[コラム,ビアバー,ブルワー]2019.5.1

クラフトビール業界のSDGs~東海道BEER川崎宿工場の取り組み~

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ビールに愛された皆さまへ!
令和元年、いよいよスタートですね。早速、ビール業界の明るい話題をお伝えしていきたいと思います。

2015年9月、国連総会で「持続可能な開発目標 Sustinable Development GOALS」が採択されました。そこからサスティナブル・サスティナビリティといった言葉があちこちで散見されるようになり、世界的・世間的に注目度の高い取り組みであることが分かります。

 

今回は、ビール醸造の後に排出される麦芽粕の処理を独自ルートで喜びのある相互関係につなげた、東海道BEER川崎宿工場の取り組みをご紹介します。

これまでの東海道BEER川崎宿工場の記事はこちらからご覧ください。

毎週水曜日の醸造

醸造技師 田上達史氏によると、毎週水曜日は東海道BEER川崎宿工場のビール醸造の日。翌日には麦芽粕を煮沸釜から掻き出し、ビニル袋に約15㎏ずつ分包していきます。一度の醸造でそれがおよそ12~13袋。約200㎏と仮定すると、かなりの量です。

 

蓋をあけると、麦芽粕がギッシリ。ビールの味を左右する、麦芽粕の味も確認。

仕込みの翌日、ダマになっているところが無かったかどうかもチェックしながら、のんびりやっています、と田上氏

一日経った麦芽粕はまだほんのり温かく、しっとり湿っています。釜から掻き出す時にきちんとほぐれずダマになったところが無かったかどうかをチェックしながら、1時間ほどかけて袋詰めをしていきました。

黙々と袋詰めをする田上氏。これを12~13袋続けていきます。

これから運び出される麦芽粕。

煮沸釜の上から。麦芽粕が掻き出され、すっかりキレイに空になりました。

 

川崎市の産業廃棄物の分類によると、麦芽粕は動植物性残さ(1)食料品製造業・植物性残さとなる。川崎市では事業系ごみ・産業廃棄物を収集しておらず、行政から産業廃棄物の「収集運搬・処分」について営業許可を受けている業者に委託しなければなりません。

毎週水曜日の仕込みで約200㎏の麦芽粕が出ると仮定すると、年間365日÷7日=約52週(まるめて50週として)、200㎏×50週=およそ10トンの麦芽粕を処理していかなければなりません。

リサイクル・ハブ(https://recyclehub.jp/articles/pricelist/)という産業廃棄物のマッチングサイトによると、動植物系残さの処理料金は15~80円/kg。年間15万~80万円と振れ幅はあるものの、かなりの金額になることが分かります。もっとまとまった量であれば、トンあたりの金額でもう少し安くなることも考えられますが、小規模醸造設備から出る細かい量であれば、多めに見ておいた方が妥当と思われます。

 

麦芽粕を詰め込み、いざ出発!

さて、大量に出てきた麦芽粕をワンボックスカーに詰め込み、いざ出発。これから向かうのは川崎市多摩区にある大学の馬術部です。多摩川沿いの街道を進み丘陵地方面に向かうと、生田駅近くにある明治大学生田校舎に到着しました。

 

馬も大喜び?若い学生の競技も応援

明治大学馬術部1年 鹿戸雄翔君にお話を伺いました。

馬たちには牧草と配合飼料、えん麦などを与えています。12頭の馬を、朝昼晩休みなしで部員が世話をしています。人間のアスリートと同じで、飼料などで馬の身体を作ることによって、競技の能力も上がってきます。また、麦芽粕を与えることで毛艶も良くなっています。毛艶が良いことも健康状態が良く保たれている証でもあるので、競技馬として必要な要素です。

麦芽粕は昨年12月からもらっています。麦芽粕は栄養価が高いので、草や他の飼料では補えない副食のような役割をしています。牧草だけでは競技馬としては栄養が足りないので、このような副食を与えることで、コンディションが良くなっています。

学生さんにも手伝ってもらい、こちらには5袋分を馬の飼料としておすそ分け。

田村さんが袋を開けて、1頭の馬に手で食べさせてあげていると、厩舎の一番奥の馬が金属製の柵を蹴り始めてしまいました。ガシーン!ガシーン!という大きな音の間に、ガスーッガスーッと、コンクリートの床を激しく擦る音。麦芽粕を早く食べたくて待ち切れずに、田村さんを呼んでいるのです。

「あの馬、いつもなんですよ。こっちにもよこせってねだって。匂いでわかるみたいです」と田村さん。もしかしたら毎週来るから覚えられてしまったのかもしれませんね。

 

トカイナカヴィレッジ~都会がすぐそばにある豊かな田舎の風景~

次に向かったのは、同じ多摩区の東生田にあるトカイナカヴィレッジ松本傳左衛門農園。

こちらは11代続く松本家の5000坪の田畑や里山を体験型の農業公園にするために、今まさに、設備を新設したり改良している真っ最中。11代目松本傳左衛門であり、村長の松本穣(ゆたか)氏にお話を伺いました。

右が松本穣氏。柔和なお人柄でたくさんの方々に慕われている。右は田村氏。数年来のお付き合いで信頼関係はばっちり。仲の良いお二人。

明治大学名誉教授 そしてトカイナヴィレッジ村長 松本 穣 氏

4年ほど前に退職したタイミングで、卒業生が市会議員だったことから、何かここで出来ないかと相談していました。そのときに田村さんに出会いました。ここから「トカイナカヴィレッジ」の構想が生まれました。東海道BEERから出た麦芽粕は農園内の「たい肥場」に入れてもらっています。微生物を活性化させるバクチャーという活性剤で土を作っているので、すぐにたい肥になります。冬などはショベルカーで攪拌していると発酵熱で湯気がもうもうと上がるぐらいです。

 いろいろな人の助けがあり、来月には農家レストランの建物が着工し、7月末には完成の予定です。里山のあちこちに日本ミツバチの巣箱もおいて、定着しています。農園で採れる柚子を使った柚子胡椒のワークショップなども開催予定です。ここで瓶詰めする食品加工もできるようにするために、色々働きかけていますよ。

これから農園で仕掛けていく計画を、楽しそうに語る村長。定年後に始めた活動に、その年齢からは考えられないような瑞々しい感性と行動力、そして周りを巻き込んでいく牽引力は本当に素晴らしく、そして、そのワクワクした感覚に魅せられ、お話にすっかり引き込まれてしまいました。

のらぼう菜、食べたことあります?」と聞かれたので、「いいえ」と答えると。「ちょっと待ってて!」とすぐさま畑へ。見たことのない、肉厚なしっかりした菜っ葉をちょいちょいと摘んで、それをすぐに茹でてくれました。

「のらぼう菜は、このあたりで昔から作られていた地元野菜です。和からしとだし醤油で味付けしただけですよ」と出して頂いたそのお浸しのおいしいこと!苦みやくせが少ない上、茹でてもへたらず、しっかりとした歯触りです。
「採れたて、うまっ!」と、田村氏と私で、大きな鉢にたっぷり盛ったお浸しをあっというまに平らげてしまいました。

すみません、少し食べ進めてから「あ、写真!」と慌てて撮ったので、結構減っています。3分の2くらいになっています

「今日はのらぼう菜とブロッコリーを持って行っていいですよ」と村長に促されて畑に出て、「もう、どんどん採っちゃっていいから!」と野菜をたくさん手で摘み取りました!そうです、麦芽粕をたい肥として提供することで、東海道BEERのお店でピクルスにするための野菜を引き換えに頂いているのです。

のらぼう菜を摘み取る。シーズン中は、摘んでもどんどん脇芽が出てくるそうです

ブロッコリーは、メインの大きな株を採った後も、脇からどんどん芽が出てきます。味わいは、生で食べても甘い!絶品です

後日、店頭での「自家製ピクルス」を頂きました。のらぼう菜・ブロッコリーは、ピクルスになってもしっかり歯ごたえのある良いお味に仕上がっていました

 

番頭:田村寛之~計り知れない熱量で人を巻き込み、街を活かす人~

東海道BEER川崎宿工場 番頭 田村寛之氏

東海道BEER川崎宿工場番頭、田村寛之氏。多くのビジネス・事業に関わり、たくさんの仕事を分刻みでこなす、バイタリティの塊のような方です。

「ありがたいことに、多くのお声がけを頂いて関わらせていただいていますが、使命だと思ってやっております!」

生まれ育った横須賀と、今ご縁があり住んでいる川崎。「子供達の故郷になる土地だから、父親である僕が感謝と愛着をもってこの街を大切にしたい」と、川崎に住む子供達や多世代の方たちと一緒に街のクリーンアップをする「green bird」という活動を続けています。そして、この取材の翌日には、横須賀出身のミュージシャンの男性アーティストRUEED(ルイード)を中心とした音楽事業を立ち上げるということで、RUEED君の音楽を車中で堪能しながら帰途につきました。

二つの街への思いが熱い、田村氏。東海道BEER川崎宿工場を、主人である岩澤克政氏、醸造技師の田上氏と三人四脚で、このプロジェクトの立ち上げから関わってきた立役者のお一人です。地域との共生・共栄、そして川崎という街を昔から性格づけてきた旧東海道からこの街を盛り上げていきたいという熱意と、そして関わる方々をどんどん巻き込んでしまう実行力は素晴らしいものです。

今回、この取材で半日ご一緒させて頂きましたが、その人柄の素晴らしさ・魅力に加え、夢を目標に変えてどんどんチャレンジして実現させていくエネルギー=熱量は本当に圧倒されました。圧倒されるというより、「やりたいことを、ただタイミングやチャンスを待って立ち止まって見ているだけ時間はもったいないことだな」と、立ち上がって走り出す勇気のようなものを頂けてしまうのです。
私も、他の皆さまと同様に「田村氏に出会って」しまったのだと思います。影響力のある方というのは、こういった力がとても強いのだと、改めて感じさせられることでした。

お店での素敵なツーショット。お二人は同い年だそうです。

 

醸造でかならず発生する麦芽粕は、多くの醸造場から廃棄物として処理されています。東海道BEER川崎宿工場では、当初から「産業廃棄物ゼロ」を目指して事業を開始しました。トカイナカヴィレッジへのたい肥として引き受けていただく時に、村長から元の職場である大学の馬術部への飼料としての提供について提案をされたとのことです。

地元川崎を盛り上げながら、ともに発展しようという素晴らしい「つながり」。単なるビジネス的な関係ではなく、温かい信頼関係と交友があり、実現しています。

今、麦芽粕の処理に悩む醸造場の皆さまも、どこかの「つながり」を探ってみれば、解決への一歩になるかもしれません。ビールの未来は、あたたかくて明るい!

 

東海道ビール川崎宿工場では、営業時間中にテイクアウトを始めました!お天気の良い日のお散歩や、あともうちょっと飲みたい時など、一杯600円でお手軽に楽しめますよ!

東海道BEER川崎宿工場
公式ホームページ:https://tokaido.beer/
Facebook:https://www.facebook.com/tokaidobeer.kawasaki/
Instagram:https://www.instagram.com/tokaido_beer/
営業時間 平日17:30~23:00 土日祝12:00~23:00
火曜定休

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この記事を書いたひと

松原 順子(MJ)

ビアジャーナリスト/ライター

ビールと昆虫と、リコーダーと天然石が大好きです。JBJAではイベントサポートやBJAチューターも楽しんで取り組んでおります。人に寄り添う記事作成を心がけ、JBJA公式動画サイトJBJAchannelではMCを担当しております。

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