[コラム,テイスティング]2022.7.3

カンティヨンが新しくなった!

ベルギービールで「酸っぱい」といえばランビックというカテゴリーよりも「カンティヨン」というブランドを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
そんな酸っぱいビールの代名詞ともいえるカンティヨンがラベルを新しくしたと共に味わいもかなり変化した、と聞いて試してみました。個人的には年々「あれこんなに酸味が少なかったかな?」と思うことが多少ありましたが、今回ほど強烈にそれを実感したことはありませんでした。

かねてより、ベルギービールはラベルが変わると味も変わるといわれることはよくありました。よく考えてみると造り方は変わっていなくても時代に合わせて少しずつ色々なことを変えてゆくということは考えられないことではありません。そう考えてみると味の変化というのは時代の変化とも読み替えられます。何はともあれ、試してみないといけないと思い飲んでみました。

実際に飲んでみました

ラベルは王冠と同じ酔払いのみに。

確かに強烈ともいえる酸味は丸く穏やかになり、ブレタノマイセスというランビック特有の酸味を醸してくれる野生酵母が仕事をさぼったのかしら?と思うような軽やかな甘みを感じます。酸味が減り少し甘味を感じるようになったのだから突出した味わいではなくなった分、間口が広がったという言い方もできます。つまりこれはいろいろなものとペアリングできる好機なのではないでしょうか。
いてもたってもいられず、様々なものでペアリングをチャレンジしてみました。

ペアリングも試しました

試してみたのは以下の通りです。

自家製ガリ

市販のいかの塩辛

市販の焼き鳥のたれより少し甘め

スーパーで買ったしめ鯖

実は酸味のパンチが弱くなった、あるいは少し甘さを感じるなどの前評判を聞いていたので、今年は新しいカンティヨン仕様にガリを仕込んでみました。とはいえ、まだ仕込む段階では飲んでいなかったため想像というか妄想に近いものではありましたが。いつものレシピのきび砂糖の一部をグラニュー糖に替え、酢は少し沸騰させて酸味を飛ばして作りました。
酸味の少ないものどうしということで相性はよく、とてもいいペアリングに感じました。

次は塩辛です。酸味が塩味をマイルドにするため、前のカンティヨンには内臓を入れて漬け込んだ滋味深い塩辛が合っていましたが、新しいカンティヨンはどうでしょうか?今回も悪くはありませんでした。ただ、欲をいえばもう少し薄味の塩辛のほうがお互いの良さを高められたかもしれません。

そしてタレで味付けをした鶏皮の焼き鳥はタレの甘味とランビックの酸味がとてもよくマッチするということで、こちらも試してみました。ただ、焼き鳥は串の後処理が大変(そのままゴミ袋に入れると必ず突き破るので、我が家では紙に包むようにしています)なので鳥皮炒めで代用してみました。思わず「いいねぇ」と声が出るほどの美味しさです。また、弱くなったとはいえ、酸味が油分をカットしてくれるので多少の脂っこさは気になりません。最初に試した甘いガリを細かく刻んでトッピングしてみたらこれがまた素晴らしく、自分をほめながら鳥皮炒めと新カンティヨンの無限ループを楽しみたくなりました。

最後はしめ鯖です。悪くはないものの、以前のカンティヨンとペアリングさせたときのような感動はありません。

ペアリングの結論としては…

他にも野菜の甘味や旨味を強調したような「バターソテー」、ラー油のスパイシーさなどを楽しめる「キュウリの食べるラー油掛け」なども合いました。
ただ、野菜のオイマヨ炒めは隠し味にカレーパウダーを入れたせいか、そのカレーパウダーのスパイシーさがマヨネーズで消されてしまい、思ったよりマイルドになっていました。そのため、あまり合うという感じではなく、味がぼやけてしまい、NGでした。

ほかにも塩味の強い切り昆布の煮物も新カンティヨンが負けてしまう感じがあり、あまりお勧めできる組み合わせにはなりませんでした。
どうやら新カンティヨンは塩味を酸味で消すというペアリングよりも甘味が強いものとの相性の方が良いようです。

ということで前のラベルも飲んでみました

そうなってくると気になるのは前のほうのカンティヨンのペアリングは何が一番いいのか、というところです。以前は生ガキにレモンを絞る感覚でペアリングさせたこともあります。
本当に最高だと感じたのですが、この検証をしたのは6月下旬、基本的には季節外れということで諦めました。

でも、私にはしめ鯖があります。しめ鯖とのペアリングをいま一度確かめてみないと、という気持ちが抑えがたくなりました。となれば前のカンティヨンをも飲んでみないといけません。
さあ、前のカンティヨンでも検証です。

ただ、比較すべき大瓶がありません。残念ですが家にあった一番新しい小瓶を飲むことにしました。きりりとした酸味が心地よく、思わず笑みがこぼれます。
もうカンティヨンのめくるめく酸味の世界に没入してしまいます。
しかし、小瓶は気が付くと空になってしまうので急いでペアリングの世界へと戻ります。

なんと甘いガリは前のカンティヨンには全く合いません。塩辛やしめ鯖は文句なくペアリングOKです。塩辛の塩味とカンティヨンの酸味はお互いをまろやかにして口の中で混然一体となり、新しい味わいを生み出します。しめ鯖はしめ鯖自身の酸味と醤油の塩味にカンティヨンの酸味を足すことで味わいが増幅されてゆきます。しかし鶏皮炒めは単品ではお互いの主張が強すぎて甘味と酸味の殴り合いのようになってしまいました。刻んだガリをトッピングしたものは程よく甘味が抑えられてそれなりにまとまった味わいとなりました。

まとめ

塩味を酸味で消すというペアリングは前のカンティヨンで。新しいものは甘味が強いものと合わせる、といったように使い分けるのがいいのではないでしょうか。とはいえ、前のラベルはもう生産されないようです。もちろん、ネットオークションなどで誰がどのように保管していたのか分からないものでもいいから、と前のカンティヨンを買うことを否定はしません。それに、ベルギービールの専門店などでは寝かせてある前のカンティヨンもあるかと思います。ただ、前のラベルに固執せず新しいラベルの新しい味わいに酔い、より良いペアリング相手を探す方が楽しく飲めそうです。

Cantillonカンティヨンペアリング
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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

この記事を書いたひと

川端 ジェーン

ビアジャーナリスト

ベルギービールをこよなく愛しています。笑顔でビールを酌み交わせば世界平和は実現すると考えています。ビールが好きすぎてたまに他人と知人の境目がなくなってしまいます。ビールの美味しいお店で見ず知らずの人に話しかけていたら、それは私かもしれません。
JBJA公式動画サイト:YouTube JBJAチャンネル

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