[ビアバー,ブルワー]2018.7.26

CAFE CLUB KEY 鹿島田の英国パブ~風上の面影と、懐かしいけれど新しい風~

CAFE CLUB KEYCaghiya Brewery鍵屋醸造所風上麦酒醸造鹿島田

ビールに愛された皆さまへ。JR鹿島田駅、あまり有名な駅ではないかもしれませんが、神奈川県川崎市の中心、JR川崎駅から南武線で3駅目の、比較的開けた街の駅です。徒歩圏内に横須賀線・湘南新宿ラインが乗り入れる新川崎駅も隣接することから、この二つの駅の周辺にはバブル期からの高層のタワー型マンションが建ち、都内や川崎・横浜エリアに勤める働き盛りの世帯からの支持が厚いのです。またその住みやすさと(都内・横浜などのエリアと比較すると)ある程度購入しやすい立地であることから、近年も続々と大型マンションの建設が続き、若い子育て世帯も増え続けている人気エリアです。

英国パブを目指して

今年6月、JR鹿島田駅から徒歩1分の場所に、英国スタイルのビアパブがオープンしました。店の名前はCAFE CLUB KEY 鹿島田店。駅の改札を出て、まっすぐ進んだデッキからの階段を下りると川崎街道に出るのですが、その1本手前の細い商店街の小道を入って数軒目。ガラスの扉を開くと、ダークカラーのカウンターに赤いシックな壁紙、どこか懐かしさを覚えるような落ち着いた雰囲気の店内。きれいに磨き上げられたタップの並ぶカウンターから、店長の佐藤氏がにこやかに迎えてくれます。

オーナーで店長の佐藤学氏。柔らかな物腰の素敵な紳士です。

1Fはスタンディングのカウンター、広々とした2Fはテーブル席になっていて、一人でもグループでも楽しめるようになっています。1F手前のショーケース冷蔵庫にサンドイッチなどが並び、カウンター席の手前でドリンクやフードをオーダーし、キャッシュオンで支払いを済ませます。
都内のクラフトビールを置くビアパブやバーに比べると、こちらは比較的お手軽な価格でビールが楽しめます。それも魅力の一つです。細身のレディースサイズのグラスで、全部のオリジナル銘柄を試すこともできます。

豊富なサイズ展開が嬉しいですね

1Fのカウンター。夜ともなるとズラリとお客さまでいっぱいになります画像提供:(株)KEY CORPORATION

広々とした2F席。画像提供:(株)KEY CORPORATION

この二つの店舗を運営する(株)KEY CORPORATIONの代表でもある佐藤 学氏は、2006年からの4年間、音楽活動のために英国に滞在していました。その期間、毎週のように開かれる音楽イベントなどに出演しながら、英国のパブ(パブリック・ハウス)の文化に触れたことから、英国市民のよりどころとなり、気軽に訪れて交流を楽しめるパブを、ぜひ日本でも作りたいという思いが、CAFE CLUB KEYを開くきっかけとなりました。

まずは2016年7月に新川崎駅からほど近い北加瀬にCAFE CLUB KEY(現新川崎店)をオープン。佐藤氏の目的の一つだったパブは、順調に近隣住民に受け入れられ、いつも常連客でにぎわう交流の場となります。そして今年2018年5月、隣の店舗部分を引き継ぎ、店舗の増床の改築に踏み切ります。およそ倍の面積になるリフォーム工事は、なんとスタッフに加え、常連客の皆さまの手伝いも加わり、素晴らしいチームワークでのDIYによって成し遂げられました。
そして、6月の鹿島田店のオープンも同様に、多くの常連客が名乗りを上げて改装に手を貸したというのです。地元のコミュニティの場として、それだけの求心力があったということですね。これこそ、「地元のパブ」という感じがします。

佐藤氏の夢はパブを根付かせるということだけではありませんでした。地元で生まれたビールをお客さまに楽しんでもらいたいという気持ちから、地元産のビールを自分たちの手で作りたいという、ビール醸造への道も探り続けていたのです。
そんなとき、すぐ近隣の南加瀬にあるビール醸造施設が閉鎖になるという話が出たときに、迷いなく手を挙げました。もともと大手食品加工会社での勤務の経験もあった佐藤氏は、ビール醸造所を受け継ぐに相応しい人物、かつての職場仲間であった高田淳一氏に白羽の矢を立てます。

鍵屋醸造所の始まり―Caghiya Brewery-

醸造長である高田氏は、もともと化学系で細菌学を研究されていて、食品衛生についてはエキスパートでした。酵母の管理や雑菌の繁殖をおさえる衛生管理などは、まさにお手の物。とはいえ、初めてのビール醸造の仕事に就くのは大変なことだったはずですが、醸造所の先代オーナーである田上達史氏の指導のもと、醸造所の規模や設備を活かし、醸造の腕を上げていきます。そして、鍵屋醸造所らしさを出せるビールを作り出すまでに至ったのです。

笑顔の優しい醸造長の高田氏。お話しも楽しく、明るくノリの良いお人柄!

レディースサイズであれば、全部試せますね!

田上氏といえば、ビアギークであれば知らぬ人はいない、あの風上麦酒醸造の有名ブルワーです。風上麦酒製造は「月下の願い」「慢性的賛歌」「崇高な侵略者」「無意識の承認」など独創的な銘柄を発表し、初めて出会う味わい・鮮烈な香りに衝撃を受けたビールファンを次々と虜にしていきました。イベントを開けばいつも満員御礼。気さくなお人柄で、元塾講師らしい語り口と説得力のある話でファンとのビール談義を熱く楽しく盛り上げてくれて、地道に彼の作るビールと彼自身のファンを増やしていきました。これから日本中に、そして世界へも羽ばたくブルワリーに成長していくであろうと、皆の期待がはちきれんばかりだったのですが、2017年も終わろうという頃、田上氏の体調不良を理由に風上麦酒醸造の閉鎖が発表されました。ファンの落胆は激しく、福山雅治が結婚を発表したときの日本中の独身女性やなぜか主婦層にまで広がったロス感、それ以上と言ってもいいほどの悲嘆に包まれたのでした。時を同じくして販売された限定のクリスマスエールを飲むために、ファンはタップのつながったビアパブに駆け込み、田上氏の体調のこともありボトルでの販売本数も少なかったため、数少ない取扱い店舗では「おひとり様1本まで」と販売制限がかかるほどでした。

その田上氏の指導により、高田氏は鍵屋醸造所で、風上の銘柄のイメージをそのまま継承したポーター、ジンジャーの香りが特徴的なエール、そして伝統的なスタイルであるイングリッシュIPAや小麦を使ったウィートエール、そしてブリティッシュエールを醸造していきます。
やはり違うブルワーが作り出すだけあり、継承したレシピの微妙な変化もあると思うのですが、風上麦酒製造の「慢性的賛歌」(ジンジャー)や「無意識の承認」(ポーター)とはキャラクターが幾分変わるのです。面影はあるけど、違う人。まるで、お母さんとそっくりに育った娘さんに出会ったような気持ちになります。そっくりなようでいて、清楚で清潔感のあるきれいな味わい。神道で例えるなら風上麦酒製造が一柱の神の荒魂であり、私たちのビールへの価値観を多いに揺るがした一方、同じリソースから派生したにもかかわらず、同じ神の和魂の部分を持つような鍵屋醸造所のビールは優しくこの地に根を下ろす、違う個性の新しいビールなのです。
風上ロスが抜けない方も、次世代の期待大な新しいビールを味わいたい方も、是非ともCAFE CLUB KEYで鍵屋醸造所のビールを味わって頂きたいです。

音楽とパブ

パブでの過ごし方は人それぞれですが、特記すべきは「それぞれ」ということです。ヨーロッパやアメリカなどを旅行すると、レストランやバーなどでチップを渡す文化に戸惑う日本人が多いと思うのですが、(私などはウエイターに手を出されるまで気づかなかったことがあります。ダメですね。)パブはキャッシュオンで支払い、チップが不要です。そしてスタッフが次の注文を取りに来ることもありません。1パイントのビールを、時間をかけてじっくりと味わいながらおしゃべりを楽しんだり、音楽に耳を傾けながら物思いにふけったり、読書をしたり、その空間にいることが目的、といっても過言ではないでしょう。とても贅沢な過ごし方ですね。同じお酒を楽しむ空間であるバーという業態とは、まったく異なるものなのです。
そのパブ文化を日本でも根付かせたい、という佐藤氏の思いを具現化したCAFE CLUB KEY は、人々の憩いの場として、鹿島田の街にこれからなじんでいくことになるはずです。
人々の憩いの場であるパブ自体が、関わりの「鍵」であることを願ってつけられた店名であるCAFE CLUB KEYと鍵屋醸造所。このお店に入ったことが鍵となり、友達との話題が広がったり、ビールの世界が新しく見えてきたり、見知らぬ人との会話が始まったりすることでしょう。

ビールもさることながら、そのほかのアルコール類、ソフトドリンクも充実しており、お料理ももちろん評判の味です!画像提供:(株)KEY CORPORATION

オーナーの佐藤氏がミュージシャンだったこともあり、CAFE CLUB KEY は音楽の似合うパブです。私が訪れたとき、マイケル・ジャクソンの曲を流してくれていたのですが、じっくり聞いているわけではないけれど、ふと知っている旋律が流れたときに、「あ、この曲は・・・」と会話のきっかけになるぐらいの心地よいBGMになっていました。(私が最初に「MJです!」と名乗ったので、それに合わせてくださったのです。お気遣いに感謝!)
英国のバンド、オアシスをご存知でしょうか。風上麦酒醸造所のビールを音楽に例えると?と佐藤氏にお伺いしたところ、このバンド名が出ました。また、高田氏に鍵屋醸造所のビールをバンドに例えと?とお伺いしてもオアシスの名前が出ました。お二人とも、共通の何かを感じているようですね。
洋楽好きなら必ず通るといわれる英国の国民的ロックバンド、オアシスのおさえておきたいメジャーな曲は「Rock’N’Roll Star」「Don’t look back in anger」他多数。ネットで「オアシス 代表曲」と調べると、「おすすめ10曲」「同30曲」などと出てくるので、オアシスファンも絞り切れないほどの多数の名曲揃いのようです。

今後のCAFE CLUB KEYと鍵屋醸造所

今後の展望についてお伺いしたところ、ビールだけではなく、サイダーも扱っていきたいとのこと。リンゴ酒のことで、英語だとcider、フランス語でcidreですね。たしかに、サイダーもクラフトとして注目のお酒で、ビアファンでサイダー/シードルにも手を伸ばしていく人も多いと聞きます。そんなファンにとっては嬉しい展開ですね。
また、佐藤氏が音楽活動で培ったロンドンとのつながりをビールでも持つことができればと、英国のとあるブルワリーとのコラボなども計画されているとのこと。
今後のCAFE CLUB KEYと鍵屋醸造所から目が離せませんね。

CAFE CLUB KEY

鹿島田店
神奈川県川崎市幸区鹿島田1-19-7
044-280-7905
営業時間
ランチ  11:00~13:30
ディナー 17:00~23:30
定休日 日曜日

新川崎店
神奈川県川崎市幸区北加瀬1-26-30
044-223-8061
夜のみ営業 17:00~22:00
定休日 火曜日

URL:http://keycorporation.co.jp/

参考文献:「ビール王国 Vol.9 ビールとパブの本場 イングリッシュ&アイリッシュ大特集」
トップ画像:提供(株)KEY CORPORATION

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この記事を書いたひと

松原 順子(MJ)

ビアジャーナリスト/ライター

ビールと昆虫と、リコーダーと天然石が大好きです。JBJAではイベントサポートやBJAチューターも楽しんで取り組んでおります。人に寄り添う記事作成を心がけ、JBJA公式動画サイトJBJAchannelではMCを担当しております。

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