[イベント,コラム]2022.8.19

【ビールのある風景in岩手㉖】遠野でホップハイキングに参加してきました!

ビールの原材料として使用されるホップ。岩手県遠野市は1963年からホップ栽培がはじまり、現在では栽培面積日本一を誇る一大生産地です。
そんな遠野でこの夏実施されたアクティビティが、7~8月に見頃を迎えるホップにフォーカスした「ホップハイキング」。実際に、私も8月上旬に遠野市のホップ畑を訪問してきました。

ホップハイキング

「ホップハイキング」とは、5.5mの高さまで成長したホップのグリーンカーテンを貸し切りにして、ビール醸造におけるホップを中心に楽しく学ぶアクティビティです。
JR釜石線遠野駅から車で約10分。自然豊かな遠野の風景の中にホップ畑がありました。


案内していただいたホップ畑のある場所では、遠野で栽培されている3種類のホップ(「キリン2号」、「かいこがね」、「ムラカミセブン」)を同時に観ることが出来ました。
ちなみに、国産ホップの名称として最近聞くことが多い「IBUKI」。実は「IBUKI」は品種名ではなくて「キリン2号」とその変種である「かいこがね」をあわせたブランド名だということは、意外と知られていないかもしれません。

ホップ畑のグリーンカーテンの前でホップについて説明をしてくれたのは、遠野でホップ栽培コーディネーターとして、栽培現場を通してビールの魅力を伝える環境づくりの整備に取り組んでいる神山拓郎さんです。

説明をしばらく聞いたところで、ノンアルコールのホップソーダを味わいました。

このホップソーダは、(株)遠野ふるさと商社から発売されている、熟成ホップエキス入りの炭酸飲料です。基本は、運営している道の駅「遠野風の丘」でしか購入できず、人気で入荷待ちのこともある貴重な商品です。爽やかなホップの香りとほどよい苦味を感じられ、実際のグリーンカーテンという産地ならではの特別な空間の中で飲むのにも最高の飲み物です!

その後も、それぞれの品種の生育の特徴やホップの収穫までの流れ、ホップ栽培を含む遠野の農業の課題までいろいろ話を伺い、あっという間に30分を超える時間が過ぎていました。

遠野でのホップハイキングはここがよかった!

これまでもホップ畑に入って見学したり、収穫のお手伝いやホップ畑で飲食を楽しんだりした経験はありましたが、今回のホップハイキングはまた一味違って、とても楽しく勉強にもなりました。その理由をいくつか挙げたいと思います。

・ホップがここまでどうやって育ってきたかを知ることができた
ホップというとどうしてもこの時期の毬花に注目が集まりますが、ホップ農家の活動期間はおおよそ3月下旬から約7ヵ月間に及びます。株開き、株拵え、糸付けといった作業に始まり、収穫までは繊細な工程が続きます。
ホップ栽培コーディネーターをしている神山さんは実際にホップの栽培にも従事してきているので、目の前に見えているホップについてはもちろん、ここまで成長してきた過程についても熟知されています。来年はグリーンカーテンになる前のホップ畑にも関わりたくなりました。

・ホップ栽培の歴史が長い遠野ならではの雰囲気を感じることができた
 ホップ栽培が始まってから2年後に設立されたという遠野ホップ農業協同組合(以下「ホップ農協」)。今では、ホップ農協が生産者の指導、協力、援助などを行いながらホップの生産に取り組んでいます。この日は、間近に迫ったホップ収穫に向けて、ホップ農協の方々がホップの生育状況の確認に回っているところに出会いました。それぞれの畑の生育状況を確認し、順番を決めて協力して収穫していくそうです。

・ホップ栽培の課題も知ることができた
遠野市もホップの生産には非常に力を入れていて、生産者との協力体制がしっかりしています。そのため、新規就農者が増えてはいますが、高所作業が多いこともあり高齢化による離農者の増加も、現在そしてこれからの大きな課題になっています。
また栽培の歴史が長いため加工施設が老朽化していたりすることや、農家専業では経済的には成り立たないという問題点も知ることができました。

・遠野でしか栽培されていないホップも見ることができた
 遠野で育てられている3品種の中で、栽培時の手間を減らし収穫量を増やせるよう改良された品種がムラカミセブン。イチジクやみかんに近い香りと程よい苦みが特徴のこの品種がが栽培されているのは遠野だけです。

その他にも、前述したホップソーダをグリーンカーテンの中で飲むことができたことなど…他ではなかなか見られないものや味わえないものがあり、ホップ畑の訪問が初めてな方はもちろん、行ったことがある方でもとても楽しめる内容だった思います。参加した翌日…いや当日からのビールは、ますます美味しくなった!ような気がします。

来年こそはホップ収穫祭を

今週半ば、遠野市のホップ収穫がいよいよ始まりました。グリーンカーテンが見られる季節もそろそろ終了です。
このホップ収穫の時期に合わせて2015年から開催されてきたのが「遠野ホップ収穫祭」。私が遠野を訪問した時には今年は開催する予定になっていましたが、その後残念ながら中止が決定してしまいました。
来年こそ、会場でホップの収穫をお祝いして乾杯できることを切に願います。

遠野のホップはキリンビールとの契約栽培。秋には今年収穫された遠野産ホップを使った「一番搾り とれたてホップ生ビール」が発売されます。今年で発売19年目を迎えるこのビールは、まだ遠野に足を運んだことのない方にもなじみのビールになっていると思います。
畑でホップを目にできるシーズンは今年はもう終わりますが、遠野産ホップの魅力を感じることのできる機会はまだ続きます。少しでも気になったら、来年はぜひ実際に遠野のホップ畑に足を運んでみてはどうでしょうか?

遠野のホップ畑のある豊かな風景が、これからも未来につながっていきますように! 

IBUKIかいこがねキリン2号ホップハイキングホップ収穫祭ムラカミセブン岩手遠野

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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