[コラム,ブルワー]2020.11.2

大手ビールメーカーがブランドをリニューアルするのはなぜ? キリンラガービールの場合

1888年にキリンビールの前身ジャパン・ブルワリー・カンパニーから発売されたキリンビール1988年にキリンラガービールに名称を変更し、発売から132年となる歴史あるビールブランドです。このキリンラガービールが2020年7月に10年ぶりのリニューアルをしました。

大手ビールメーカーのリニューアルは何をきっかけに決断をするのか。マーケティング部の立野唯花さんにお話を聞きました。

今を生きるブランドとして、お客様においしさを届けていく使命がある

「伝統あるビールですが、今を生きるブランドとして、お客様においしさを届けていく使命があると思っています」とキリンビールの原点であるビールだからこそおいしさを追求する必要があるためリニューアルが必要と立野さんは話します。

そのタイミングとして、今回は2020年10月1日の酒税改正前となりました。

2020年10月1日の酒税改正では、ビールは350mlあたり7円減税に改正。ビールにとっては追い風となるこの機会に「今まで手に取って来なかった人にも飲んで欲しい」という思いもありリニューアルが決まったと言います。

価格が下がることで「飲んでみよう」と思う人はいると思います。しかし、知名度のあるキリンラガービールのリニューアルをすることは、これまで愛飲してきた人が離れてしまう恐れもあります。

「リニューアルは、商品をより良くするという会社の使命」といい、受け入れられる不安あるが、消極的な姿勢をとることはないとのこと。

キリンラガービールは、レトロビールではなく現在進行形のブランド。だからこそ美味しさを追求して進化していく必要があると立野さんは力強く言います。

今回お話を聞いた立野さん。難しい話にも丁寧に答えていただきました。

目指す味を定めながらお客さんの声を反映させて決めていく

リニューアルは、お客さん側からの要望があって行うのか。それともメーカー側の思いで行うのでしょうか。

「これはどちらが先というのは難しいですね。リニューアルの過程でどういった味を目指すのかという仮説を立てながらお客様の声を聞いています。お客様の声を反映させて醸造部門の方たちと味をつくる流れが多いです」

社内で方向を定め、お客さんの声を反映させて商品を良くしていくのが一般的とのこと。

リニューアルから3ヶ月が経過。お客さんからの反応を聞いてみました。

「発売前はキリンラガービールの愛飲家の方たちから『楽しみ』という声がありました。発売後はこれまで飲んだことがなかった方たちから『おいしい』という反応を多くいただきました」と10年ぶりのリニューアルは愛飲家にとってもこれまで飲んでいなかった人からも反響があったと言います。

今回のラガービールのリニューアルに際して、立野さんはどんな思いをもって携わってきたのでしょうか。

「キリンラガービールに対して、伝統を引き継ぎながら今を生き続けるブランドとしてお客様に愛し続けてもらいたいという気持ちを強く持っています。このリニューアルでもその思いを大事にして携わりました」

伝統を大事にしながら「キリンラガービールらしいおいしさ」を届けることで、これからもお客さんから長く愛されるブランドでありたいと気持ちを教えてくれました。

使用するホップの増量と配合の調整。そして仕込み工程の工夫で爽快な苦味を実現

ここからは改めてキリンラガービールのリニューアルの内容をお伝えしていきます。

今回のリニューアルのポイントは、「進化した伝統のおいしさ」。本格派ビールのイメージが強いからこそ「キリンラガービールの味をきちんと捉えたうえで進化をさせるということで苦味の質を高めました。具体的にいいますと爽快な苦味を追求しました」と立野さんは話します。

苦味の質を高めるために行ったのがホップの増量と配合の調整です。ホップは穏やかな苦味とハーバルやスパイシーな香りが特長のドイツ・ハラタウ産のヘルスブルッカーを使用。

「ヘルスブルッカーを使うことで、苦いだけではなく飲みごたえのある味になりました。ただ苦いだけではなくて全体のバランスがとれているのがキリンラガービールです」

また、爽快な苦味を実現するために仕込み工程で酸味を抑える醸造方法を採用。爽快な苦味を感じながらも後味はスッキリとしていて、次の一口が進むキリンラガービールらしい味に進化したと言います。

リニューアルに際してパッケージデザインも変更。キリンラガービールのイメージカラーである赤色と白色と聖獣麒麟のマークをより目立つようにデザインされています。「本格感や品質感を高めました」とポイントを教えてくれました。

リニューアルしたキリンラガービール。以前よりも後味がすっきりして飲みやすさが増したように感じた。

最後に立野さんからメッセージをいただきました。

「キリンラガービールは、とても長い歴史をもつブランドです。ファンの皆様はもちろん、私たち社員にとっても大事なビールです。大事にされてきたからこそ飲まれ続けてきているのだと思います。まだ飲んでいない方がいましたら、私たちが自信をもってお勧めするビールになっています。ぜひ飲んでみてください」

伝統を受け継ぎながらおいしさを追求していくために進化させていく。キリンラガービールを通じてリニューアルの重要性を知ることができました。

商品概要

商品名:キリンラガービール

発売地域:全国

容量・容器:350ml缶・500ml缶・大びん・中びん・小びん・7L樽・15L樽・20L樽

アルコール度数:5%

価格:オープン価格

ブランドサイト

キリンビール株式会社キリンラガービール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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<Web>
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