[コラム,ブルワー]2018.4.7

人を集め、町をつくるブルワリー 【ブルワリーレポート Zoiglhaus Brewing編】

Zoiglhaus Brewingブルワリーレポートポートランド

最近では、郊外地域において新規のブルワリーが増えている。取材をすると「ポートランドを参考にした」という声を聞く。ポートランドでは町づくりをする際、最初にブルワリーを立ち上げる事例がある。はじめに人が集まるコミュニティの場を提供することで、町に人が集まってくる。このブルワリーがもつ可能性を体験したく、大きな影響を与えた「Zoiglhaus Brewing(以下、Zoiglhaus)」を訪れることにした。

同じ目標をもつことで、町の発展に成功

ポートランド中心街から東に約11km。Lents(レンツ)の地に「Zoiglhaus」はある。「ここは以前、何もない地域でした」とオ州酒ブログのRed Gillen氏。これまでも行政が町づくりに力を入れてきたことはあったが、成功には至らなかった。そのような土地でビールづくりを始めようとしたのが、オーナー兼マスターブルワーのAlan Taylor(アラン・テーラー)氏だ。彼はポートランド行政の都市発展局(Prosper Portland)と連携し、2016年に醸造(前年にパブを先にスタート)を開始した。

「場所は色々なところを探していました。ここは行政が管理していた物件で、店舗をリメイクする予算が出たり、金利の低いローンが組めたり諸条件が整っていたのが決め手になりました」(Alan氏)。

しかし、Alan氏も町づくりでブルワリーがもつコミュニティの可能性に着目した事例は、聞いたことがなかったという。「注目してもらうために地元メディア、ビール業界のサイトにコンタクトを取り、自身のSNSを使い情報を伝えました」と当時を振り返る。

ビールを飲みに来た人同士が触れ合い、素晴らしい時間を共有する。その体験が広がっていき、訪れた人たちが土地を気にいり移住してくるようになる。住民が増えることで、ライフラインも充実し、より魅力的な町となりさらに人口が増えていく好循環を生み出している。実際に町の至るところで建築場面を見かけた。

ただし、単にブルワリーをつくればいいというわけではないという。

「ブルワリー側と行政側が同じ目標をもたないと成功しません。行政は昔から同じようなことは行ったことがあり、ブルワリーを最初に建設したら人が集まってくるということを経験で知っていました。私もブルワリーがコミュニティをつくることを知っていましたので、目指すところが一緒だったのです」。

共通のゴールをもつことが重要だといい、この町だとターゲットとしている年齢層は25~40歳代としている。この街で暮らし、育児をし、その子たちがこの地で暮らし、次世代につながっていく町づくりを目指している。

オーナー兼マスターブルワーのAlan Taylor氏。奥様はドイツ人で家ではドイツ語で会話しているそうだ。

また、コミュニティを重要と考えているので、パブには子供が楽しめるスペースを設け、家族がこの場で一緒に過ごせる工夫をしている。「ここはみんなの家という意味で、家族で楽しんでもらってもいいし、みんなが集まる場所という意味を込めて、「haus」という言葉を入れています」とお店のコンセプトを教えてくれた。

キッズスペースのあるビアパブはこれまで見たことがなかった。置いてあるおもちゃは、お客さんがもってきてくれたものもあり、ここでもコミュニティのつながりが感じられる。店内も広く、スペースも広く大人数でも楽しめるし、バーカウンターもあるので、1人でも楽しめる。それぞれの過ごし方で楽しめるのも「Zoiglhaus」の特徴だ。

キッズスペース。壁は黒板になっていて、チョークで自由に描けるようになっている。

冒頭で書いたように日本でも参考にされ、取り組みを行っている地域はある。そのことをAlan氏に伝えると「私たちのところに来て、アイデアを学んでもらえることは嬉しいです。しかし、模倣するだけではなく、日本のその土地に合った方法で行わないと成功はしないと思います」と話す。

日本では横須賀ビール(https://www.jbja.jp/archives/15885)が現地を視察、参考にし、横須賀の土地を活かした活動をしている。

ポートランドでは珍しいドイツスタイル

町づくりで注目を集める「Zoiglhaus」だが、それだけでは人は集まってこない。ビールにも特徴がある。それがドイツスタイルだ。ポートランドでは、ドイツスタイルを中心に提供するブルワリーはほとんどない。

「私はドイツの醸造所で働いていて、ドイツとの関係が強いのです。元来、ドイツスタイルのブルワリーを立ち上げたく、他のブルワリーとは異なるコンセプトを出したかったのです。原料もドイツ産を使っています。水もドイツの水質になるよう調整しています。つくり方もドイツスタイルです。設備もドイツビールの特徴が表現できるように設計しました」。

ラインナップ。ゴーゼといったシーズナブルビールもつくっている。

ピルスナーはコンテストでも賞を獲得するほどレベルが高い。基本的にドイツスタイルのビールが基本だが、アメリカンIPAや原料をドイツ産に限定したIPAなどラインナップはバラエティに富んでいる。

「Zoiglhaus」のビール。
撮影をしていたら横からAlan氏が飛び込んできてこのポーズ。本当に優しくて良い人です。

麦汁提供と試飲会

そして、ブルワリーの象徴的なものが、ホームブルワーへの麦汁提供「ゾイグルイベント」だ。これはドイツのバイエルン州のZoigl(ゾイグル)という村にある共通ブルワリーがコンセプトになっている。ちなみに名称はここからきている。イベントではAlan氏がつくった麦汁をホームブルワーたちが持ち帰り、ビールをつくるのだ。酵母も「Imperial Organic Yeast」という酵母工場とタイアップして提供している。その後、自宅で麦汁にホップ、副原料、酵母を加え、4~6週間後に完成したビールを持ち合って試飲会を開催するのだ。

これは日本でビールづくりに関心のある人にとっては、とても羨ましいイベントではないだろうか。普段、25~50人が麦汁をもらいにきており、「私たちの設備を使ってもいい」とのことだ。ポートランドではプロアマの交流も盛んで、刺激し合っているからこそ魅力的なビールが次々に登場してくるのだろう。

設備もドイツビールをつくるのに適したものを採用している。ここでビールをつくれるなんて贅沢すぎる。

話を聞いて、単純にブルワリーをつくるだけではなく、人が集まりやすい環境やイベントが重要だと感じた。当然、そこには美味しいビールがあることは言うまでもない。

缶での販売もこの春から開始される。近い将来、「Zoiglhaus」のビールが日本でも飲める日が来るかもしれない。今回はスケジュールの関係でゆっくりと味わうことができなかったので、日本で飲めるようになると嬉しいし、再訪したいブルワリーだ。

間もなく缶での販売も開始(もしかしたら発売を開始しているかも)。日本でも飲めることを望む。

◆Zoiglhaus Brewing Company Data

住所:5716 SE 92nd Aveポートランド

電話:+1 971-339-2374

Homepage:https://www.zoiglhaus.com/

Facebook:https://www.facebook.com/zoiglhaus/

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05007木暮 亮

この記事を書いたひと

木暮 亮

ビアジャーナリスト

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは2000種類以上。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」、「うちの逸品いかがですか?」、「Beerに惹かれたものたち」、「ビール誕生秘話」、「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

【メディア出演】
テレビ朝日「日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」

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