[コラム]2022.5.11

「琥珀の夢で酔いましょう」の魅力って何ですか? 麦酒処ぬとり やまだこばさんに聞いてみた

月刊コミックガーデンで連載中のクラフトビール漫画「琥珀の夢で酔いましょう(以下、こは酔い)」。ご存じの方も多いと思います。最近はビールが飲めない人からも注目もされていて、2021年の「次にくるマンガ大賞2021」コミックス部門20位を受賞しました。

ビール業界にもファンの多い同作品。今回は、埼玉県川口市にある麦酒処ぬとり(以下、ぬとり)の女将やまだこばさんに「こは酔い」の魅力を聞いてみました。

登場人物の心情がリアルに描かれている。共感する部分が多く作品に引き込まれます!

――:最初に「こは酔い」の出会いをお聞きしたいと思います。どうやって作品を知りましたか。

やまだこば(以下、こば):漫画が好きなので、作品のことは知っていました。ただ、仕事が忙しくて読めていませんでした。そんな時に、主人公である七菜のようなお客様が「女将に読んでほしい漫画がある」って、第1巻と第2巻を持ってきてくれたのが出会いです。

――:お客様からのプレゼントがきっかけになったと。

こば:はい。実は、そのお客様もぬとりを通じて、ビールが好きになってくれた方なのです。その中で、「この本が面白いから読んでみて」とプレゼントしてくれました。それで読んでみたら「おっ、これは面白いぞ」とハマりました。しかも、読んでいたら別のお客様からも第3巻と第4巻をプレゼントしてもらいました(笑)。

「こは酔い」への思いを話すこばさん。ぬとりでは、料理を担当。家で晩酌をしているような気分になる料理を提供してくれる。

――:お客様は、なぜ「こは酔い」を勧められたのでしょうか。

こば:読んでいなかったというのが1番の理由だと思いますが、「こは酔い」はビールだけではなく、料理の描写も素晴らしいじゃないですか。料理という共通点も勧めてくれた理由だったのかもしれません。

――:確かに「こは酔い」の舞台である隆一が経営している白熊とぬとりってどこか似ている感じがあります。

こば:それは嬉しいです。おばんざいを提供している繋がりもありますね。

ぬとりのおばんざいは、「こばんざい」と呼ばれている。これは、小さいお惣菜やこばさんから捩ったところからきている。1つの料理の量も控え目なので、1人でつまむのにちょうどいい量なのだ。

――:実際に読んでみて、どんな感想を持たれましたか。

こば:これまでのビールや料理の本は、ガイドブック的要素が強いものが多い印象がありました。でも、「こは酔い」は、登場人物の心情がリアルに描かれていて、シンクロする部分が多くて作品に引き込まれました。もちろん、ビールと料理の説明もしっかりしていて、それが登場人物たちの物語にきれいに入ってくる。この世界観が良いなぁって思いました。そこにハマりましたね。

――:物語の中に登場するビールのセレクトも素敵です。

こば:そうですね。あと、京都が舞台っていうのも好きですね。

――:関東にいる私たちからすると、京都や関西地域のクラフトビールシーンを知ることができるのも良いですよね。

こば:良いですね。京都の観光地の描写もありますし、読みながら京都を楽しんでいる感じになれます。

「こは酔い」の舞台は京都。物語では、京都の街並みも描かれていて、京都にいるような感覚で楽しめるがいい。【第2巻表紙 画像提供/株式会社マッグガーデン】

推しキャラは隆一! お店や料理など自分と重なります

――:現在、単行本は5巻まで販売されています。主要な登場人物である七菜、鉄雄、隆一のほかにも魅力的なキャラクターがいます。気になるのは誰でしょうか?

こば:各キャラクターに思い入れはあるのですが、強いて1番を挙げるなら自分の立場に近い隆一です。料理をつくる点だけじゃなくて、お店の経営やビールに合う料理に悩んでいるところは自分に重なるので注目してしまいますね。共通する部分が多いので隆一は気になります。

お店を経営する立場としても共感する部分があるという。【第2巻 8話より 画像提供/株式会社マッグガーデン】

――:クラフトビールのお店でおばんざいを提供しているお店は珍しいです。隆一は、一見何も考えていないように見えますが、裏では神経質なくらい色々なことを考えていますよね。

こば:そうですね。私も兵庫出身なので、故郷の高知を離れて京都という土地で頑張っている姿に感情が入ります。

――:色々な文化が入り交ざって展開されているところがクラフトビールの多様性と重なる部分がありますし、物語に深みが出ていると思います。

こば:地域の話が盛り込まれているのは良いですよね。隆一の料理でも高知の味付けを上手に京都の料理に融合させていて素敵だなと思います。

――:料理の表現も優しい表現で食べたくなるだけではなく、暖かい気持ちになれます。

こば:なりますね。「こは酔い」に出会ってから、改めて地域のことやビールに合わせる料理について気づかされました。

隆一の料理は、故郷高知と舞台となっている京都の料理文化を融合させている。どの料理も実際に食べてみたくなるものが多い。【第3巻 12話より 画像提供/株式会社マッグガーデン】

――:他の登場人物で気になる人はいますか?

こば:なおちゃん(修道)ですね。最初は仕事ができる同僚という感じでしたが、七菜と一緒に仕事をしていく中で、過去にあった辛い経験を打ち明けていきます。それを七菜や鉄雄、隆一に受け入れてもらえることで、心境に変化が生じていくシーンにグッときました。最初は苦手意識をもっていた七菜が打ち解けて仲良くなっていくところも好きですね。

――:「こは酔い」は、登場人物が自分の課題に悩みながら一歩一歩乗り越えていくところも見どころだと思います。なおちゃんが苦しんでいた部分って、共感する方は多いのではないかと思っています。

こば:そうかもしれませんね。けっこう重い話でもあるので、最初は「なんで、こういう話を描こうと思ったのかな?」と思いましたが、読んでいくと「こういうことを伝えたかったんだ」と思いました。第4巻、第5巻では物語の重要な役割を担う人物ですね。

なおちゃんが辛い経験を話すシーン。人の陽の部分だけではなく、陰の部分も描かれることで読む人の感情に響く作品になっている。この辺りの強弱の付け方がとれているからこそ人気が出ているのだと思う。【第4巻 20話より 画像提供/株式会社マッグガーデン】

心からつくりたい料理を提供する大切さを学んだ隆一とグリフのエピソード

――:ここからは印象的に残っているエピソードをお聞きしたいと思います。どんなお話が印象に残っていますか?

こば:1番ハマるきっかけになったシーンである料理評論家のグリフさんが白熊を訪れて隆一の料理を食べて感想を言う話です。

――:どういうところが印象に残っているのでしょうか。

こば:グリフさんは、普段は人見知りで口数が少ないのですが、料理の感想を伝える場面になると急にスイッチが入って、料理に対して正直な意見を話します。この時、隆一は厳しいことを言われてショックを受けてしまいますが、そこから隆一もスイッチが入って彼本来の料理を伝えるシーンは印象的でした。私が隆一に感情移入するようになったのもここからです。

――:このシーンは、自身の体験に重なる部分があったのでしょうか?

こば:体験ではありませんが、料理って見た目を綺麗にしたいところがあります。でも、料理は見た目だけのものって伝わってしまします。本当は、この食材を使わなくてもいいのに見た目を気にしてしまう。だけど、心からつくりたい料理はそういうものではないことに気づかされたエピソードでした。ぬとりで提供している料理を「こばんざい」と呼んでいるのもこの話の影響を受けている部分があるかもしれません。

――:料理の映えは気になる部分でもあると思います。

こば:そうですね、見た目も美味しさの要素です。その中で、自分たちが料理を通じて伝えたい思いの大切さをこの話から教えてもらいました。

――:私は、このシーンから料理を通じて、自分に正直にあっていいというメッセージに感じました。料理からそうした心理を見透かされることにドキッとしたシーンでした。

こば:ドキッとしましたね。私も料理をつくる者として、この場面は心に刺さりました。ペアリングも理論を越えて伝えたい思いがあるのも素敵だなって思います。

こばさんが料理について気づきがあったという隆一とグリフのシーン。【第1巻 5話より 画像提供/株式会社マッグガーデン】

――:他に印象に残っているシーンはありますか?

こば:第2巻の七菜とMAKOTOのパンデートの話ですかね。MAKOTOも女優として演じている面があります。彼女が普段出すことができない部分も心に響きました。それとパンも大好きなので、ペアリングも興味深かったです。実際に試せる組み合わせっていうのも良かったです。

――:有名女優ならではの葛藤を聞いた七菜も印象的でした。ちなみにパンとのペアリングは、実際に試される方も多くて反応も良かったそうです。

「こは酔い」に出てくるペアリングは、試しやすいものも多い。実際に体験できるからこそ楽しさが広がっていくのだろう。【第2巻 9話より 画像提供/株式会社マッグガーデン】

登場人物の明らかになっていない部分がどう明かされるのか? これからの展開が楽しみ

――:改めて、どんなところに「こは酔い」は人気が出ていると思いますか。

こば:隆一やなおちゃんのことでも話しましたが、何かしら悩みを抱えているところをリアルに描いているところではないでしょうか。誰しもが悩みながら頑張っている。共感できる物語だから人気になっていると思います。

――:あまり出したくない感情の部分に自然な感じでビールと料理が入ってくるのも素敵だなって思います。

こば:はい。ビールと料理が美味しそうに描かれていますし、口にした彼らのとても幸せそう表情は読んでいる側も幸せにしてくれます。それと、登場人物たちがビールを通じて出会って、物語が展開していくのが楽しいですね。私たちもブリューパブという形をやっているのも人が出会う場をつくりたかったからです。ビールを通じて、新しいつながりが生まれるところが描かれているのが素敵です。

――:ぬとりの場合は、自社でビールも造っています。造るビールをみて料理を考えますか。

こば:それはあります。このビールだったら、「こんなおばんざいが合うかな」ってイメージしながら試作をします。あとはお客様に食べてもらった感想から新しいメニューを考えることもあります。色々考えるのは楽しいですよ。

――:ここからは、4月14日に発売になった最新巻である第5巻についてお聞きします。読まれてどんな感想を持ちましたか?

こば:登場人物の過去が明らかになりながら、新しい人物が登場してきましたね。特に珠紀の登場は驚きました。

――:まだ読まれていない方もいると思うので詳しいことは言えませんが、ビックリしましたね。

こば:彼女がこれから物語にどんな風に関わっていくのか楽しみです。

これから色々と物語に関わってくることが予想される珠紀。ネタバレになるので、登場人物との関係性は触れないでおく。【第5巻 22話より 画像提供/株式会社マッグガーデン】

――:どんどん物語が進行していく中で、これからどんな展開を期待しますか?

こば:「こは酔い」って、まだ登場人物のことが明らかになっていない伏線がある漫画だと思っています。例えばMAKOTOだと自分の話は明かされてきていますが、家族の話はまだ出てきていません。その中で七菜が上司である早乙女の顔がMAKOTOに似ているなんてエピソードもありました。「もしかして…?」っていう展開を期待しちゃいますね。

――:えっ、それは想像していませんでした!

こば:第3巻の白熊で開催されたイベント「たそビール」の回では、ニアミスしていますしね。何かあるかなと今後の展開が楽しみです。

早乙女部長とMAKOTOの関係は? こちらの展開も楽しみ。【第2巻 7話より 画像提供/株式会社マッグガーデン】

――:これからどうなるのか楽しみな展開がたくさんありますよね。こんな話を読んでみたいと言うのはありますか?

こば:やっぱり関東編は読みたいですね! 例えば七菜が東京にイベントの視察に来るとか色々な展開が期待できそうです。

――:そうですね、関東編は読んでみたいです。鉄雄が仕事で東京に来るとか、MAKOTOが東京で過ごしているシーンとか。想像できるシーンがたくさんありますね。ぬとりにも来てほしいですね。

こば:来てほしいですね(笑)。

――:最後にメッセージがあればお願いします。

こば:クラフトビールとおばんざいが実際に楽しめるのがぬとりです。シンクロする部分があるので、白熊に行った気分が楽しめると思います。いつか隆一の料理を再現して、皆さんに楽しんでほしいなとも思っています。ぜひ、「こは酔い」を読みながらぬとりで過ごしに来てください。お待ちしています。

営業時間の合間にインタビューに対応いただきました。こばさんがつくる料理はテイクアウトも可能です。自宅でゆっくり味わうのも良し。ホームパーティーに持っていくのも良しです。

琥珀の夢で酔いましょう

原作:村野真珠 Twitter

作画:依田温 Twitter

監修:杉村啓 Twitter

発行所:株式会社マッグガーデン

掲載誌:月刊コミックガーデン

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麦酒処ぬとり

住所:埼玉県川口市川口6-9-5 滝沢コーポ102

電話:048-437-2822

営業時間:平日15時〜23時 土休日14時〜21時

定休日: 火曜日 醸造等で休業時間など変わる可能性あります。

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ/ビアジャーナリスト

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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