[コラム,テイスティング,ブルワー]2019.3.6

「ビールはアートだ!」自由でフレキシブルなビール作りを。:NORTH ISLAND BEER

NORTH ISLAND BEERクラフトビールブルワリー北海道江別

北海道江別市。札幌市に隣接のこの市は、明治時代からレンガの産地として有名で現在でも国内のシェアは80%ほどとも言われます。また鉄道や高速道路が発達し北海道での交通利便が良く、札幌のベッドタウンとして人口が増加する地でもあります。

そんな江別市にあるブルワリーが「NORTH ISLAND BEER」です。

今回ヘッドブルワーの多賀谷壮さんより工場見学とお話をお伺いする機会をいただくことができました。

~ビール作りを学びにカナダへ~

多賀谷さんは元々、カナダの醸造設備を輸入し醸造家を目指す方にコンサルティングする企業に勤めていました。その中でお客様に技術的なサポートをするため、ビール作りを学びにカナダへ行くことに。

「ビール作りを学ぶためだったので就労ビザが降りず、観光ビザで入国していました。最初は3ヶ月、その後数ヶ月スパンでお客様を案内したり、設備の買い付けに行ったりと、カナダと日本を行ったり来たりしていました。」

「私が学びに行っていたのはバンクーバーの方で当時クラフトビールが盛んな地域でした。地元のリカーショップに1つのブルワリーでも3種類、多いのだと5~10種類くらいあって、非常に新鮮でしたね。

小さい工場で勉強させてもらっていたのですが、仕込み回数が非常に多いんです。日々いろんなビールを仕込んでいたので、その日に作ったビアスタイルを覚えては、リカーショップに行って同じスタイルのビールを何本か買って飲んでみました。でもそれぞれ味わいが全然違って、原料や仕込み方によってこんなに違うんだと日々発見と勉強の繰り返しでした。」

当時日本ではまだ大手ビールやハイネケン、ギネスといった海外ビールが主流だった時代。カナダのマイクロブルワリーでは様々なビールスタイルを知るきっかけになったそうです。

そんなカナダでの修行時代に恩師より「Beer is Art」という教えをいただきました。

「仕込みの量が少ない分、毎日ビール作りに携われたので、普通の人だと5、6年はかかるくらいの知識とスキルを短期間で習得できたことは非常にメリットでした。

もちろん英語なんて全然喋れなかったので、その分『グラム』や『リットル』など一生懸命数字を聞いてメモしていました。全然聞き取れなくて何度も聞き返したりすることもしばしば。その時、師匠に『ビール作りは算数じゃない、アートなんだ。』と言われたんです。数字とか細かくとっても意味はないから、まずは感じてみろ、そこから掘り下げるんだ、と言われてこれはすごいなと感じましたね。

実際ビール作りはサイエンスなんですけど、師匠は科学的な基礎ができた上で、最終的に表現するのは人の感性だと、教えてくれたんです。

だから人の想いとか考えを今でも大事にしています。いろんなものを試そう、変えてみようと、飽くなき欲求が出てくるんです。」

ラベル裏面にも書かれている「ビールはアート」の文字。人の想いを具現化するためのサイエンスであって、最終的には人の感性=アートがあるから面白い、という考えが非常に印象に残りました。

~カナダの技術を北海道で~

ビール作りを学び帰国後に大きな転機が多賀谷さんに訪れました。

カナダで学んだことを元に独立しようと思っていた中、脱サラして起業したいという方から、一緒に北海道でビール作りをしたいとオファーがかかったのです。

こうして2002年5月に「(有)カナディアンブルワリー」を起業。翌年2003年3月より醸造を開始しました。

札幌東区の倉庫を改築した醸造所で、工場というよりは工房のような小さな規模だったそうです。そこに併設された小さなビアホールでは「ラガー」「エール」「スタウト」の定番3種と限定品を販売していました。

「日中はビール作りと営業、夜はビアホールで厨房に入って接客してました。人を雇う余裕はなくて、あの頃はがむしゃらにやっていました。」

その後、ビールの評判が認められていき、ファンが増えていくにつれ、醸造設備を増やすために新工場を設立する運びとなります。

そして2009年、江別市に1000リットルの醸造設備を導入した新工場を設立。地元の麦を使いたい構想が以前からあったことから、麦栽培など農業が盛んな江別市に白羽の矢が立ったとのこと。

首都圏でのクラフトビール展開から名称も「NORTH ISLAND BEER」に変更し、その名を日本中に広めていくのでした。

~ビールって自由でフレキシブル~

NORTH ISLAN BEERのレギュラービールは6種類。

カナディアンブルワリー時の3種を「ピルスナー」「ブラウンエール」「スタウト」としてリニューアル。限定品で人気のあった「IPA」「コリアンダーブラック」、地元江別産の小麦を使いたい思いから「ヴァイツェン」をレギュラー化し6種類になりました。

「カナダは歴史としては新しい国なので、ビールはドイツのものやチェコ、ベルギー、イギリスといろんな国のスタイルがあったんです。ビールの歴史が浅い分、決められたビールを作らなければならないと言った制約がなく、様々なスタイルを自由に作れたんでしょうね。

コリアンダーブラックは「黒ビールにコリアンダーって珍しいスタイルだね」とよく言われるのですが、コリアンダーを入れることに抵抗はありませんでした。

カナダで勉強していた時は、蜂蜜でもクローブでも何でもかんでもビールに入れていて、ビールはこうじゃなきゃダメっていうのがなかったんです。

ベルギーの白ビールに使われているコリアンダーを黒ビールに使ったら美味しいんじゃないかなって入れたのが始まりなんですけど、美味しいもの同士を掛け合わせたら美味しくなるかもって思うのは当たり前の感覚なんですよね。縛りがないフレキシブルなビール作りを勉強できたという意味で、カナダで学べたのは良かったなと思います。」

レギュラー以外にも限定ビールも醸造しています。流行りのスタイルや社員の意見交換から出たアイデアを元に月1、2種ほど作っているそうです。

取材時には限定ビール「NIGHT ATTACK(夜襲)」をいただきました。

10年ぶりにリリースのバーレーワインスタイルとのこと。アルコール9%とは思えないほどの軽やかな飲み口で、完熟した果実のような甘みが口いっぱいに広がります。しかしぐいぐい飲んでるとアルコールが後から襲ってくる、まさに夜襲の名にふさわしい逸品でした。

「NIGHT ATTAK」

ABV:9.0%

IBU:10

Style:Barley Wine

ワインの様な風味と甘味の高度数エールですが、重すぎなくついつい飲み進めちゃう危険なビール。

リングウット酵母とワイン酵母のハイブリットによる複雑なエステルとアルコールの香り、アフターにかすかなナッツ香を感じさせます。

カーボネーションは低めに設定しており、温度が少し高く温くなった頃に香りがピークとなります。

ぜひワイングラスやゴブレットで香りとアルコールをお楽しみ下さい。

※Facebookより引用

「今回のビールもそうですが、こう言った限定ビールは社員と話して生まれたアイデアを元に作っています。私もビールについて一生懸命アンテナを広げているつもりですが、若い人に比べるとパターン化もしてきてしまうので新しい考え方は非常に大事にしています。

NORTH ISLAND BEERはあくまで企業なので、私が退いた後でも会社としてブランドとして残す使命があります。会社としての大きな枠を残しつつ、次の世代につなげるために若い社員には今のうちから積極的にビール作りに携われる環境を作っています。時代とともに変わっていくので、新しいものをどんどん生み出してつなげていきたいです。」

~地域に根ざした企業へ~

最後にこれからのNORTH ISLAND BEERについて伺いました。

「自分たちが納得できるものを提供していくことが一番だと思います。日々苦労することは絶えませんが、やはり一人一人のお客さんから美味しいねって評価してくれた時が一番嬉しいんです。イベントに行って大ファンなんですよって言ってもらえると、顔が知らない人でもこんなに喜んでもらえるなんてと励みになります。そういった方達のためにも自分たちが納得できる美味しいものを作っていきたいですね。」

また江別市で今後取り組みたいことについてもお話いただきました。

「江別市って農業が基幹産業の一つなので、今は小麦だけですが、大麦を原料にしたり製麦したり、あとはホップもぜひ使っていきたいですね。若い農業、農家している人たちにそういうお話をして、地元に密着して地元の原料で作って地元の人に飲んでもらう。もちろん成功してやっていらっしゃるところもあるんでしょうけどまだ僕らはできていないので、遅ればせながら少しづつ実現に向けていきたいなって感じですね。

地域ともっと連携して、江別市になくてはならない企業として、ビールとしてもちろん全国シェアに続けていきたいですし、地元の企業として地元に歓迎されるようもっと大きくなっていきたいですね。」

地元でクラフトビールを広める取り組みとして、直営の店舗「Beer Bar NORTH ISLAND」を構えるほか、北海道のクラフトビールイベント「Sapporo Craft Beer Forest」も手がけています。共に札幌へ行く際には訪れたいビアスポットです。

北海道のクラフトビール文化の担い手として、今後も欠かすことのできない存在で居続けることでしょう。

「NORTH ISLAND BEER」これからも是非応援していきたいブルワリーです。

 

NORTH ISLAND BEER

【HP】https://northislandbeer.jp/index.html

Beer Bar NORTH ISLAND(直営店)

【HP】https://northislandbeer.jp/bar.html

〒060-0062 

北海道札幌市中央区南2条西4丁目10-1

ラージカントリービル10階

営業時間:〈月~土〉18:00から24:00 〈日〉15:00から22:00

(4月より定休日なしに変更になります)

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たしままなぶ

この記事を書いたひと

たしままなぶ

ビアジャーナリスト/ビアテイスター/ベルギービールアドバイザー

ビールと散歩がライフワーク。ビール片手に全国を歩き回っています。
旅先で出会った素敵なビールや、ビールがより美味しくなるような空間を伝えていきたい。
そんな思いで今日も『相棒』と一緒に歩き続けていきます。

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