[イベント,コラム,ビアバー,ブルワー,新商品情報]2018.4.27

【静岡】富士の地に宿る “ごちそう ”で百姓猟師が醸す「FUJIYAMA HUNTER’S BEER」が5/4(金)蔵開き。農泊や市街地のタップルーム開業も目指す

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その窓は、日本の原風景の四季を切り取っている。

春は山里を薄桃色に染めてゆく桜を。

夏には青々と生命力をみなぎらせる棚田。

秋にはさわさわと風に揺らぐ黄金色の稲穂。

冬枯れの野辺には心が安らぐたき火のゆらぎ。


その向こうには、四季折々の顔とともに、柚野(ゆの)に住まう人々の歴史と営みを静かに見守る勇壮な富士山。日本人として、これ以上のものはない贅沢なロケーションに、土とともに生きる人々がありのままの自然をビールに織り込んだブルワリーを立ち上げた。

「FUJIYAMA HUNTER’S BEER(フジヤマハンターズビール)」

その窓。
静岡県富士宮市(旧芝川町)柚野地区を見渡す丘に建てられたテイスティングルームの窓は、ビールに溶けこんだ富士の四季を、この上ない酒肴として切り取って見せてくれる。

(※全画像提供/FUJIYAMA HUNTER’S BEER)

 

原材料すべてを国産で。富士宮の季の “ごちそう ”をビールに

静岡県東部にある富士宮市の中心市街地から北西へ。


山を越えたところに位置するのが、富士山の裾野にのどかな田園地帯が広がる「柚野」地区。
富士の清らかな水が田畑を潤すこの山里には、米やお茶、野菜、柚子に梅、枇杷、花梨、柿、キウイフルーツといった季節の果物、そして清流で育つにじますや、野山に実るどんぐりをたっぷり食べて肥えた猪や鹿など野生鳥獣の肉まで、あらゆる自然の恵みが手に入る。

▲米や野菜、果物、川魚、肉、食材は全部この山でまかなえる

「『ごちそう(ご馳走)』という言葉は、大切な客人を迎えるときに、馬で駆け回って食材を集めておもてなしすることが語源です。本来は高級食材ではなく、その土地の風土を感じられる食べ物を意味します。僕たちは、柚野でまごころを込めて育てたもの、仕留めた獲物、言葉本来の意味でもある『ごちそう』をみなさんにお届けしたいと思っています」

▲鹿や猪などの野生鳥獣も山の幸だ

そう話してくれたのは、「FUJIYAMA HUNTER’S BEER」代表の深澤道男氏。

▲リーダーの深澤氏。祖父から引き継いだ農地で百姓と猟師をしながら地域に積極的に関わる

富士宮の農家で生まれ育ち、祖父から引き継いだ農地で米や小麦、野菜など多品目を生産している。さらに、柚野で増え続ける鹿や猪などの農作物への鳥獣被害を減らすために、自ら狩猟免許を取得。仕留めた獲物はジャーキー、テリーヌ、ベーコンなどに食肉加工して、県内のレストランで提供している。

▲鳥獣被害を食い止めるために猟師に

筆者も深澤氏が仕留めた鹿肉を静岡市内のフレンチレストランで食べたことがあるが、臭みや脂のしつこさがなく、肉そのものの濃い味がつまった見事な鹿肉だったことを覚えている。

▲レストランで提供されている肉厚の鹿肉フランク

やがて、ヤッホーブルーイングの「よなよなエール」でクラフトビールのおいしさを知った深澤氏は、同時に疑問を抱き始める。「地ビール」をうたったビールでも、原材料の多くは輸入に頼っている現状に。自然の恩恵を当たり前として育ったことから、日本に豊かな自然がありながら、自分たちの口に入るもののルーツがわからないことへの違和感が拭えないという。地元のモノを地元で食べる、消費することが結局のところ一番のエコになる。シンプルな地産地消で、農作物の生産とその消費にかかわるフードシステムを地元で済ませることができれば、地域内の経済も循環する。

ところが柚野に増えていくのは、継ぎ手が見つからず、荒れてしまった田畑や耕作放棄地。

「この豊かな自然や美しい田園風景を次の世代につなげたい」

そう思ったときに、素材の組み合わせ次第で無限の広がりを見せるビールにふるさとを反映させる大きな意味と価値を見出したという。ビールはこの地域の課題を解決し、活性化する可能性を秘めている。

▲純富士宮産。この地に宿るものだけを使ったビールづくりを目指す

ここにないものは自分でつくろう。
柚野に二条大麦やホップの栽培例はなかったが、深澤氏は2010年から稲作と同時に扱える大麦栽培をはじめた。そして、本格的に醸造について学ぶために参加した東京都内のセミナーで、ブルワーとなる佐野由里加氏と出会う。

 

富士宮の「風土」と「人」が、味わいを形作る

当時は、「ホッピー」で知られるホッピービバレッジで働いていた佐野氏。

▲「FUJIYAMA HUNTER’S BEER」のブルワー佐野由里加氏

同じ富士宮出身でビール好きということもあり、二人はごく自然な流れで、「いつか故郷の地ビールを作る」という夢を分かち合うことになる。それから佐野氏は「御殿場高原ビール」に転職。ブルワーとして3年間ビール醸造に携わった後、カナダに渡り、現地のブルワリーを巡って知見を広げた。

▲食の安全への危機感から、100%国産でつくり手の顔が見えるビールをつくることの大切さを感じている

富士宮で生まれ育ったからこそ、富士宮の気候や風土、原材料の特徴をよく知る佐野氏。発酵飲料であるビールのつくり手として、その存在は何よりも心強い。

▲自家製大麦とホールリーフホップをたっぷりと使って仕込む

こうして深澤氏と佐野氏に、柚野で猟や農業、料理に携わる2名を加えた4名でスタートした「FUJIYAMA HUNTER’S BEER」。

▲「FUJIYAMA HUNTER’S BEER」のメンバー。農業、醸造、料理、狩猟と得意分野を活かした4名がタッグを組む

全員が「豊かな自然を愛し、次の世代に継承したい」という思いを胸に、ビールづくりをスタートした。

 

大反響を呼んだ「FUJIYAMA SAISON

目指すのは、自分たちの手で育てたものと柚野の風土が醸す純富士宮産ビール。

▲地元柚野産の柚子と日本ミツバチのハチミツを使用した「FUJIYAMA SAISON(フジヤマセゾン)」

「大麦もホップも水も、最終的にはすべて富士宮産を目指しています」
そう深澤氏が言うように、大麦に続いてホップ栽培も開始。現在はセンテニアルやカスケードなどの4品種を生育中だ。次第に苗木が土地に馴染んで毬花が大きくなり、収穫量も順調に増加しているという。

▲香りや苦味の決め手となるルプリン(黄色い樹脂)をたっぷり携えた自家製ホップ

そして2014年から自家製麦芽とホップを使った試験醸造に乗り出した。
第一弾は素材をAOI BREWING(静岡市)に託してOEM醸造、2016年にはブルワー佐野氏自身が設計したレシピに基づいて、御殿場高原ビールの醸造設備で製造した『FUJIYAMA SAISON(フジヤマ セゾン)』が完成した。自家製麦芽100%にホップ、富士由来の清らかな軟水を使い、希少な日本固有種「日本ミツバチ」のハチミツと柚野産の本柚子を副原料として加えたセゾンビールだ。

「『日本ミツバチ』の蜜って舐めたことありますか? 今はスーパーで手に入るもののほとんどが『西洋ミツバチ』のハチミツですが、『日本ミツバチ』は日本に昔からいる野生のミツバチで、養蜂のために品種改良された西洋ミツバチと違って自然界で生きている在来種です。半径2㎞以内にある草花の花粉を集め、そのハチミツは独特の風味とやわらかい甘さが特徴。甘みと香りが強い西洋ミツバチにはない特徴をもっています。でも日本ミツバチから採れるハチミツの量はごくわずか。飼育にも向かないのでとっても貴重なんです」

▲巣箱の「日本ミツバチ」。うまく定着してくれるか、どれぐらいの蜜がとれるかは彼らの気分と運次第

飼育が難しくて供給不安定のため高価な日本ミツバチだが、その密は地元で開花するさまざまな花の蜜が混ざった「百花蜜」と呼ばれ、巣箱の位置や採蜜時期でも味が異なり、さまざまな花の香りを楽しむことができる(西洋ミツバチは単一種類の群生花を好む)。日本ミツバチが好む糖度の高い花の蜜は、熟成したフルーツやジャムのような芳醇な香りを持つという。

▲日本ミツバチの巣箱。養蜂は管理しやすい西洋ミツバチが圧倒的

まさに柚野の恵みを宿したビールは大反響を呼び、2,000Lがわずか一週間程度で完売。納得のいく味わいと好意的な反応に手ごたえを感じた深澤氏は、ブルワリーを運営するための農業生産法人「株式会社FARMENT」を2017年に設立した。

▲囲炉裏を囲んで自分たちが育てた食材と醸したビールを楽しむ。まさに「ごちそう」だ

 

5月の連休にプレオープンイベント開催

醸造所の稼働にあたっては、中山間地ならではの障壁もある。
富士の湧き水を仕込みに使用するための浄水処理システムや醸造設備を搬入し、3月下旬に発泡酒醸造免許を取得。初となる自社醸造ではスタンダードなペールエールを仕上げた。
ビールは地元の祭事や、朝霧高原で開催されたキャンプフェスなどで提供を始め、好評を博している。おつまみはもちろん、地元の山で捕獲したジビエだ。

▲手作りのブースにはペイントした鹿の角や木材が飾られ、ワイルドな雰囲気たっぷり

▲地元の木こりの協力を得て、内装や外装に富士宮産のスギやヒノキを使ったテイスティングルームも完成

そして5月の連休中に、いよいよ一般客を招いた蔵開き、プレオープンを迎える。


■プレオープンイベント情報
日時:5/4(金)~ 5/6(日) 11 : 00 〜 18 : 00
場所:FUJIYAMA HUNTER’S BEER BREWERY
住所:静岡県富士宮市大鹿窪1428-1(アクセスは末尾のブルワリー情報参照)
※5/5、6はJR身延線「西富士宮」駅より無料往復送迎あり
内容:3種類のハウスビールのほか、富士宮産食材を使ったバーベキューやジビエ料理、生バンド演奏など。詳細はお問い合わせください。

ハウスビールは「Mt. Fuji Ale」スタイル:ペールエール、「年貢 IPA /NENGU IPA」スタイル:ハイブリッドIPA(自然農法の地元産コシヒカリを使ってベルジャン酵母で発酵)、「立夏/RIKKA」スタイル:アメリカンウィート(自家製大麦、小麦、ホップ使用)を予定している。さらに、4/30(月)までに公式FBのイベントページで参加表明をすれば試飲1杯無料となる。

▲ハウスビールと一緒に、富士宮産食材やジビエバーベキューが楽しめるプレオープン

とても魅力的なイベントだが、一方で気になるのはアクセスだろう。
新東名の新富士ICから車で約30分、ハンドルキーパーがいる場合は問題ないが、公共交通機関を利用する場合はあらかじめ計画を立てた方がスムーズに動ける。

最寄り駅はJR身延線「西富士宮」駅。
JR東海道線「富士」駅から身延線に乗り換えて約20分、駅からの路線バスは数時間間隔で土日・祝祭日は1日1本や運行がない場合もあるため、基本的にはタクシー利用をおすすめしたい。「西富士宮」駅からならタクシーで約20分、2千円程度だ。一駅手前の富士観光拠点「富士宮」駅なら規模も大きく、常駐タクシーも多い。富士宮市街で宿泊する場合は、ブルワリーから代行業者を呼ぶこともできる。車中泊、キャンプも可能だ(宿泊希望の場合は事前に問い合わせを)。ちなみにウォーキングが苦でなければ西富士駅から1時間半かけて歩く方法もある。富士山を間近に見ながら、新鮮な空気をめいっぱい吸って歩くのもいいかもしれない。
※5/5(土)、5/6(日)のみ「西富士宮」駅発の無料往復送迎あり。スケジュールは公式FBで確認を。

【FUJIYAMA HUNTER’S BEER BREWERY】

※検索窓に位置座標「35.254551,138.561642」または「フジヤマハンターズビール」と入力。

 

農泊や直営レストラン開業を目指すクラウドファンディング

アクセスの難点は、裏返せば手つかずの自然に囲まれている証。

▲「麦秋」、収穫期を迎えた初夏には黄金色の穂がたなびく大麦畑が広がる

とはいえ、秘境というわけではなく市街地から8㎞ばかり離れた農村だ。
富士宮市街地に宿をとれば富士山周辺観光もかねて楽しめるし、できれば、泊りがけでじっくりこのエリアを堪能してもらいたい。1泊では到底足らないほど、富士山麓には魅力的なスポットが山ほどある。徒歩圏内にはAirbnb登録の民泊も利用できる。

現在、深澤氏は遠方からのアプローチが少しでも楽になるような計画を進めている。
近隣の古民家を利用して農業体験もできる「農泊」や、ユネスコ世界文化遺産に登録され、登山客や観光客が大勢訪れる富士山本宮浅間大社周辺に、地物食材の料理とビールが楽しめる直営レストランの開業を目指している。アクセスしやすい場所に直営タップルームをつくることで、少しでも多くの人々に「FUJIYAMA HUNTER’S BEER」や柚野を知ってもらい、100%富士宮産ビールや豊かな環境資源を活かした体験で、日本人が本来あるべき自然な生き方や、身近な自然を受け継ぐことの大切さを・価値を伝えることが目標だ。
さらに瓶詰め用機械や、間伐材や端材など木質性のものなら何でも燃料にできる「薪ボイラー」の設置資金調達のために、クラウドファンディングを開始した。

【Makuakeクラウドファンディング特設ページ】
「富士山麓の素材100%でつくる!四季のうつろいを楽しむクラフトビール」

リターンは試飲無料チケット1枚+ボトルビール1本がつく5千円から。
シーズナルビールとジビエや旬野菜のおつまみがついたコース(3万5千円)や、畑に植えたマイホップを使ったビールを楽しめるコース(5万円)、ビール飲み放題の5名分ジビエパーティ(20万円)まで多彩。プロジェクトが実現すれば、「FUJIYAMA HUNTER’S BEER」がぐっと身近に感じられるだろう。

▲リターン一例。支援額に応じて富士宮の恵みとビールが味わえる

自然に寄り添ってつくる、富士宮産100%のビール。
富士の恵みと、そこで生きる人々の魂のこもった地の「ごちそう」は、ぜひ現地に来て五感で味わってもらいたい。

▲まさに畑から直送のビールだ


■ブルワリー情報

株式会社FARMENT
「FUJIYAMA HUNTER’S BEER」
住所:〒419-0303 静岡県富士宮市大鹿窪1428-1(Googleマップの位置座標「35.254551,138.561642」)
電話:0544-66-0399
営業時間:11 : 00 ~ 18 : 00 ※不定休のため営業時間は公式HPやFBページでご確認ください。
アクセス:車の場合は新東名高速道路「新富士」ICより約30分。
公共交通機関の場合はJR身延線「西富士宮」駅、または「富士宮」駅からタクシーで約20分(約300m西にJA富士宮柚野支店、ヤマザキYショップ柚野遠藤昭次商店あり)。路線バスの場合は、富士急静岡バスで上柚野行き「道下橋」下車徒歩200m
※バスは運行本数が少ないため事前に運行表でご確認ください。
メール:info@farment.co.jp
公式HP:http://farment.sakura.ne.jp/
公式FB:https://www.facebook.com/FUJIYAMA-HUNTERS-BEER-117285299076937/


■プレオープンデー情報

日時:5/4(金)~ 5/6(日) 11 : 00 〜 18 : 00
場所:FUJIYAMA HUNTER’S BEER BREWERY
住所:静岡県富士宮市大鹿窪1428-1
※5/5(土)、6(日)はJR身延線「西富士宮」駅より無料往復送迎があります。
内容:3種類のハウスビールのほか、富士宮産食材を使ったバーベキューやジビエ料理、生バンド演奏など。
詳細はお問い合わせください。

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いよいよ明日開催!《JBJA主催イベント》
「世界に伝えたい日本のブルワリー (通称:セカツタ2018)」
2018.4.28(土)@ベルサール高田馬場大ホール
☆チケット購入者にはテーブルとイスがご利用いただけます。
同時開催中の新酒解禁祭りで購入したビール・食事の持ち込み自由。
チケットサイトはこちらから(前売券1,900円・当日券2,000円)
※前売券の販売は4/27(金) 23:59まで
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この記事を書いたひと

山口 紗佳

ビアジャーナリスト/ライター

1982年愛知県出身、静岡県在住。中央大学法学部法律学科卒業。
名古屋で結婚情報誌制作に携わった後、東京の編集プロダクションで企業広報、教育文化、グルメ、健康美容、ライフスタイル、アニメなど多媒体の制作経験を経て静岡でフリーライターに。休日はグラウラーを積んでオートバイでツーリング。猛禽と赤も好き。

実績:『世界が憧れる日本酒78』(CCCメディアハウス)、『東京カレンダー』(東京カレンダー)、『ビール王国』(ワイン王国)、グルメ情報サイト『メシ通』(リクルート)、ダッシュエックス文庫(集英社)各種ツール制作

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