系飲料3つの税は段階的に一本化され、最終的には1リットルあたり155円に統一されます。最初に税が変わるのは2020年10月とまだしばらく先です。今月変わったのはビールや発泡酒の定義のみで、税はずっと後から変わるんですね。

ところで「ビール」と「発泡酒」と「第三のビール」って?

2017年度までの酒税法(以下、旧酒税法)でのビールと発泡酒の違いは、①麦芽使用率と②使用原料と③製法の3つの面から定められていました。
①麦芽使用率
ビールに分類されるためには、麦芽を原料の3分の2以上(つまり67%以上)使用していること。それより少ないものは発泡酒でした。発泡酒はその中で3段階に分かれていて、麦芽比率50%以上使用した発泡酒の税は、ビールと同じでした。
②使用原料
ビールの原料として麦芽や麦、ホップ、米、とうもろこし、でんぷん等使用できるものが政令で定められていました。
柑橘の皮やスパイス、果汁など指定外のものを原料に使用すると発泡酒でした。
このルールにより、輸入されているベルギービールや国産ビールで麦芽たっぷりでも柚子やスパイス、果汁を使って造るものは、発泡酒に分類されていました。
③製法
主発酵が完了したあとになにかを追加して入れると、ビールではなく発泡酒になりました。したがって一般的にドライホッピングしたものや糖類を加えて二次発酵させたものは、発泡酒になっていました。

なお、「第三のビール」は、主原料に麦芽や麦ではないものを使った「その他の醸造酒」か、従来の発泡酒に麦由来のスピリッツや蒸溜酒などを加えた「リキュール」に分類される酒類です。

4月(2018年度)からはどうなる?

今月からの改正後の酒税法(以下、新酒税法)では、次のように変更されました。

「酒税法等の改正のあらまし」(国税庁)より引用

①麦芽使用率
緩和されました。原料の2分の1以上(50%以上)になりました。これまで、ビールと同じ税率を適用されていた麦芽比率50%以上の発泡酒が堂々とビールと名乗れるようになりました。

②使用原料
拡大されました。果実、コリアンダー、香辛料、ハーブなど下の図にある10種類が追加されます。そのため、コリアンダーやオレンジピールを使ったり果汁が入っていることで、旧酒税法では「発泡酒」に分類されていた輸入ベルギービールのほとんどがビールになります。また、コーヒーやチョコレートを使ったもの、苺やリンゴを使ったものも発泡酒からビールに変わります。ただし、この追加された副原料が麦芽重量の5%を超えると新酒税法でも発泡酒に分類されます。

「酒税法等の改正」(財務省)より引用

③製法
緩和されました。主発酵が完了したあとになにかを追加して入れた場合、さらに追加発酵すればビールと名乗れます。

さらに、2023年10月からはホップを原料とするものや、ビールに似た苦味や色のものも発泡酒の範囲に加えられることになります。つまり現在の新ジャンル商品が発泡酒の範囲に入ってきます。

こうしてこれまで世界的な常識でみればビールなのに、日本国内では発泡酒と記載しなくていけなかったもののほとんどが、新酒税法ではビールと記載できるようになります。
発泡酒という言葉のもつ、税金が安い、ビールの代替品、のイメージから脱却することができるので、スパイスや果物を原料に使ったビールはこれからどんどん増えて広まっていくのだろうという印象を持っています。
将来、具体的には2026年10月には、ビールに似た見た目で発泡するアルコール飲料は、すべて1本化されるというのも明るい兆しと感じます。
とにかく日本の現在の制度はわかりにくいです。外国には発泡酒の概念はないので、翻訳することもできない言葉なのだそうですから。

最後に醸造免許の話

クラフトビールを日ごろから楽しんでいると、2016年~2017年にかけて、マイクロブルワリーやブルーパブが急激に増えたと感じます。特に2~3月の醸造免許取得ラッシュはすごかったですね。もう全部をチェックすることもましてや試すなんて無理だと思うほどの多くのブルワリーができました。
これって、酒税法改正と関係あるのでしょうか?関係なかったら、こんな急に申請する人が増えたりしないですよね、たぶん。
でも、酒税法は醸造免許の取りやすさとは関係ないはずです。では、どうしてあんなことになったのかなぁ。


私の結論としては、まずそこにあったのは、あいまいな情報による「不安感」だったのではないかと思います。
「発泡酒には、副原料を麦芽の5%以上使わなくてはならないらしい。それじゃ、自分の作りたいビールが造れなくなってしまうんじゃないか……。これからはビールらしいものを造るためにはビール醸造免許*を取得しなくてはならないのか。」
というはっきりしない不安のような感覚が拡がっていたのではないでしょうか。そのため、そうなる前にとにかく発泡酒醸造の免許を取得しておこう、と焦りが拡がったような気がします。
*ビール醸造免許の年間最低醸造量は60KL、一方発泡酒免許は6KL

続いてあったのは、「みなし製造免許」**の取得でしょう。
**「みなし製造免許」とは (国税庁, 平成29年度税制改正によるビールの定義に改正に関するQ&Aより):


Q. 品目の定義の改正に伴う製造免許の取扱いはどうなりますか。
A. 平成 29 年度税制改正により、改正前の酒税法(以下「旧酒税法」といいます。)上の品目の製造免許を受けていた者は、平成 30 年4月1日に、改正後の酒税法(以下「新酒税法」といいます。)において対応する品目の製造免許を受けたものとみなされます

例えば、新酒税法ではビールに該当することとなる旧酒税法の発泡酒(以下「新法ビール」といいます。)の製造免許を受けていた者は、平成 30 年4月1日において、新酒税法のビールの製造免許を取得したものとみなされることとなります(以下「みなし製造免許」といいます。)。ただし、その際の製造することができるビールの範囲は、旧酒税法における発泡酒に該当していた部分に限られ、旧酒税法でもビールに該当していたものは製造できません


2018年3月末までに発泡酒製造免許を取得すれば、その免許で造っていた発泡酒で、新酒税法上でビールに分類されるものは、定義が変わったからといって造れなくなるわけではないのです。免許を取った当時には認められていた製法なので、それは継続して造ることができます。つまり3月末までに発泡酒の製造免許を取っておけば、4月1日以降、同じものを造ったらビールとして販売することになるわけです。
ということで平成29年度内に発泡酒免許を取得していれば、最低醸造量はそのままで、新酒税法のビール製造免許を取得しているのと同じとみなされます。そうなるとやはり早めに醸造免許を取っておけば安心、という心理が働くでしょう。

「え?じゃぁ、これまでの発泡酒免許があればビール造っていいの?」

まだ頭がごちゃごちゃしていて、つい、この疑問が離れないのですが、これまでどおりで旧酒税法上で「ビール」と定義されていたものは造れないんですね。
でも、これまで造っていた(旧酒税法での発泡酒の)レシピで造ったもので、それが麦芽比率50%以上で追加副原料が麦芽の5%を超えなければ、ビールと表示して販売することになったのです。逆に、発泡酒の表示のままでは販売できないんですね。その表示の切り替えには半年の猶予期間があります。これから10月までにこれまで発泡酒表示だったものがどんどんビール表示に切り替わっていくんですね。

ビールはもっともっと自由に多彩になれる

まだまだ時間はかかりますが、これから10年近い時間をかけてビールと発泡酒と新ジャンルが1本化されてシンプルになるのはとてもいいことだと思います。
それに、いろんな原料を使って自由なイマジネーションで造られるものたちがみんな「ビール」として世の中に出て行くのも、大歓迎です。
これまで、ビールに対して1つのイメージしかなかった人たちに、これからは多様なビールが伝わっていく。みんなにそれぞれのとりあえずビールがあって、一日のリセットにその日の気分でいろんなビールが選べる。もちろんだれもが料理に合わせてビールを選べる。そんな毎日になるといいなぁと思います。

参考資料: www.zeiri4.com, www.jiji.com, houritsu-madoguchi.com, http://www.brewers.or.jp/, www.suntory.co.jp, http://www.kanzei.or.jp/, http://www.nta.go.jp/taxes/sake/senmonjoho/kaisei/aramashi2017/index.pdf, http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sake/05.pdf

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よしのたま

この記事を書いたひと

よしのたま

ビアジャーナリスト

1965年、南信州生まれ。峻険な南アルプスと中央アルプスに囲まれた自然豊かなリンゴ農家に育つ。1女1男の母。大学卒業後1年間、まだ東西に分裂していた時代に南ドイツに遊学し、各街々の地ワインにハマる。帰国後は、翻訳会社、雑誌編集、組紐製造など好奇心のままに仕事を転々とし今に至る。その好奇心はビールにも顕れ「好きなビールは?」と訊かれた際の返事が同じだったことがない。目下のところ友人のフォトグラファーが連載中のビアエッセイの影響で、アジアのビールに興味津々。趣味は着物だが、茶道や華道といった着物っぽいことには一切通じていないため、結局のところ着物を着てビールを呑みに行くというのが趣味になっている。

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