[JBJA活動,コラム,ブルワー]2019.4.13

1人の人物との運命的な出会いから始まった物語。柔軟な発想で進化し続けるブルワリー【米沢ジャックスブルワリー】ブルワリーレポート

­   古くから城下町として栄え、伊達政宗や上杉景勝など、多くの偉人達によって文化が育まれてきた山形県米沢市。現在も当時の面影を残しつつ、吾妻連峰の雄大な景色と温泉が豊富に湧く自然の恵み豊かな地に、米沢ジャックスブルワリーは誕生しました。

・柔軟な発想で進化し続けるブルワリー

­  米沢ジャックスブルワリーは、JR米沢駅から車で20分ほどの距離にある農村地帯の一画で、醸造をおこなっています。醸造所はもともと民家であった建物を、代表の槙山 秀都さん自らの手で、内装と排水設備を整備して使用しています。敷地には民家をリフォームした事務所と、資材置場であった倉庫を改築した醸造所が併設されています。醸造所は木造2階建て、1階が醸造スペース、2階が麦芽の保管・粉砕をする作業部屋です。醸造スペースの入口となるガラス扉の前に立つと、まず正面奥に設置された3機の発酵タンクが視界に飛び込んできます。室内へ足を踏み入れると、すぐ右手に仕込窯があり、手前から奥に向かってスムーズに作業が進められるように、動線が整えられていることが分かります。内部から改めて全体を見渡すと、限られた設備の中で【より良いビールを造るにはどうすべきか】を突き詰めて、アイデアを凝縮した空間が広がっていました。

手前から奥に向かって、仕込み作業の動線が整えられています。

2階の作業部屋からは、内部が一望できます。

同ブルワリーでは、【ビール造りの工程における作業の効率化】を意識した創意工夫が随所になされています。仕込み窯の清掃や、麦芽の運搬に小型クレーンを活用するといった、一見するとビール造りとは縁がない機材を使用する柔軟な発想は、前職で培った機材の組み立て、解体、溶接などの技術と知識に基づいて考案されています。併せて、内装の設計には、ブルワリー在籍時代に新店舗を自身で1から作り上げた経験が活かされています。これまでも、機材を駆使した仕事を生業としてきた槙山さん。これからは、ビールを設計し組み立てる技術者として、様々な機材を活用して、思い描く理想のブルワリー像を追い求めて活動していきます。

仕込み窯をクレーンで釣りあげて、移動させます。

醸造に使用する機材にも、様々な創意工夫がなされています。

・1人の人物・1杯のビールとの運命的な出会いから始まった物語

­  槙山さんのビール造りは、1人の人物との出会いから始まります。2010年友人の紹介でjackson flisa(ジャクソン フィリス)さんと知り合い、ある時彼がアメリカで自ら醸造したビールを飲む機会がありました。そこで口にした、エールビールの味わいに衝撃を受けたことが、ビール醸造に興味を持つきっかけに。その日を境に、米沢市内のバーでクラフトビールを飲みながら、ビールが持つ多様性と面白さに魅了され、ビールを造ることへの想いが一層強くなります。そして、夢を実現させるために、単身東京のブルワリーパブで働きながら醸造技術を磨き、2018年地元米沢に念願のブルワリーを構えました。同年3月には酒類等製造免許(発泡酒)を取得し、6月から醸造を開始しました。1人の人間、1杯のビールとの出会いから、8年の歳月を経て実現した物語。そのきっかけを与えてくれた、ジャクソンフィリスさんに敬意を称して、ブルワリ-の名称には彼の愛称「ジャックス」が付けられています。

米沢ジャックスブルワリー 代表 槙山 秀都 さん

・ビールを通して地元の魅力を発信

­  米沢ジャックスブルワリーでは、より多くの飲み手に親しまれるよう「ドリンカブル」なビール造りを心がけています。初仕込みから一貫していた「ベーシックなスタイル」のビールに加え、最近では米沢産の「そばの実」を使用したペールエールなど、地域性を意識した副原料を加えたビールも提供しています。山形県はフルーツを含め、農作物が豊富な土地として知られています。今後は、四季折々の旬な味覚を加えた、同ブルワリーにしかできないビール造りにも期待が高まります。これからも、地域色豊かなビールを通して、ブルワリーはもちろん、山形県を知るきっかけ作りとして、日本全国へ魅力を発信していきます。

米沢ジャックスブルワリーでは、樽詰・瓶詰ビールを販売しています。

・おわりに

­  米沢ジャックスブルワリーでは、昨年Fresh Hop Fest2018 に参加し、2019年2月には東京都内の店舗でTap Take Overイベントが開催されるなど、醸造開始直後からその魅力が県外に広がりを見せています。直営店舗を持たない同ブルワリーは、今後も自社ビールの流通を通して、その想いを日本全国へ届けていきます。2019年3月を迎えて、酒造免許の取得から1年が経過しました。9年前にジャックスから伝えられた感動を、自身の手で広めていく活動はまだ始まったばかりです。これからどのような創意工夫でビールと向き合っていくのか、今後の活躍に注目していきたいと思います。

米沢ジャックスブルワリー
住所:〒992-1461 山形県米沢市李山5471
HP:https://jacks-beer.com/
FB:https://www.facebook.com/YonezawaJacksBrewery

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

神山 タクロウ

ホップ栽培コーディネーター/ビアテイスター

ビールが繋ぐ縁に魅せられて…日本全国旅ビール生活→岩手県遠野市でホップ栽培・ビール醸造を学ぶ。2021年からは同市でホップ栽培コーディネーターとして活動を開始。ビールの里 遠野からビール×農業の魅力を伝えます!【Japan CraftBeer Museum】の実現に向けて全力で!!

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