[ブルワー]2019.7.24

九州から高品質のビールを届けたい!~九州クラフトビール協会の取り組み

6月末に城山ホテル鹿児島にて、九州クラフトビール協会(以下、KCBA)の醸造研修会が開催された。

KCBAは九州のクラフトビールの品質向上を目的に、2017年2月に発足。
九州でクラフトビールを造る17社が加盟し、年に1回の審査会と2回の研修会を行っている。

これまで、宮崎ひでじビールでの衛生管理の手法研修や、門司港ビールでの新プラントの見学、キリンビール福岡工場での製麦工程の見学等を行ってきた。

この日は、①城山ホテル鹿児島内にある城山ブルワリーの仕込み見学、②国税局の担当者をお招きしての軽減税率についての講話、③オフフレーバー講習、④意見交換会が行われた。

城山ブルワリーでの仕込みを見学。同ブルワリーでは桜島こみかんや長命草などの地元特産品を使いつつ、雑味の少ない綺麗な味に仕上げている

本年10月からの消費増税にあたり国税局の担当者より、軽減税率制度の品目・区分記帳、さらにはイベント開催時に提供される屋台のフード類は軽減税率に当たるのかなど、事業者にとって必要な情報が具体的に示された。

国税局担当者からの話に真剣に耳を傾ける参加者

オフフレーバー研修では、雑菌などで汚染されたビールの香りを再現した23種類のサンプルを用い、ビールが汚染されると味や臭いにどのような変化が起こるのかを体験。
熊本国税局担当者からその原因や対策について説明があり、各テーブルではブルワーさんたちからも意見が出された。

23種類ものオフフレーバーを体験し、その発生原因や対策を学ぶ

このようなオフフレーバー研修を定期的に行うことで、自分の感覚の確認やブラッシュアップが期待されている。
今回は基準値の約3倍で行われたが、今後は徐々に基準値の倍率を下げより些細なフレーバーも嗅ぎ分けられるよう研鑽を行っていく方針だ。

「オフフレーバーは、なかなか嗅ぐ機会や勉強する機会がない。貴重な経験をさせてもらっている」と、城山ブルワリー醸造長の倉掛智之さん。

今回の会場になった城山ホテル鹿児島にあるクラフトビール醸造所、城山ブルワリーの倉掛さん

意見交換会やその後の懇親会では、目指す“キレ”の出し方から、最近の消費者の動向まで、幅広く活発な意見が交わされた。

「普段はひとりで醸造しているので、他のブルワーさんたちの意見を聞けるのは刺激になるし勉強になる」と鹿児島県種子島にあるLocal Breweryからはなの伊藤理人さん

当日はテレビ局の取材も。インタビューに答える伊藤さん

こうした研修会の積み重ねにより、今年2019年6月には全国地ビール醸造者協議会が行う「JBA 全国地ビール品質審査会2019」において、KCBAの一員である「門司港地ビール工房」のヴァイツェンが最も優れたビール「最優秀賞」に選ばれた。

この審査会は成分分析の他、専門家による味や香りの官能検査により賞が決まる。
2017年から毎年開催し3回目となる今年は、全国の47社が110点を出品した。

開門海峡に面した北九州市の門司港で造られている「門司港ビール」。醸造所併設のレストランでは名物焼カレーと一緒にできたてのビールが楽しめる

KCBA会長を務める、宮崎ひでじビール代表の永野時彦さんは、
「九州全体さらには日本全国の醸造技術や管理技術が上がることが、消費者の皆様が安心してクラフトビールを召し上がっていただくことにつながる。このような研修会を続け、常に高品質のものを届けられるようにしたい」と話している。

オフフレーバー研修の意義について説明する永野さん

KCBAではこのような取り組みを通じ、消費者が安定・安心しておいしいビールを飲めるように、官民が協力して品質向上に努めている。
全国に愛飲者が増え、日本のクラフトビールが文化として発展するように、これからもKCBAを応援したい。

【九州クラフトビール協会参加ブルワリー】
やまぐち鳴滝高原ブルワリー 山口地ビール(特別枠・山口県)
門司港地ビール工房(福岡県)
ホテルオークラブルワリー(福岡県)
杉能舎麦酒工房(福岡県)
八女ブルワリー(福岡県)
ゆふいんビール(大分県)
くじゅう高原ビール Beer Oh!(大分県)
熊本クラフトビール(熊本県)
不知火浪漫麦酒(熊本県)
宮崎ひでじビール(宮崎県)
霧島ビール(宮崎県)
B.M.B Brewery(宮崎県)
日南麦酒(宮崎県)
城山ブルワリー(鹿児島県)
桷志田ブルワリー(鹿児島県)
Local Breweryからはな(鹿児島県)
花渡川ビアハウス(鹿児島県)

JBA 全国地ビール品質審査会KCBA研修会九州クラフトビール協会

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

コウゴ アヤコ

ビアジャーナリスト

1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。看護師を経て、旅するビアジャーナリストに転身。旅とビールを組み合わせた「旅ール(タビール)」をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ドイツビールに惚れこみ1年半ドイツで生活したことも。

最近はキャンプとサウナにドハマり中。そこにもやはりビールは欠かせない。最高の「ビアキャンプ」&「ビアサウナ」を求めて、日本全国津々浦々旅をしている。

■執筆歴■
-海外生活情報誌ドイツニュースダイジェストで「旅ールのススメ」連載中
ビール小話 (ドイツニュースダイジェスト)2009~16年連載
-東海教育研究所かもめの本棚onlineにて「旅においしいビールあり」
-クラフトビールで乾杯!(日本トランスオーシャン航空機内誌Coralway2020年9.10月号特集)
-ビール王国(ワイン王国)
-ビールの図鑑・クラフトビールの図鑑(マイナビ)
-BRUTUS(マガジンハウス)
-an・an(マガジンハウス)
-CanCam(小学館)
-DIME(小学館)
-東京人(都市出版)
-るるぶキッチンmagazine 秋冬号(JTBパブリッシング)
など
■出演歴■
-アサデス。7(KBC九州朝日放送)
-KURASEEDS(J-WAVE81.3FM)
-食べて!歌って!まるごとユーロ!ドイツ語(NHKラジオ第2)
-トークイントーク(フレンズFM)
-売れ筋RANKING~クラフトビール(KTSライブニュース)
など

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