[コラム,ビアバー,ブルワー]2019.2.28

オーストラリアのブルワリーを訪ねて – Bridge Road Brewers 編

オーストラリアクラフトビールネッドケリービクトリア州ビーチワースペールエール

ここ数年、オーストラリアを定期的に訪れる機会があり、訪問の度に様々なオージークラフトビールと出会えることを楽しみにしている。オーストラリアは、元々、英国の影響が強く受けているためパブ文化が根付いており、ビール消費が多い国である。一方、クラフトビールについての歴史は比較的新しいとされるが、最近のクラフトビール熱は特に高く、ブルワリーが年々急増しているそうだ。

今回紹介させていただくBridge Road Brewersは、ビクトリア州のビーチワースに拠点をおくオーストラリアを代表するクラフトブルワリーの1つである。

bridge road brewers entrance

ビーチワース中心部の通りからみたBridge Road Brewersのエントランス

ビーチワースは、ビクトリア州の州都、メルボルンから車で約3時間ほど内陸に位置し、州の中では人気の観光地である一方、周辺に多くのワイナリーやホップ農園が存在する。筆者が数年前に初めて飲んだオージークラフトが、Bridge Road Brwersの代表的な銘柄「Beechworth Pale Ale」で、今もその絶妙なホップのアロマと口当たりの良さを記憶している。

bridge road brewers bottle

定番の「Beachworth Pale Ale」と「Little Bling」

Bridge Road Brewersの本拠地ビーチワースにて創業者のBen氏に話を伺った。

ワイン醸造の勉強の予定が、ヨーロッパでビールの虜に

bridge road brewers Ben

創業者のBen氏

筆者: クラフトブルワリーを始めたきっかけを教えていただけますか?

Ben氏: 私はビーチワースで生まれて育ち、高校を卒業後、地元のワイナリーで仕事をしました。その後、ワインづくりを本格的に勉強するためメルボルン大学に入学しhorticulture(園芸)とviticulture(ブドウ栽培)と醸造を専攻しました。学士課程が終わった後に、友人とドイツを中心としたバックパック旅行をしました。ビーチワースのワイナリーで働いている友人がドイツのリースリングワインの産地であるモーゼルバレー出身でもあったので、旅先で訪問しワインビンテージの勉強もしました。その後、オーストリア(注意:オーストラリアではありません)のスキーリゾートで冬の期間働いたりしながらオーストラリアとヨーロッパを2年ほど行き来する生活を送っていました。

ヨーロッパから戻ると、オーストラリアのビール銘柄が、VB、メルボルンビター等、バリエーションが少ないことにいつもガッカリしていました。ヨーロッパに行くたびに様々なビールを楽しむことができるのに「どうしてオーストラリアのビールが面白くないのか?」。ヨーロッパでは、妻の出身地でもあるオーストリアのインスブルックに滞在し、現地のブルワリーで週に1日働き始めました。そこでは、チェコビールやたくさんの種類のヨーロッパのビールを学ぶことができました。その経験から、オーストラリアに戻って、地元ビーチワースでビールを作ることを決心しました。

少ない資金で実家の物置小屋で始めたビールづくり

bridge road brewers inside the brewery

この場所で醸造開始してから早14年、今も定期的に設備を増強している

Ben氏: 当時24歳だった私は、少ない資金で両親の土地にあった物置小屋を借り、1000リットル(10ヘクトリットル)の醸造設備を作り始めました。現在のブルワリーから400mほど離れたブリッジロード沿いの端と滝の近くでした。その1年後には、現在の場所に移転して14年程になります。この場所に、醸造設備とバー、レストランがあり、現在流通しているビールは全て、この設備でつくっています。今も、定期的に設備投資を行っており、来月にはイタリアから新しいボトリングの設備が到着する予定です。

世界有数のホップの産地で新鮮な地元の素材を使ったビール

bridge road brewers hop farm

ビクトリア州は世界有数のホップ産地,ビーチワース周辺を散策すると必ずホップ農家と遭遇する(photo by Bridge Road Brewers)

筆者: Bridge Road Brewersの特徴、ユニークな点について教えていただけますか?

Ben氏: 一つは、ビーチワースで醸造していることです。周辺がオーストラリアの有数なホップ産地でもあることもあり、特に地元の素材を使ってビール作りを行っています。ちょうど今、近所のチェリー農園から戻ってきたところです。とれたてのチェリーを使ってクリークを作る予定です(※1)。私たちは、毎年この時期にクリークを作っています。また、午後には、ビールに使う100kgのラズベリーをとりにラズベリー農園に行く予定です。このように地元の素材を使ったビールを作り続けています。さらに、ホップは主に周辺地域で取れたものを使っています。種類は、世界的にも知名度が上がったオーストラリアのホップ、ギャラクシーをはじめ、VICシークレット、エニグマ、O16などを使用しています。

また、この2年ほどMayday Hillsというラインアップで、アメリカンオーク樽を使ってビール発酵を行っています。世界初ではありませんが、オーストラリアのクラフトビール界では、ユニークな試みだと思います。
※1:筆者の現地知人曰く、チェリーはピックアップして2-3日で消費しないと鮮度が落ちるそうです。

bridge road brewers cherry

地元でピックアップした新鮮なチェリー、年一度つくられるクリークに使われる

mayday hills bottles

アメリカンオーク樽を使って発酵させたMayday Hillsシリーズ

国民的な人気者、Ned Kellyと共にオーストラリアを代表するクラフトビールに

筆者: Bridge Road Brewersの「ROAD」の「A」の部分が被り物をした人のように見えますが、これは何かの象徴でしょうか?

Ben氏: この「A」は、オーストラリアでは非常に人気のあるNed Kelly(※2)を象徴しています。ビーチワースの地名は、オーストラリアで皆が知っているわけではありませんが、Ned Kellyはオーストラリアでは広く知れ渡っています。また、Ned Kelllyはビーチワースにゆかりのある人物でもあるので我々のアイコンとして使っています。正直良いマーケティングツールにもなっています(笑)

bridge road brewers logo

Bridge Road Brewersのロゴ,「ROAD」の「A」に注目

Ben氏: 実は、Ned Kelllyと日本との関わりがあるのを知っていますか?

筆者: えー、そうなんですか?知りませんでした。

Ben氏: Ned Kellyが来ていた鉄のよろいは、日本に関係があるようです。肩の部分と、スカートになっている部分は、昔日本の侍が来ていたよろいに由来するようです。ビーチワースは、ゴールドラッシュの時代から中国からの移民が多く、中国人コミュニティが発達していました。その移民たちが日本から侍の鎧を買ってオーストラリアに持ち込み、Ned Kellyたちはそれを模して鉄の鎧を作ったそうです。

※2 Ned Kellyは実在した最も有名なオーストラリアのブッシュレンジャー(アウトロー)である。強盗を続けるものの、その対象は権力者であり貧しい人々には手を出さないなど、紳士的に振舞っていたといわれている。オーストラリア国民からは人気が高く、その生涯は小説や映画化されている(映画の主演はなんとRolling Stonesのミックジャガー)。

Ned Kelly armor

Bridge Road Brewersのロゴに使われているNed Kellyの甲冑(実物: ビクトリア州立図書館所蔵)


今回は、ビーチワースを訪れてBen氏に貴重な話を伺うことができた。メルボルンの酒屋に行くと必ずBridge Road Brewersのボトルが目に入る。それなりの規模の製造ライン、また、それを運営する企業的なイメージしていたが、家庭的な温かのあるフレンドリーなブルワリーだった。また、Ned Kellyと日本にまつわる話も興味深かった。Ben氏は今も生まれ育ったビーチワースの街で、地元の素材を使ったビールを作り続ける。そんなインディペンデントのクラフトブルワリーが多くのファンに愛され続ける理由がわかった気がする。

オーストラリアを訪れるビール好きには、是非オススメしたい。

bridge road brewers - beer glass

ブルワリー併設のタップルームで頂いたBeechworth Pale Ale

<ブルワリー & 店舗情報>

ブルワリー併設のレストラン。室内外で名物のピザとともにビールを楽しめる

Bridge Road Brewers
住所:Old Coach House Brewers Lane,50 Ford Street Beechworth, Victoria 3747, オーストラリア
電話:+61 3 5728 2703
営業時間:ブルワリー:11am – 10pm / ランチ 12 – 3pm / ディナー 5:30 – 8:30pm
公式ホームページ

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モリイクオ (ikuo mori)

この記事を書いたひと

モリイクオ (ikuo mori)

ビアジャーナリスト / Beer journalist

大阪市出身。世田谷区在住。ビアジャーナリスト。
学生時代に滞在した北米やヨーロッパで初めてピルスナー以外のビールと出会う。まだ見ぬビールの世界があると思うとワクワクする。主に旅先で出会ったビールを紹介している。

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