[JBJA活動,イベント,ブルワー]2019.4.11

「よく飲み、よく話し、よく笑う」対話を通して、日本のクラフトビールの未来について考える3時間。BEER DIALOGUE(ビアダイアログ)体験レポート

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­  ・「よく飲み、よく話し、よく笑う」対話を通して、日本のクラフトビールの未来について考える3時間

­  3月16日(土)東京都福生市にある石川酒造にて「BEER DIALOGUE(ビアダイアログ)」が開催されました。イベントのコンセプトは「ビールを飲みながら、醸造家とファンがそれぞれの立場で、みんな一緒にDIALOGUE(対話)を行う」こと。様々な意見を共有する、コミュニケーションの場を設けることで、お互いの理解を深めビールシーンを盛り上げていきたいという想いがあります。今回は老舗ブルワリー、地方ブルワリー、ナショナルクラフト、ブリューパブと規模や立場の異なる醸造家6名が登壇し、熱い議論が繰り広げられました。

­ 第一部は、醸造家同士が共通のテーマについて、第二部では参加者からの質問形式によるディスカッションが行われました。第三部は、参加者全員で大宴会。醸造家と直接対話する機会が設けられました。

参加ブルワリー 一覧
石川酒造(東京都):清水 秀晃さん
いわて蔵ビール(岩手県):佐藤 航さん
松江ビアへるん(島根県):矢野 学さん
SPRING VALLEY BREWERY(東京都):田山 智弘さん
Innovative Brewer(東京都):新井 健司さん
さかづき Brewing(東京都):金山 尚子さん

今回は老舗ブルワリー、地方ブルワリー、ナショナルクラフト、ブリューパブと規模や立場の異なる醸造家6名が登壇しました。

・会場は伝統ある酒蔵

­  会場となった石川酒造は、西暦1863年から続く酒蔵です。敷地内には、醸造所の他に資料館やレストランが併設され、酒蔵見学を通して五感でお酒を楽しめる場所となっています。また、本蔵をはじめ、所有している建造物6棟が国の登録有形文化財に指定されるなど、伝統的な酒造りの歴史を後世に伝えています。ビール醸造においても、明治21年2月から同年23年まで「日本麦酒」の名称でラガービールを販売した歴史を持ち、1998年からは自社ブランド「多摩の恵」を手掛けています。今回のイベントは、登壇者でもある同ブルワリーの清水さんと、ビアジャーナリストの木暮亮氏との会話の中で「造り手が集まってビールの未来について話し合う機会を作りましょう」というアイデアが発端となりました。

会場となった向蔵ビール工房。2階は木の温もりが溢れる素敵な空間が広がります。

・第一部 ブルワーディスカッション

­  ブルワーディスカッションでは、事前に質問したい内容について醸造家にアンケートを実施。3つテーマに対して、議論を行いました。醸造家の皆さんの経験談はとても興味深く、時に参加者へ訴えかける場面では、会場が白熱し、一体となる時間となりました。

【クラフトビールという言葉について】

いわて蔵ビール(以下いわて蔵)佐藤さんより、「1995年にビールを造り始めた時は地ビールと呼ばれていたが、近年クラフトビールという言葉の認知度が高まる中で、皆さんの中でクラフトビールという言葉をどのように考えているのか」という質問が投げかけられました。

佐藤さんは、「クラフトビールは手造り、職人が作るビールいるというイメージ。地ビールは、原材料や副原料を含めて、地にこだわってビールを造るイメージ」というご意見です。自身は、現在ビールイベント・プロジェクトを通して「地ビールは美味しい」を発信するための活動にも取り組まれています。

さかづき Brewing(以下さかづき)の金山さんは「造り手が見えること」と定義して、ブルワリーパブで日々飲み手と接する中では「味わいや香りが大手メーカーのビールとは違うもの。大手に対して個性のアピールとして、クラフトビールを捉えているのではないか」という意見でした。

石川酒造の清水さんは、自身がピルスナーにこだわりを持って醸造していることを例に挙げ「職人1人1人がここだけは譲れないという軸を持って、ビールを造っていくことではないか」と話しています。

醸造家の皆さんもビール片手にディスカッションに参加されました。

【日本独自のビアスタイルは生まれるか、生まれるとすればどのようなイメージのビールか?日本からジャパニーズスタイルとして世界に向けて発信するために、どの部分に魅力を持たせるべきか】

アメリカでは常に新しいスタイルが生み出され、コンペティションにも登録されている現状で、日本も含めて他の国由来のビアスタイルが出づらい現状がある。その中で「日本独自のビアスタイルは生まれるか?生まれるとすればどのようなイメージのビールか?」が話し合われました。

松江ビアへるんの(以下ビアへるん)矢野さんからは、日本を世界にと考えた時に「日本は麦文化ではなく味噌や酒造を含む米文化の国」という所がキャラクターの1つではないかと思うと、自身が島根県の酒蔵と共同で手掛ける、ビール酵母、清酒酵母、米麹等を使用して造る「おろち」を例題に「日本でしかできない、日本特有の良いところを伝えるやり方がこれから発展していくのではないか」と話します。

SPRING VALLEY BREWERY(以下SVB)の田山さんからは、「スタイルにアメリカンがついたビアスタイルが増加しているのは、アメリカのホップがユニークだから。ホップはビールに多分に影響を与える要素なので、これから未来日本産のユニークなホップが独自のビアスタイルに繋がるのではないか」という意見が出されました。

【今後日本でクラフトビールが発展した後の未来とはどんなイメージか。クラフトビールがもっと親しまれるためには何が必要か】

さかづきの金山さんからは「まだまだクラフトビールを知らない人が多くいる中で、もっと親しまれるためには何が必要か。今後日本でクラフトビールが発展した後の未来とはどんなイメージを描いているか」という質問がされました。

Innovative Brewerの新井さんからは「醸造の規模に関わらず、もっとメーカー側がメディア等に勢い(話題性)を持って、アピールする必要があるのではないか。20年30年後は、現在ほとんどの人が想い描く『生ビールください』が、ブランドの名前に変わること。各々が自分の好きなビールや醸造所を持っている世界が理想的」そのために、ビールとは全く関係ない業態と組むことで、結果的にビールも飲むような接触ポイントを増やす活動や、ビールを飲んだ時の面白さを色々な規模の人間が、それぞれの形で発信することの必要性を提案されました。

SVBの田山さんからは「クラフトビールの裾野を広げるには、基本的なクオリティと生産性の向上。今後は生産性を上げることで、業界全体として、造り手も儲かるビジネスにしていかなくてはならない」そのためには、より多くの人に魅力を伝えるための、クオリティの向上が必要不可欠と指摘しています。

ビアへるんの矢野さんは「自分のオリジナル要素を含んだ、良いクオリティのビールを提供することで、ファンを増やして消費量も増やしていく」そうした好循環の中で、生産性を上げて1本あたりの金額も下がるような、環境に持っていくことが重要という意見でした。

・第二部 質問コーナー

第二部は参加者からの質問に対して、醸造家が回答する形式で行われました。今回は数ある質問の中から、皆さんも今日からチャレンジできる【日常生活の中での味覚の鍛え方】についての質疑をご紹介します。

会場の参加者より「ビール造りにおいては繊細な味覚が必要になるが、普段どのように味覚を鍛えているか?」という質問があがりました。

SVBの田山さんからは「ビールの味わいを正確に表現できる人と、同じ場所で同じビールを飲むこと。そこで感じた香りや味について、言語化する場合の言葉について学ぶのが良い」というアドバイス。

さかづきの金山さんからは、自宅でできるテイスティングを用いた、実践的な鍛え方についてレクチャーがありました。具体的な方法として、「スーパー、コンビニで販売している同じスタイルの缶ビールを複数本購入して、側面にアルミホイルを巻き付けてシャッフルし、ブラインドで銘柄を当たるまで繰り返します」視覚情報を無くした状態で飲む中で、味わいの繊細な部分にまで気づくことができ、味覚の感度が鍛えられるとのこと。

イベント終了後に自宅で実際に試してみると、正解を導き出すために僅かな苦みや甘味の違いを意識するようになり、集中してビールと向き合うことができました。そして、ビールを味わう上では視覚情報に頼る部分の大きさを改めて実感いたしました。今回は20代の方からの積極的な質問が目立ち、醸造家の皆さまも若者向けにメッセージを込めた意見で、会場を盛り上げました。

第1部、第2部と熱い議論が繰り広げられました。

・第三部 大宴会

­  最後は醸造家と参加者が共に語り合いました。会場では各ブルワリーのビールが1種類ずつ用意され、フラッグシップビールから季節限定、新作とバラエティ豊かなラインナップが、1杯500円で提供されました。ラストオーダー30分前には全てのビールが完売となり、急遽 石川酒造のピルスナー、ケルシュが追加される程の大盛況でした。当日提供されたラインナップはこちらです。

石川酒造:多摩の恵 シングルホップウィート、ピルスナー、ケルシュ
いわて蔵ビール:牡蠣のスタウト
松江ビアへるん:ヴァイツェン
SPRING VALLEY BREWERY :京YUZU Sparkling
Innovative Brewer:SORACHI1984
さかづきBrewing : 風月ペールエール

普段、多くの人で賑わうビールイベントでは、醸造家に対して個人の意見を共有する機会はほとんどないと思います。そのような中で、クラフトビールファンはもちろん、余り馴染みがなかった参加者にとっても、ビールを飲みながら話を聞いたり、意見を直接伝えたりできる時間は大変貴重だったと思います。

醸造家の皆さんにとっても、飲み手の本音を聞く充実した時間となったのではないでしょうか。会場のあちらこちらで乾杯の音が響き渡り、皆さんの笑顔で彩られた空間。「よく飲み、よく話し、よく笑う」コミュニケーションツールとしてのビールのチカラが表現された、印象的な光景が広がっていました。

参加者全員で乾杯。会場に一体感が生まれました。

・おわりに

­  イベントは石川酒造 十八代目当主 石川 彌八郎さんの総括を持って、閉会となりました。終了後も会場の熱気は冷めやらず、3時間が短く感じるほど充実した時間でした。登壇者含め、ビールを片手に話す。そんなリラックスした空間だからこその本音や熱いメッセージが飛び交い、益々ビールの魅力を感じる機会となりました。

皆さんのお話を伺う中では「クラフトビールは味わいと共に、その背景にある造り手が込めた想いを楽しむ飲み物である」と改めて感じました。次回はどんな化学反応が楽しめるのか、第2回の開催も待ち遠しく思います。このイベントは当協会のJBJA Channelでも紹介されております。ぜひ動画の臨場感も併せてお楽しみください。

醸造家、ボランティア、参加者が一体となってイベントを盛り上げました。

【JBJAChannel】Beer Dialogue☆イベントリポート≪前編≫

【JBJAChannel】Beer Dialogue(ビアダイアログ)2019年3月16日イベントリポート≪前編≫

【JBJAChannel】BeerDialogue☆イベントリポート≪後編≫
https://www.jbja.jp/archives/24705

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神山 タクロウ

この記事を書いたひと

神山 タクロウ

ビアジャーナリスト/ビアテイスター

ビールと東京ヴェルディに魅了されつづけるビアツーリスト。平日はビアバー、週末はビア旅を満喫することがライフワーク。「日本のクラフトビール文化は面白い」を追求して、現地で体験した魅力を発信していきます。

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